呑む気オヤジ/蔵王山麓蓬莱庵便り

蔵王山麓暮らしのオヤジの日記。合唱も映画もドライブも温泉も、たまには俳句も・・・😄

最近読んだ本「終わった人」

2016-09-01 | 本の話


◎「終わった人」内館牧子著 講談社
僕がブログに「仙台に帰ってきたら『故郷』を歌っても涙が出なくなった」と書いたら、東京の友達が「そんな話を最近読んだ『終わった人』にあったよ」と教えてくれた。じゃぁ読んでみよう!

話は、盛岡の進学校で「普通クラス」と言われたことに反発し、猛勉強して東大法学部に入り、卒業後は大手都市銀行に勤めたオヤジが主人公。
オヤジは銀行内で猛烈に働き順調に出世するが、当然なれると思っていた役員の一歩手前で関連会社に出向させられる。最後は関連会社の専務として63歳の定年を迎える。
最初は「毎日が日曜日」を謳歌しようと思いつつも、普通のリタイア組のように朝の散歩や図書館通いをすることを否定し、、午前中からスポーツジムに屯するジジババたちとは一線を画す毎日を送っている。しかし、やっぱり毎日が物足りなく、何か自分が頑張っている証や自分を必要としてくれる仕事を求めて悶々とする・・・。

これは前半までの話で、その後は仕事も色恋もいろいろ波乱万丈で、よく有る団塊の世代の物語と言えなくもない。
でも、読み進むにつれて、主人公やその奥さん、娘、友人たちが発する言葉に、共感したり、言い当てられたり、ホロリとさせられたり・・・。思わず一人でムフフと笑ってみたり、だよね~とつぶやいてみたりで、まさに「目から鱗」で一気に読み終えた。
主人公は、いろいろな思いがあって、東日本大震災の直後を除き10数年の間、故郷の盛岡には帰っていなかった。でも、あることをきっかけに岩手出身の石川啄木の歌集を読み始め、宮沢賢治のイーハトヴに思いを馳せ、老母を気にかける。そして久しぶりに盛岡に帰って老母や妹と過ごし、何十年ぶりに高校の友人たちと酒を酌み交わし、故郷に戻りたいと強く思う。

う~ん、置かれた立場や環境は異なるけれど、故郷の親を思い、帰りたいと感じるところは、僕と通ずるものがあった。故郷に帰ってきた、来られた僕は、幸せなんだと思う。
ぜひとも、ご同輩諸氏(特に男性)または少し前に定年を迎えた先輩諸氏に読んでほしい。女性はどうか分からないけれど、同年輩の男、特に地方出身の貴方の 琴線に触れること間違いなしですよ!

【目から鱗?の一言】
・オオ、イヤだ。何が悲しくてこの歳になって恋人なんか作るのよ。男に時間とられたくない(妻)
・六十台は空腹なのだ。失ったものを取り戻し、腹に入れたい。(中略)まだまだ終わってはいないのだ。(オヤジ)
・男と女になれば、10年も20年ももつ関係が半年や1年で終わります。(彼女と思った女性)
・男には何かどっか破綻した空気がないともてないってこと。(主人公娘)
・帰って来ればよがんす。何十年も他さ住んでいたったって、故郷っつもんは、ちゃんと居場所を作ってくれるもんでござんすンよ。(老母)

コメント
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