シネマート新宿で香港映画「カウントダウン(焚城/Cesium Fallout)」を見てきた。
大きいスクリーンで見たいと思っていたが、公開から日が経ったせいか小さい方のスクリーン2(定員51)のみ。予定の前にちょうど見られる時間だったので行ってみた。
6Fの発券機で発券、コンセッションでカフェラテとパンを買う(セットで400円)。7Fに移動して会場に入る。残念ながらパンフレットは売り切れ。
・・・事前に中文ウィキペディアをざっと見ていたので、一応人物の関係などは理解できたが、見ていなかったらちょっとわかりにくかったかも けっこう登場人物が多い。(以下ネタバレあり)
劉徳華(アンディ・ラウ)演じる范偉立(ファン)は政府の財政局長時代、経済発展のために輸入貨物の検査簡略化を進めたが、それを悪用して危険物が輸入され大火事が起こる。その際、消防隊員である妻を亡くした。辞任後、環境学の専門家になる。
11年後、粉嶺(香港・新界の北部)で火事が発生、非常に危険なセシウム137が漏れていることがわかり、緊急時対処部がファンを呼び出す。莫文蔚(カレン・モク)演じる責任者セシリアが事態を早々に収拾しようとするが、セシウムの汚染が広がって住民の避難を余儀なくされる。
その間、消防隊員は鎮火や住民の救出にあたるが、爆発が続いてなかなか進まない。さらに台風が近づいており、水溶性のセシウムが地中に浸潤すると水源が汚染されてしまう。
最終的にセシウムの放射を止めるにはコンクリートで固めるしかなく、そのために近くのマンションを爆破することに。あと30分もすれば大雨が降り出す予報に、必死の作業が続いて…
セシウムを含む危険な廃棄物を輸入していたのは、富豪の高培德(マイケル・ウォン)。その会社の幹部はセシリアの夫。爆破するマンションを所有する高培德は、廃棄物の調査をしないことを条件に爆破を許可。爆破が成功した後にこの件を暴露した范偉立は、機密漏洩の罪で服役する。
邦題「カウントダウン」は、宣伝キャッチフレーズ「今日 末日倒數」から取ったものと思われる。
一番最初に“純属虚構”の字幕が出るが、実際の事件を基にしたかのように、字幕で淡々と事後の説明が出るところが怖い。「新界北部は数十年、人が住めない」なんて出ると、東日本大震災を思い出して、ますます。。。
また、公式インスタグラムで公開されている削除シーンの写真が衝撃的。セシウムに被曝した范偉立や消防隊員たちが、「10日後に死亡」「数年後に発病」「3年後に死亡」等のキャプション付きで、発病した顔の特殊メイクで出ている。これを先に見てたら、ちょっと映画見られなかったかも。
とはいえ、オールスター的なキャストは楽しめた。范偉立に付き添う官僚・王明詩役の王菀之(イヴァナ・ウォン)は人気シンガーソングライターで、今年の香港電影金像奨授賞式ではオープニングパフォーマンスを務めた(2分45秒あたりから)。消防トップの林保怡(ボウイ・ラム)は、香港に住んでいた頃よくテレビドラマで見ていた人。
顔で“推し”の魏浚笙(ジェフリー・ガイ)は新人消防隊員で、エンディング曲も歌っている。チョイ役でベテランミュージュシャンの郭偉亮(エリック・クォック)とか、舞台劇からコメディトークショーなど多才な張達明とかが見られて嬉しい。まだ見てないが映画「梅艷芳」の王丹妮が、消防隊長をきりっと演じる。
後で知ったが、いいなぁと思って見ていた消防隊班長役の白宇が中国の俳優さんで、大陸出身という設定(広東語吹替は盧鎮業)。日本語字幕ではそこまでわからなかったけど 監督は「消防や警察に最近大陸出身の人が多くなっているので、自然な設定」と言っているそうな。范偉立の母を演じた呉彦妹も、70代になってから活動再開して今に至る中国の女優さんだった。
印象に残ったシーンがいくつか。范偉立が娘と車で帰宅するとき言い合いになり、怒った娘が車を降りて歩き出す。なんか見たことがあるような街並み? 「欲望の翼(阿飛正傳/Days of Being Wild)」で、アンディ・ラウが巡回する辺りのような、、、公衆電話もあったし。
連行される范偉立を見送る王明詩が、全身黒服に黒い傘をさしている。設定は2007年だから、その後の香港の大きな出来事とは関係ない、と言えるが、思い出さずにはいられない。
消防隊の女性隊長が食堂にやってくると、平の隊員たちが"Madam!"と挨拶する。実際にMadamという敬称で呼ばれる立場の女性がどのくらいいるのかわからないが、香港に住んでいた頃のドラマでは時々出てきた。このイギリスっぽさがちょっと懐かしかった。
シネマート新宿ではもう上映終了しているが、30日から始まったところもあるので、興味がある方はどうぞ