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★「ぬしさまへ」畠中恵著 新潮文庫
「しゃばけ」の続編です。前作が一つの物語だったのに対し、本作は短編集です。日本橋通町の廻船問屋兼薬種問屋長崎屋の若だんな一太郎と妖(あやかし)たちが繰り広げる謎解きものです。前作と比べると、登場人物のキャラクターがより鮮明になり、若だんなの謎解きも腕を上げて冴えてきました。また短編の分噺の展開も速く、さらに面白味を増しています。
「空のビードロ」や「仁吉の思い人」など人情味溢れる話にはほろりとさせられます。本作によりシリーズ化するための『核(骨格)』が完成したようです。もう既に第4作まで刊行されている由、私の読書感想文候補が増えてうれしい限りです。
それにしてもなぜこういう「江戸市井もの」って、読んでいて落ち着くというか、すんなり体に染み込んでゆくのでしょう?それは決して私が年を取ったからだけではないと思います。世の中がどんどん進化して、その結果心身ともに余裕をなくしつつある現代にあっては、一種憧れの時代ですよね!