つい最近、購入した試聴盤をいくつか聴いてみたのでその感想を。
先日、我が家で近所の音楽仲間のM上さんと一緒に試聴してみた。
自分 → 「このジャケットの顔を見るとあまりいいイメージではないよね。何だか場末(ばすえ)の酒場のママさんみたい」
M上さん → 「この眼は男を誘っている目だね。このちょっと品のない感じが実に”いい”、これこそ”ちあきなおみ”だよ。演歌の歌手に知的なイメージは要らないよ」
自分 → 「そういうものかなあ~」
見た目はともあれ、表現力は抜群。この盤の中に収録されている「別れの一本杉」を聴いてM上さんは「船村 徹」と肩を並べるほどの”うまさ”だとおっしゃる。立て続けに3回ほど連続試聴して「一番最後にもう1回聴かせて」と言うほど。
つい先日、湯布院のA永さんがお見えになって16人の歌手の競演による「別れの一本杉は枯れず」を一緒に聴いたときにも同じようなことを言われ、次のように分類されていた。
歌唱力派(朗々と歌う組) 春日八郎、三橋美智也
表現力派(しみじみと歌う組) 船村 徹、ちあきなおみ
中間派(両方を兼ね備えた組) 美空ひばり
曲の出だしの「泣けた、泣けた~」の”入り方”のところにそれぞれの歌手の個性が集約されているとのことで、いつものことながらセンスのいい鑑賞力に改めて感心。
メール友だちの奈良の「M中さん」はベスト・スリーとして本家の春日八郎を除いて、三橋美智也、美空ひばり、船村 徹を挙げておられたが、つまるところ「別れの一本杉」の歌い手は以上の5人に集約されそうだ。
因みに、自分が聴いていて一番好きなのは「美空ひばり」ちゃん~。
次はクラシックを。
曲目はモーツァルトの「ディヴェルティメント」変ホ長調K.563。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロによる三重奏。
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モーツァルト晩年の名曲をこれら三者がどのように演奏しているのか興味津々。既に手元にあるクレーメル・トリオと比較しながら聴いてみた。
1 グリュミオー・トリオ
1967年の録音だからもちろんアナログだがそれにしては、なかなかいい音質。最初の一音が出たときに思わず日頃聴きなれているモーツァルトのヴァイオリン協奏曲のイメージが沸き起こった。
しかしグリュミオー独特の美しさがあるものの、やや線が細い印象で全体的に”こじんまりとまとまりすぎた”感がある。もっと躍動感が欲しいしそれにやや単調な演奏。
これでは(大衆の人気を失って)不遇の時期にあったモーツァルトの孤独感が伝わってこない。個人的にはこの演奏は好きになれない。
2 ウィーンフィルハーモニア弦楽三重奏団
1995年のデジタル録音だから安心して聴ける。ペーター・ヴェヒターといえばウィーン・フィルの高名なヴァイオリン奏者。彼がリーダーとなって若手のヴィオラ奏者とチェロ奏者とが組んだトリオ。
実に優しくて柔らかい演奏で”モーツァルトの魅力ここに極まれり”という感があったが、ずっと聴いているうちに何だか”平和ボケ”してくる感じがしてくる。甘いばかりでチョッピリ辛さも欲しくなるといったところ。もちろん好き好きだろうが愛聴盤にするにはもうひとつ。
3 アマデウス弦楽四重奏団
1982年の録音だからデジタル録音にすべり込みセーフ。四重奏団とはいいながら、もちろん第二ヴァイオリンはカットされている。
この演奏は過不足無しといったところで自分に一番ピッタリきた。全てに中庸をいっている印象で、張り詰めた緊張感のなかで伸び伸びと音楽が躍動している感じがして大満足。「手練(てだれ)たちの演奏」の一言に尽きる。
結局、自分の好みで順番をつけるとすれば次のとおり。
1 アマデウス弦楽四重奏団
2 クレーメル・トリオ
3 ウィーンフィルハーモニア三重奏団
4 グリュミオー・トリオ
クレーメル・トリオの演奏に満足できなかったので、これらのCD盤を購入したのだが結果的には「結構いい演奏だったんだ」と見直すことになってしまった。