突然の、あまりにも悲しいニュースが飛び込んできた。
フィギュアスケート・アイスダンスの元日本代表、クリス・リードさんが14日(日本時間で15日)にデトロイトで亡くなった。心臓突然死と診断されたという。
30歳、、、長男と同い年(日本式なら同学年)、、、
2018年8月に村元哉中とのパートナーシップを解消。その後パートナーを探していたが、昨年12月31日、競技からの引退を発表。今年に入って新しくできた関空アイスアリーナで、姉のキャシーと共に後進の育成に取り組むことを発表したばかりだった(キャシーとクリス・リードの木下アカデミーアイスダンススクール)。
オリンピックに3度出場し、全日本はキャシーと7度、村元哉中と3度優勝。日本のアイスダンスを牽引した選手だった。
あらためて経歴を見る。1989年7月7日生まれ、最初のパートナー・姉のキャシーが1987年6月5日生まれ。2歳違いだけど、キャシーが6月生まれなのでスケート年齢としては3つ違い。男性が年上のケースが多いカップル競技で、3つ下というのは最初は大変だったと思われる。
キャシーのブログ(2015-07-07)に幼いころの写真があるが、組み始めたころは当然だがキャシーのほうが背が高かった。「リフトができなかった」と書いている。
2006年全米選手権ノービスで優勝。全米は全日本と違って、年齢でなく技術レベルでカテゴリを分けているので、当時18歳だったキャシーがノービスに出場するのは問題なかった。しかしその年の6月に19歳になり、ジュニアの国際大会には出られない。
日本所属を選ぶと同時に、いきなりシニアに参戦という大きな決断。しかし写真を見ると、すらりと長身のカップルは実に堂々としている。2006年ゴールデンスピン4位、全日本は渡辺心/木戸章之に次いで2位。四大陸選手権7位は北米以外では最上位と、デビューシーズンからしっかり実績を残す。
翌シーズン、GPシリーズ2大会出場、渡辺/木戸組と坂頂兄妹組の引退で全日本は1組だけ。必然的に四大陸も世界選手権も代表となる。この後、2015年まで連続で世界選手権に出場した。
(2011年は怪我があって全日本を欠場しているが、それでも2012年世界選手権に派遣されている)
最初のオリンピックは2010年バンクーバー。2009年世界選手権で16位、1枠を獲得して、全日本も1位(2位は平井絵巳/水谷太洋)で代表となる。コンパルソリーダンスで2人そろって転倒したそうで 当時はちゃんと見てなくて全然記憶にないんだけど、ジャッジスコアを見ると転倒による減点はなかった
このシーズンのオリジナルダンスはFolk/Countryで、キモノ風の衣装と扇子を持って踊っていた記憶がある。
2014年ソチ五輪から団体戦が行われることになり、個人としてだけでなく、団体の出場権獲得という使命もキャシー&クリスの肩にかかった。2013年世界選手権で20位、この時点で出場権を獲得できず、机に突っ伏して泣くキャシーの姿を覚えている。。。
2013年ネーベルホルン杯で無事出場権を獲得 ソチ五輪団体では日本の5位に貢献。個人で21位とフリーに進めなかったが
2015年の国別対抗戦を最後にキャシーが引退、村元哉中と組むことになる。最初のシーズンから全日本優勝、トルン杯でミニマムテクニカルスコア獲得、四大陸7位(北米以外で最上位)、世界選手権15位と安定した成績。
2016/2017シーズンはUSクラシック、アジア大会(札幌)など多くの試合に出たが、肝心の世界選手権でフリーに進めず それでも国別対抗戦には出て日本の優勝に貢献している。
2017年ネーベルホルン杯で2位、平昌五輪出場権を獲得。ペアの須藤澄玲/フランシス・ブードロ=オデが出場権獲得できなかったので、団体戦出場権も彼らのおかげで得たことになる。(のちに繰り上がりでペアも出場権を得た)
オリンピックがあるので有力選手が欠場した四大陸選手権、チャンスを生かした ショートダンス2位、フリー3位で総合3位。ISUの選手権で日本の(アジアの)アイスダンスが表彰台に乗るのは初めて(表彰式)
平昌五輪でも、団体ショートダンス10組中5位 個人でも総合15位と日本勢の最高順位タイ。そして世界選手権、あと少しでトップ10の11位 これは日本勢の最高順位
坂本龍一の曲に乗って桜が開いていくプログラム、涙が出るような美しさだった 結果的に、2018年世界選手権のスコアがパーソナルベストとなった。
シニアデビューから1シーズンも空けることなく、競技を続けたクリス。膝に痛みを抱えていて、保護するブレースが欠かせなかったようだし、手術もしている。
いつだか覚えてないが、全日本の後、世界選手権代表になった選手たちの記者会見で、「クリスマスプレゼントに何でももらえるとしたら欲しいもの」みたいな質問があった。そのときのクリスの答えが「新しい膝」。
・・・どれだけ耐えながら練習し、大会に出ていたんだろう・・・
彼の最大の功績は「日本のアイスダンス競技者」の存在を示し続けたことだと思う。キャシーと7年連続、村元哉中と3年連続、トータル10年連続で世界選手権に出場していた。
特に世界国別対抗戦は、2009年から5回連続で出場。ペアが出られなかった2013年は6組中4位と頑張った。それこそ、どんなに膝が痛くても出ないわけにいかなかった時期だろう。
村元哉中と組み始め、前のパートナーと違うところは?と聞かれて「サイズ」。キャシーは身長167cm、哉中ちゃんは162cm。5cmの違いはけっこう大きいかな
3シーズンのパートナーシップの間に、村元哉中が一人前のアイスダンサーに育った。そして今度は高橋大輔と新しいコンビを組み、伝えていく。
キャシーとのプログラムでは、ビートルズメドレーがよかったかな。
「Shogun」も印象に残っている(NHK杯2013)。
哉中ちゃんとはもちろん坂本龍一。
小学生のアイスダンサー、「すみいぶ」こと吉田菫/小河原泉颯を指導している動画が、おそらく親御さんがやっているインスタグラムにアップされている。
丁寧に教えながら楽しそうな様子 いつか指導する選手といっしょに、大会のキス&クライに座る姿が見たかった。。。
偶然、昨夜HDDの録画をブルーレイにダビングする作業の中で、2017年ネーベルホルン杯の映像をチェックしていた。FDで哉中ちゃんが衣装の肩ホックをはずして桜の花が咲くところ、何度見てもじーんとする。いいプログラムだな、クリスかっこいい男になったな、と思って見ていた。。。
天国から日本のアイスダンサーたちを見守ってくださいR.I.P.