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社会はかわるし、かえられる!

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再度、玉井さんを紹介

2019-01-18 07:49:45 | 日記

ほっかい新報の新年号に「本の紹介」とし
て、私の「玉井裕志作品集」が掲載された。

日本全国の農業地域でも、北海道の釧路・
根室地域は酪農が中心という特異な環境だ。

もともと原生林であった根釧台地。夏の低
温と霧という厳しい環境で、牧草をもとに
酪農業が基幹産業となっていった。

そこには原生林を切りひらいてきた農民の
誇りがある。

前のブログでは こちら ⇒

追記
原稿をアップします。

玉井裕志作品集によせて
「いったい、今年は何たる年だべか。春以来お天道様が顔を見せたのは、何日あったと思う」「まったく、ぶったげたもんだぞな。酪農に凶作は絶対ない。他の畑作は実らなくても、牛の牧草ぐらいは伸びる。だなんて、ぬかしたのは、いったいどこの誰だい・・・」(103ページ)
夏は気温が低く、海霧(ガス)が広がりやすい根釧台地。米作をはじめとした畑作はまず無理。気候条件から酪農業へと進んでいった。人間の手作業で原生林を切りひらいてきた農民の世代から、戦後は世界銀行の融資を受けてブルドーザーを使った大規模な酪農地帯を造成する「根釧パイロットファーム事業」が国策としてはじまった。しかし、その入植者は困難を極め、借金の返済もままならないまま離農も多発した。そうした厳しい酪農を経営しながら作家活動を続けてきた玉井裕志さんが、この度、作品集を刊行した。
1980年の「霜がれの季節」から86年の「萌える大草原」までの7つの作品をまとめている。
未来を切りひらこうとする若き開拓者魂と現実の厳しさを前にたじろぎ、苦難の道を歩む酪農民。とりわけ「根釧パイロットファーム事業」は、ジャージ牛のみの導入という国の政策により行詰まる農民が多く、輸入牛によるブルセラ病という伝染病が広がり「全頭処分」という大事件も起きた。さらに多額の借入金の返済が出来ず、無念の思いで離農する人々。そうした家族の奮闘と苦悶する人間像を描いている。各作品の行間からは、大地の草いきれと牛舎のにおいがしてくる。私は読んでいると悲しさとともに、農政への怒りが沸々とわいてくる。まさに酪農民の玉井さんしか描けない作品だと思った。
 なお、巻頭言には、山田洋二監督から、この作品集発刊のお祝いの言葉がのべられている。それもそのはず、「萌える大草原」のなかの「映画の舞台」を読むとよくわかる。(332ページ)  撮影現場での山田監督や倍賞さんの人柄も伝わってくるので、「遥かなる山の呼び声」など山田洋二監督作品の、感動の源のひとつを感じることができる。
TPPや日欧EPAの強行など、グローバル大企業しか頭にないような自公政治は、酪農民の生きた生活、生きた牛と自然の営みのなかでの営農が見えていない。
暗雲が立ちこめている日本の農業。ぜひ酪農業の現場で働いてきた人たちの想いを、この作品のなかからとらえられればと思う。