悪人(上) (朝日文庫) | |
吉田 修一 | |
朝日新聞出版 |
♪「悪人(上・下)」吉田修一著 朝日文庫
映画化された話題作。
う~~ん、切ない話だなぁ。人生ってなんだろう、愛ってなんだろう、親子って家族ってなんだろう…、いろいろ考えさせられる小説だ。
解体作業員で車にしか興味がない祐一、紳士服売り場の店員で平々凡々と暮らす光代、親元から独立して保険の外交員を務める佳乃、実業家の放蕩息子増尾…。それぞれ親や家族とのしがらみと、その家族も知らない一面も隠し持ちながら生きている。
祐一と光代の、行き場のない愛。娘の自堕落さを突き付けられ、呆然としながらも復讐心を燃やす佳乃の父。孫の罪をしっかり受け止め勇気を漲らせる祐一の祖母。人間の愛は理屈抜きに強くて純粋なのだと思う。
佳乃の父の言葉「あんた、大切な人はおるね?その人の幸せな様子を思うだけで、自分までうれしくなるような人たい。(中略)今の世の中、大切な人もおらん人間が多すぎったい」
大切な人がいない人間が、本当にそんなに多いのだろうか。それはあまりにも寂しい世の中だ。
祐一の、光代に対するの最後の思いやりが、あまりにも切ない。
でも、光代だって、本当は祐一の思いやりに気づいているんだよね?そうじゃなきゃ、あまりにも悲し過ぎる。
久しぶりの5つであります。