「奇跡なんて、起きない。 フィギュアスケートマガジン取材記2015-2019」という本を読んだ。
フィギュアスケート関連の雑誌としては最後発の「フィギュアスケート・マガジン」。ベースボール・マガジン社といえば、野球をはじめ各種スポーツで「xxマガジン」というタイトルの雑誌を出しているが、誰もフィギュアスケートの取材をしたことがなかったところから始まったそうな。
2015年NHK杯の羽生結弦選手の演技に衝撃を受けた後、、、
“演技後の囲み会見、そして公式会見と、羽生選手が発した言葉は、なんと純度が高く、嘘がないのだろう。”“口にした言葉のすべてに彼の責任感が宿っていた。”
“羽生ほど豊かな語彙と表現力で、自分と自分の演技について語れる選手なら、会見の言葉をつなぎ合わせていけば、演技の背景にあるものが見えてくるのではないか。”
“大会本部からプレスパスを発行してもらっている僕は、普通の人は入れない会見場やバックヤードに行くことができる。ならば、読者の代わりとして、そこで見たこと、経験したことをすべて伝えていこう。”
編集の方針が完全収録スタイルに定まっていったということだ。
・・・今までこの雑誌、買ったことあったかな・・・
フィギュアスケート関連の雑誌はときどき買う。オリンピックのときは総集編系とフィギュアスケートがメインのものと買っているし、他の時期も気になるものがあったら買う。ただ、同じ時期にあれもこれもは買ってないと思う。
ほとんどの雑誌のメイン記事が羽生結弦。私はどの選手が一番好きかといえば、間違いなく羽生選手なんだけど、1冊か2冊あれば十分
そこで選ぶ基準が何かというと、羽生選手の記事の内容もさることながら、他に興味のある記事があったらそっちになる。若手選手の対談とか、ジャッジやコーチのコラムとか、新ルールの説明とか
「フィギュアスケート・マガジン」が羽生結弦の会見完全収録だと知っていたら、買ってたかもしれないが、店頭で表紙を見ただけではわからない。雑誌よりも今回の書籍のほうが、確実にまとめられていて、ありがたかったかも。
フィギュアスケート・マガジンは2015年3月に第1号、5月に第2号が発行されて好評だったため、定期刊行化が決定、10月に「2015-2016 シーズンスタート号」発売。
“フィギュアスケートを取材し始めた当時、「会場に来ている人は、特定の選手というよりスケーター全員が好きなのだ」と僕は思っていた。”“何人かの選手を大きく取り扱いはするけれども、どの選手もくまなく載せていくべきじゃないか。”
そう考えて編集されたが、売れなかったという。。。
“「フィギュアスケートのファン」という人と、「フィギュアスケートの雑誌を欲しいと思う人」は、必ずしもイコールではない。”読者が雑誌に何を求めているかを考え抜いて、上述の完全収録スタイルにつながっていく。
ふと思った。私は雑誌に何を求めている?求めているものを見せてくれる雑誌がないから買わないってこともあるのでは?
そこで今、どんな雑誌だったら欲しいかな?と考えたら、断然「ペア&アイスダンス特集」だった
たぶん、そんなに売れないと思うので年に1冊のムックで十分。時期的にはシーズン初めがいい。といっても10月では遅い! ジュニアグランプリシリーズは8月に始まるから、その頃がいい。
まず、前年度のまとめ。グランプリシリーズとファイナル、ヨーロッパ、四大陸、世界ジュニア、世界選手権の結果とレビューに会見の内容など。
新年度の課題まとめ。ペアはデススパイラル、リフトの種類が年度ごとに指定されるし、ジュニアはジャンプの種類も指定される。アイスダンスはリズムダンスの課題、パターンダンスとキーポイント、できたら図解付きで。
初心者向けに、ルールや採点の基本説明も。改正があったらそのポイントも押さえる。
チーム解散や新結成の話題、新シーズン見どころ。ジャッジ/テクニカルスペシャリストの意見もほしい。
選手たちのインタビューは、トップの選手たち+これから伸びそうな若手。多くの選手はある程度シングルをやってから転向しているので、ペア/アイスダンスを始めたきっかけや、シングルとの違いなども聞きたい。どんな練習から始めて、どう上達していくか、過程が見えるといい。
やってみたい人向けに、拠点になっているリンクやコーチの情報もあったら完璧
高橋大輔がアイスダンスに転向したし、「うたしん」注目されてるし、、、どこかの雑誌社が出さないかな 早い者勝ちだと思うけど
急逝した元アイスダンス選手、クリス・リードさんを悼む記事をいくつか。
寒さに耐える桜、自分に重ね演じた 死去のC・リード氏
“氷に乗る前、ひざを温める地道な準備を徹底した。分刻みのメニューを、約1時間。これを数年にわたって継続した”
・・・そうやって戦っていたのか、、、知らなかった。最後のシーズンあたりはあまり痛そうにしてなかったので、手術がうまくいって楽になっていたのだと思い込んでいた。
(有料記事の部分)・・・・・
17年9月、平昌五輪最終予選で、日本のアイスダンスの出場枠を獲得した。同じ大会にリトアニア代表で出場した妹のアリソンが枠を逃して涙したとき、強く抱きしめて前向きな言葉をかけた。「心配ない。これは、今からもっと伸びるためのいい経験だよ」
指導者に転じたクリスさんには、逆境に立ち向かう心構えを、たくさんの後輩に伝えてほしかった。
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アリソン・リード/サウリウス・アンブルレヴィシウス組はバヴァリアン・オープン2020で優勝。クリスもきっと喜んでいただろう。
クリス・リードを元コーチが悼む。「彼は日本代表を誇りにしていた」
コーチのマリナ・ズエワがメッセージを寄せてくれている。筆者の田村明子さんがいう“アイスダンサーには不可欠な華やかさ”に同意。
ガラス張りのドーナツショップでの彼を思い出す。
直接インタビューしたことのあるライター・長谷川仁美さんが語るエピソード。ソチ五輪出場権がかかったネーベルホルン杯は:
“キャシーにはその怪我の全貌は伝えなかったというほどの、大きな怪我。
そうして臨んだフリーの演技中、クリスは「痛い、痛い」と声に出していたそう。そうやってつかんだソチ五輪出場だった。”
…そこまでだったとは、、、(詳しいことはインタビューで。五輪前のはりきってる時期)
“2017年春、東大和のドーナツショップでの、囲み取材のような、インタビューのようなときのことも忘れられない。
じゃあそろそろ取材終了で、と記者たちが席を立ったときのこと。手をつけられないでいたドーナツを急いで食べ始めた私を見ると、「慌てなくていいよ。僕もコーヒーおかわりしようかな」と言ってくれたクリス。
私がドーナツを食べ終えるまで、それからの予定などを話してくれた、なんということのなかった、あのガラス張りの店内の、晴れた午後を思い出す。”
温かい人柄がにじみ出るエピソード
Skating family mourns the loss of Chris Reed (JPN)
世界中のフィギュアスケートファンが、きっと覚えていてくれる、と思う。