ヨーカドーで買い物があったので、大井町で下車した。
考えてみれば、このヨーカドーと大井町の駅はいろいろな意味で思い出深い。
目黒の社宅にいたころは、しょっちゅう買い物に来ていた。
大型店舗なので品揃えも良く、碑文谷のDよりも使い勝手が良かった。
良く家族で買い物したっけ・・・。
そして大井町駅。
妻が東急大井町線沿線の病院に入院していたので、1ヶ月ちょっとの間、それこそほとんど毎日この駅を利用した。
東京駅から京浜東北線の一番後ろに乗る。
大井町駅のホームの一番後ろ、品川寄りのエスカレーターを昇りJRの改札を出ると、目の前が大井町線の乗り場だ。
大井町線の小さな駅を降りて昔ながらの商店街を抜けると、病院の大きな建物が見えてくる。
すっかり日が落ちて薄暗くなった商店街の先に、妻の入院している病棟が黒々と聳え立っていた。
あの時、一体どんな気持ちで毎日病院に通っていたのだろう。
まだ2年しか経っていないが、あまり記憶にない。
妻の病がこれから快方に向かうことはないと分かっていた。
でもあんなに呆気ないとは思ってもいなかった。
少しでも長く側にいてやろう、少しでも気晴らしをしてやろう、少しでも辛さを緩めてやろう。
そんなことを考えながら、商店街をトボトボ歩いたような気がする。
2年ぶりで品川寄りの一番後ろのエスカレーターに乗った。
今日は改札を出て真直ぐ大井町線に向かうのではなく、外に出てヨーカドーに向かう。
少し前までは、大井町で下車するのも嫌だった。
京浜東北線が大井町に到着するとき、エスカレーターから目を背けていた。
胸の痛みも少しずつ和らいできて、「想い出」と思うことが出来るようになってきた。
僕の中で、妻の想い出は不偏でも、胸の痛みは確実に和らいでゆく。
人間ってそういうものか。
妻を看取って、もうすぐ2年。