生き生き箕面通信

大阪の箕面から政治、経済、環境など「慎ましやかな地球の暮らし」をテーマに、なんとかしましょうと、発信しています。

生き生き箕面通信920 ・「非現実的な夢想家になろう」と村上春樹氏

2011-06-15 06:28:38 | 日記
おはようございます。今朝の朝日新聞は社説で、原発再開の是非を問うイタリアの国民投票に関連し「もう黙っていられない。私たちの将来を決める選択なのだから『お上任せ』『政治しだい』でいいはずがない。国民がみずからエネルギーを選び、結果の責任も引き受けていこう」と、呼びかけました。
生き生き箕面通信920(110615)をお届けします。

・「非現実的な夢想家になろう」と村上春樹氏

 スペイン・カタルーニャでの「カタルーニャ国際賞」授賞式に出席した村上春樹氏は次のような受賞スピーチを行った、と伝えられています。*「週刊朝日」(6月24日号)より抜粋

・ここで今日僕が語りたいのは、建物や道路と違って、簡単には修復できないものについてです。それはたとえば倫理であり、規範です。それらはいったん失われてしまえば、簡単に元通りにはできません。

・広島にある原爆死没者慰霊碑にはこのような言葉が刻まれています。〈安らかに眠ってください 過ちは繰り返しませぬから〉。素晴らしい言葉です。

 ・気がついたときには、日本は世界で3番目に原子炉の多い国になっていた。まず原発による”効率的な”電力利用という既成事実が作られました。そして夏場には「エアコンが使えなくてもいいんですね」という脅しが向けられます。原発に疑問を呈する人々には、「非現実的な夢想家」というレッテルが貼られていきます。

・私たち日本人の倫理と規範の敗北でもありました。私たち日本人は核に対する「ノー」を叫び続けるべきだった。私たちは技術力を総動員し、叡智を結集し、社会資本をつぎ込み、原子力発電に代わる有効なエネルギー開発を、国家レベルで追求すべきだったんです。それは広島と長崎で亡くなった多くの犠牲者に対する、私たちの集合的責任の取り方となったはずです。それはまた我々日本人が世界に貢献できる、大きな機会となったはずです。

 ・損なわれた倫理や規範の再生を試みるとき、それは私たち全員の仕事になります。それは素朴で黙々とした、忍耐力を必要とする作業になるはずです。晴れた春の朝、ひとつの村の人々がそろって畑に出て、土地を耕し、種をまくように、みんなが力を合わせてその作業を進めなくてはなりません。

・カタルーニャの人々がこれまでの長い歴史の中で、多くの苦難を乗り越え、ある時期には過酷な目に遭いながらも、力強く生き続け、独自の言語と文化を守ってきたことを僕は知っています。私たちのあいだには、分かち合えることがきっと数多くあるはずです。

・日本で、このカタルーニャで、私たちが等しく「非現実的な夢想家」になることができたら、そしてこの世界に共通した新しい価値観を打ち立てていくことができたら、どんなに素晴らしいだろうと思います。それこそが近年、様々な深刻な災害や、悲惨極まりないテロルを通過してきた我々の、ヒューマニティーの再生への出発点になるのではないかと、僕は考えます。

・私たちは夢を見ることを恐れてはなりません。理想を抱くことを恐れてもなりません。そして私たちの足取りを、「便宜」や「効率」といった名前を持つ厄災の犬たちに追いつかせてはなりません。私たちは力強い足取りで前に進んでいく「非現実的な夢想家」になるのです。