いか@ 筑豊境 寓 『看猫録』

Across a Death Valley with my own Distilled Resentment

屠(ほふ)られる獣(けもの)の声を聞くシャガール、あるいは、Daseinは獣も含みうる

2010年09月19日 16時32分14秒 | 東京・横浜

■みんな大好き、シャガール。プリミティブな形と鮮やかな色は、通俗的

こっちの方が多彩⇒Googleの画像検索、シャガール



■おいらは自分の好みの感覚で生きている。これはある種のニヒリズムというらしい(⇒関連愚記事;おのれのべろ)。こういう生き方と違って、目先の食いもののまずさに耐え、ご立派な目的のために勝利するというのが、えげれす様の生き方らしく、そういう理由で英国の食事はまずいらしい。つまりは食いもののうまさに振り回されていては、七つの海は支配できなぃぞ!と。

そんなのやだねぇ~。ともかく、ベロにせよ、おめめにせよ、おいらはおいらの感覚のみを頼りとします。

■さて、能書きはともかく、先週平日、上野は芸大美術館のシャガール展を参拝。もう、絶対行きたかったけど、猛暑がおさまるまでまってた。 俗物バンザイ!展示のコンセプトがあって、唯のシャガールではなくて、ロシア・アバンギャルドがつきものらしい。ロシア・アバンギャルド!、今年あっただよ;愚記事⇒アール・デコの館でロシア構成主義。おいら的にはロシア年だよ⇒愚記事⇒猫たちが食い尽された街へ;サンクトペテルブルグ参拝



■みんな大好き、シャガール。プリミティブな形と鮮やかな色は、通俗的。でも、よくみると、そのモティーフはきついかも。人物の胴体と頭は離れているし、なぜかしらいつも獣か鳥がいる。そして、十字架のキリスト像の頻発。でも、誰なんだ!?、シャガールって。

シャガール=幻想的、じゃんじゃん、で終わらせるのはしゃくなので、ヨタを書く;

●今回のユーレカ!(気づいたこと);シャガールは子供の頃、絵を教わりたくて塾を探す。その際、おじの許可が必要だったようだ。自分の才能が認められるか不安なシャガール。そんな彼の耳には、屠殺される家畜の鳴き声が届く。そう、回想している。おじの職業は肉屋だった。

パリに出てきてからのこと。モンパルナスの芸術家志願者の群居に住む。近くには屠殺場があり、屠殺される家畜の鳴き声が聞こえたと回想している。

屠(ほふ)られる獣の声を聞くシャガール。

⇒Google; シャガール 屠殺

この時点でロシアではユダヤ人へに襲撃、すなわちポグロムが生じていた。ただ、シャガールがどれほど、自分がユダヤ人であることなど、事態を認識していたか不明。そして、ゲルマン民族主導で、かつフランス人やポーランド人が協力する、"ユダヤ人大屠殺"時代の幕が明けていく。

●シャガールは当時の帝政ロシアのユダヤ人都市ヴィテブスクの生まれ。イーディッシュ語が母語らしい。生粋のユダヤ人。旧イスラエルから、東方に逃れて生き延びたアシュケナージにほかならない。(一方、スペインなど西方に逃れ生き延びたユダヤ人たちは セファルディ [⇒愚記事]といい、アシュケナージとセファルディは第二次世界大戦のユダヤ人迫害でニューヨークに集合した。最下部にリンクしたYouTube:イーディ・ゴーメはセファルディらしい。)シャガールは第二次世界大戦勃発でドイツのフランス侵攻によるユダヤ人狩りを、米国に逃れることで免れた。ニューヨーク近代美術館の招聘があったからだ。

・今回のユーレカ!2.
おいらは以前書いた;ヨーロッパはあれだけ戦争したのだから、破壊されたキリスト像をネットで探したが、今のところ見つかっていない(愚記事、処女からヒバクかぁちゃんへの1945年 )。 知っただよ。シャガールの『妄執』という作品。瓦礫の中のキリスト像。

・今回のユーレカ!3.
見ちゃった、カンディンスキーの風景画。全然、アバンギャルドでない。

▼::そして、ユダヤ人たちは大屠殺されていったのだった。::



・なぞ。シャガールはキリスト像を頻繁にモティーフにする。その意味はなんだ?彼はユダヤ教徒なのか?キリスト教徒なのか? それとも、キリストとユダヤ教を、ミシンと傘なみのシュールレアリズム扱いしているのか?

■再び、誰なんだ!?、シャガール。

突然ですが、ハイデガーを参照として年譜を。両者とも通俗的で、みんなに大人気!という共通点があります(←強引すぎるだろうw!)。ふたりとも80歳過ぎまで生きたお達者コンビだし。そして、シャガールはロシアのユダヤ人都市にうまれたユダヤ人で、ボルシェビキ政権にも多少お付き合い。ユダヤ人大屠殺時代をロシア-フランス-米国-フランスと西へ東へ。エルサレム参拝に涙するヘブライニスト。一方のハイデガーは、ファシストでドイツに定住すること80余年。故郷喪失者と都市生活者を"憎み"、農業を崇拝する。ちなみに、ユダヤ人に最も縁遠い職業が農業である。そして何より、ハイデガーは、ギリシアに涙するヘレニズミスト。



あるいは、Daseinは獣も含みうる

ハイデガーは、自説の展開で、「人間」とか「理性」とか言わない。デカルトとかカントとかと大違い。そんで、Dasein=現存在。よくハイデガーの解説書で、現存在=人間とか書いてあるんだけど、ホントなんだべか?ハイデガーが現存在=人間、ってどっかでいったのだろうか? カントのいう理性を持たないなら、うちの猫やひいては獣たちだって、存在(者/物)を感じて、自分たちのを構成しているなんだから、現存在でいいべさ。ただ、猫とおいらでは構成しているが違うだけ。

ウソかホントか知らないけれど、"キリスト教の最大の問題は人間と人間以外の動物の間に太い線を引くということ"(*1)といううわさがある。なんとなくそうだよなぁという印象をおいらも持っていた。つまり、神=イエス・キリストを祀りあげる人間が実に偉そうだ。そして、キリスト教文明から蒸留された近代哲学も、かえってより一層、理性!理性!という観点で、人間を特権化している。

それに対し、シャガールやハイデガーは人・獣非分割路線なのかなぁと感じた次第。啓蒙屋さんから、非理性主義、神秘主義となじられるゆえんではある。

■NY,難民文化村の成果;The Gift! = Das Gift ! = 御承知の毒/贈物だぜ!

    
das Gift        the gift

Eydie Gorme The Gift!(Recado Bossa Nova)


*1; http://d.hatena.ne.jp/jmiyaza/20100828



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