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♪TVを見ずに原作を読むに限る!「白夜行」東野圭吾著 集英社文庫
私は「ミーハー」です。ブログネームを『呑む気“ミーハー”父さん』に代えてもいいぐらいです。この小説も女房や子供がドラマを見ていて、山田孝之もいいし綾瀬はるかも可愛いし濡れ場もありそうだし…みたいな興味があって、本屋で文庫本を手に取りました。上記の画像は以前の文庫本のもので、今はドラマにあやかって主人公ふたりの顔写真がデカデカと載っています。なんかおじさんが買うには少々テレを感じます。でもそのミーハーのお陰で傑作に出会いました!
東野圭吾は今まであまり読む気がしませんでした。それは随分前に読んだ一冊が、「高校生殺人事件~密室トリックを見破る!」みたいなシチュエーションで、全然面白くなかったことが原因です。いわゆる「本格派推理小説」と言われるものはこれまでに結構読みました。でも30~40年前ならいざ知らず、なんでもありの現代において「密室殺人」や「アリバイ工作」「時刻表トリック」などは、どうもしっくり来ません。東野氏についてもそんな印象を勝手に持ってしまって敬遠していました。
でも東野氏は私が読んだ学園推理小説のころから、何度か「変節を遂げた」ようです。この話ももう随分前の小説ですが、読み終わって私の同氏に対する印象は180%変わりました。松本清張に引けをとらない本格的ミステリーです。人の心の深く暗い部分を掬い上げるように見事に書き上げていると思います。20年近くも迷宮入りの殺人事件を追う老刑事やその他の人物の感情は明確に描かれますが、主人公(犯人)ふたりの心理は一切語られません。でも読む人間にひしひしと伝わってきます。なんでこんなにまでしてふたりは長年寄り添って生きてきたのだろう、もっと違う生き方で幸せになる方法はなかったのだろうか、と考えさせられます。思わず引き込まれる筆致です。さすが直木賞作家ですね。
テレビは読み終わった日の晩に初めてゆっくり見ました。う~ん・・・、山田孝之はぴったりのような気がしますが、綾瀬はるかはちょっと違うなぁ~。武田鉄也はぴったりかも。いずれにしてもドラマでは、最初から主人公のツーショットが頻繁に出てくるし、その時々の気持ちをさらけ出しているので、原作とは全く趣が違います。このほうが分かりやすくてよい、という方もいるようなので一概には言えませんが、やっぱり原作の重々しさはスポイルされていますね。どうしても安っぽくなってしまいます。これから原作をお読みになる方は、テレビはいったん止めて先に本を読むことをお勧めします。
今まで有名な小説の映画化やドラマ化がごまんとされていますが、「原作を上回る傑作」というのは、さほど多くないと思います。やはり素晴らしい内容の原作をそのまま映像化しようとすることに無理があるのでしょう。小説の一部を上手にデフォルメして、ある意味別な魅力を引き出す脚本や演出が求められると思います。
そのような点で私が傑作と思う映画は「砂の器」です。さすが野村芳太郎監督!今まで見た日本映画の中では「蒲田行進曲」(深作欣二監督)とともに甲乙つけ難い1位です。その話はまた次の機会に!