英文タイトルが「RECYCLE」。タイトルどおり、昔のヒット曲のカバーアルバムだ。3つの矢印が三角を作る、リサイクルマークまで付いている。曲もリサイクルだけど、ほぼ引退状態だった彼自身もリサイクル?!
が、安易な作りではない。吟味して曲を選び、時間をかけて録音に臨んだように感じられる。昔ほど声が伸びていないけれど、彼本来の魅力である低音を丁寧に聞かせている。最後のアルバムから10年近く経っているが、ボーカルは成熟した部分が大きいかもしれない。
先行オンエアの「為什麼」は五輪真弓の作曲で、続く「一首獨唱的歌」は中村雅俊の「ふれあい」。香港ポップスの名曲の多くが、日本のポップスのカバーだった時代があることの証しといってもいい。昔の曲は歌詞が美しく、しみじみする。
デビュー当時から彼をバックアップしてきた倫永亮のピアノで静かに歌う「願」とドラマチックに歌い上げる「内心戯」。今、ピアノだけでこれだけちゃんと歌える人はあまりいないかも・・・
昨年亡くなった黄霑詞曲「忘記他」は、スパニッシュギターにカスタネットで、麗君のしっとりした歌い方とはまた違った味わいだ。王菲の「如風」葉[イ菁]文の「零時十分」は林振強作詞で、これも数々の名曲を残した作詞家の仕事を噛みしめる。60年代のナイトクラブを舞台にした映画主題歌「我和春天有個約會」はシンプルなバンドのライブ感覚で、映画の場面が思い出される。最後の3曲は北京語で、ちょっとアップテンポにした羅大佑「童年」、切ない女心を歌って意外と違和感がない辛曉「味道」も聞ける。
プロデュースは陳澤忠。昔の李國祥の作品でもよく一緒にやった人だけど、はっきり言って、最近この人の名前を聞くことが少なかった。けれど、昔以上に、今の李國祥の良さを理解して引き出したと思う。同時に、陳澤忠の音楽を体現できる歌手が李國祥なのかな、という気がする。(最近仕事が少ないのは、そういう歌手が少ないから、かも)
音数ひかえめ、衣装もシンプル、凝らないパッケージとコストをかけてない感じだが安物っぽくはない。そのまま大陸で発行するのか、ISRCナンバー(大陸での曲の登録番号のようなもの)も各曲に振ってある。レーベルはおそらく陳澤忠グループのもの。ディストリビューションだけ東亞唱片。ベテランが個人レーベルからアルバムを出すのは、最近では李樂詩の例もある。コストをかけずにうまくやれば、何万枚も売れなくても採算が取れる方法がありそうだ。大手がばっちり広告費をかけて売り出しても元が取れるとは限らない昨今、実力のある人がプレッシャーを受けずに好きな音楽を出してそこそこ売れたら、悪くない。
引退後の李國祥は、福祉施設でリハビリ関係の仕事をしていたと聞いている。これからどんなスタンスで歌っていくつもりなのか(そもそも完全に復帰するつもりなのか?)わからないけど、今の彼は、歌うことを大切に思っている、と思う。空白の時間は無駄ではなかった。
循環再唱 @YesAsia.com

写真を見て「え?何人?」と思われるかもしれないが、Solerはイタリア人の父とミャンマー人(カレン族)の母を持ち、マカオで生まれ育った双子の兄弟ユニット。写真右が兄のJulio、左が弟のDino、苗字はAcconci。二人ともイタリアに留学経験があり、英語・広東語・北京語・イタリア語・スペイン語・ポルトガル語を話す(Dinoはフランス語も)。
Dinoは、黄貫中のバンド「汗」や、恭碩良のバンド「Ginja Rock」に参加している。また、陳奕迅や梁漢文に曲を提供したこともあり、ギタリストとしての参加も数多い。そう言われると、Dino Acconciの名前に見覚えがあった方もあるかもしれない。
すでにオンエアされている「失魂」「海嘯」は、Dinoの作曲・リードボーカルで、ハモるJulioの低音もなかなか渋い。ロックばりばりの曲と、メロディアスな曲を交互に持ってくる曲順で、バンドが主流ではない香港ポップスに慣れた人にも聴きやすそうだ。歌詞は広東語、北京語、英語で、どこへ売り込むにも便利^^; 広東語の発音は、香港人からすれば一言あるかもしれないが、無難にこなしていると思う。北京語もちゃんと北京語に聞こえる(下手な香港人よりましかも?!)。バックの音は主にアメリカで録ってきたようで、明るく切れのいい音だ。そこに程よくウェットなメロディが乗って、意外とバランスがいい。洋楽っぽいカラッとした音とアジアの香りのするメロディ、まさにMix(混血)でマルチカルチャーの彼らに相応しいんじゃないだろうか。そして、ベタなバラードがメインの香港ポップスに、新しい流れを作れるかもしれない。
十一狂潮Cyber Liveで生歌を聴いたが、CDとは違うギター1本のアレンジで、うまくライブにしていた。Julioがこの顔でばりばりの広東語MCをやると、なんかそれだけで盛り上がる。ちなみに、Julioは陳啓泰(ケネス・チャン)に似ているとかいないとかいう話があるが、じゃあ双子のDinoは似てない? 確かに、よく見るとJulioのほうがより似ているような、、、Dinoがギターを弾いていないとき、どっちがどっちか区別するポイントはそこ?
わいわいわいさんのほんこんからさぶかるるに銅鑼湾でのインストアライブの模様が出ている。香港に住んでたら徒歩10分だったのに~。残念!
雙聲道 @YesAsia.com
「じいふぇんしょう?」
十数年前、単身赴任中の連れ合いを台北に訪ねた時のこと。レストランでステーキを注文したらウェイトレスにきかれた。状況からいってレアかミディアムかウェルダンを答えるところだが、初めて聞く表現だったので詳しく知りたかった連れ合いは「何て言ったの?どういう意味?」ときき返した。彼女は困って偉い人を呼びに行き、その人が丁寧に説明してくれた。やはりステーキの焼き具合を尋ねる表現で、漢字では「幾分熟?」ではなかったかと思う(間違ってたらごめんなさい^^;)。「熟情歌」のタイトルを見て、そんなことを思い出した。
林志は90年代前半に活躍した男性デュオ、優客李林(Ukulele)のリードボーカル。よく伸びる透明感のある声、広い音域、特に迫力のあるファルセットで、デビュー曲「認錯」が大ヒット。相棒の李驥が書く美しいメロディで次々ヒットを出したが、97年に解散。その理由が「家業の印刷所を継ぐから」(?!)。翌年ソロで復活したが、以来家業とかけもちらしい(担当は営業)。
ソロでは初めSonyから出していたが、今は自分のレーベル音でこつこつ作っている(ディストリビューションは全員集合という会社)。2002年の前作からはプロデュースも自分でやっている。
今回は選曲のバリエーションが広がったようだ。イタリアンポップスや韓国ポップスは前からよくカバーしていたのだが、今回はスウェーデンポップスらしき曲もある。アレンジもかなり工夫されていて、どの曲も飽きない。
すでにチャートインしている「説不出的告別」は呉慶隆のピアノとストリングスが美しい。ハープとチェロだけで切なく聴かせる「鱷魚的眼涙」(ワニの涙、悪人の偽の情けという意味がある)。彼としてはぎりぎりの低音から彼でなくては出せない高音まで駆使する、渋いジャズはBlissのGucciこと古皓の作曲だ。優客李林時代から得意とするフォークロックの「一念之間」あり、エフェクトを使ってドラマチックに歌う「眼晴不聽話」あり、、、最後は自宅のピアノで一発生録の「鳳凰花開的路口」、森山直太朗の「さくら」を彷彿とさせる友情の歌で終わる。
とにかく“いい声”の人なので、以前はその声を聴かせるための曲が多かった(地声とファルセットの境目をこの人ほど滑らかに気持ちよく歌える人はいないだろう)。しかしこの歳になって、いい意味で芝居がかった表現や、ちょっとつぶしたような歌い方もできるようになって、面白くなってきたと思う。
「葡萄は熟してはじめて酒になる/心は成熟してはじめて愛がわかる」というキャッチコピーがふさわしいアルバムだ。
熟情歌 @YesAsia.com
おだやかなバリトン。ややフォーク系、ちょっぴりR&B系のバラードを、ゆったりと歌う。張り上げて朗々と歌うわけではないが、声量に余裕があって聴きやすい。北京語の発音もしつこくなくて(爆)聞き取りやすい。全体では癒し系になるだろうか。彼が本来持つ音楽性を自然に出せる曲、アレンジで構成されている感じがする。「那年」はスキャットでサビから入るのが面白く、切ない雰囲気が出ている。女性ラップが耳に優しい「讓我陪你」もいい感じ。「ONLY ONE」は「世界に一つだけの花」のカバー。原作より説得調の歌詞で力強い。一発生録りをしているわけではないと思うが、全体にライブ感があり、ライブで歌いたい雰囲気をそのまま再現したような感じだ。
プロデュースは呉佳明、柯貴民、管啓源(啓は下の口なし)の3人。アレンジには呉慶隆、Terence Teo、Mac Chewなどおなじみの名前もある。ミュージシャンにはギターのShah Tahir、ドラムのGary Gideonなど、これもシンガポールの中核が参加。さらに懐かしい名前は、コーラスのCavin Soh。DreamzFM夢飛船の蘇志城ではないかと思う。元気で何より^^;(中国版の歌詞カードにはミュージシャンクレジットが全く載らないことがしばしばあるが、幸い、全部載っていた。よかった)
シンガポール制作のアルバムは、曲のスタイルがフォークでもロックでも、楽器がアコースティックでも打ち込みでも、不思議な“手作り感”が漂う。プロデュースをつとめるミュージシャンが楽器やコーラスで参加し、いっしょに音を作っていくせいだろうか。
このアルバムが出る前に、シンガポール・マレーシアではEP(マキシシングルのようなもの)を出しているらしい。最近、香港・台湾でも同時発行の特別版にEPの曲も収録された。VCDも付いてお買い得、、、って、どうして私が買った後に出るのよ~。新人オーディションで歌った曲、聴きたいぞ~。
林子良(ジョニー・リン)は、その歌い方といい作る曲といい、思いっきり今のアメリカのR&B。もし英語で歌っていて顔を知らなかったら、中国系と気づかないかもしれない。POP ASIA48号のインタビューによると、小さいときは教会などで音楽を聴きまくり、自然に音楽を作ることを覚え、正式な音楽教育は特に受けていないとか。「今でも完全には楽譜が読めないんです」と言うほど。歌の半分くらいは、Ah~とかOohとかYeahとか言ってるし、やたら吐息多いし、目一杯声出してるのに囁いてるように聞こえる声だし、、、アメリカ人じゃなかったら、到底歌手になれそうもない(台湾や香港ならまだしも、中国大陸だったら絶対無理)。でも、なぜか聴いてて気持ちいい。口ずさみたくなるフレーズとリズムが繰り返されながら盛り上がって、いい感じに曲に入っていける。
この「自告奮勇」は2ndアルバム。ほとんど一人で、丁寧にコーラスを重ねて作りこむ音は1stから変わらないが、羅大佑の「海上花」(クラシックな中国歌曲の雰囲気)に挑戦したり、「哈妳Honey」で范逸臣をフィーチャーしたり(この曲では范逸臣もはじけてて面白い)、周杰倫(ジェイ・チョウ)みたいな雰囲気の「偃月武者」が入ったり、バラエティに富んだ構成になった。それはいいんだけど、台湾版にはなぜか1stから5曲もおまけで入っている。これじゃまるで、大陸の海賊版みたい(大陸の海賊版には、新譜の曲に過去のヒット曲を数曲加えてあることが多い)、、、もしかして、海賊版対策の一環? そういえば彼の1stアルバムは、台湾より一足先に大陸で発売したんだった(台湾より先に大陸で発売するのも、タイムラグを利用して稼ぐ海賊版への対策の一つと思われる)。ちなみに香港版は普通に^^;MV2曲を加えたAVCDで出ている。
彼の曲を聴いていると、彼の中では、北京語で音楽を作る必然性があるんだろうな~と自然に納得できるような気がする。それが何かはわからないけど。
なお、サイトによって「ジョージ・リン」 と表記されることがあるが、これは間違いだと思われるので、訂正よろしくお願いしま~す。
自告奮勇 @YesAsia.com
最近、耳にすることがある「ポッペラ」というジャンル。ポップスとクラシックを融合したような歌のことらしい。アンドレア・ボチェッリ、ラッセル・ワトソン、サラ・ブライトマンなどの歌手がその代表格だそうで、すでに日本デビューを果たした韓国のイム・ヒョンジュも人気があるようだ。(彼の名前は、張信哲の新譜紹介で見た。松本俊明がイム・ヒョンジュに提供した曲を、張信哲がカバーしたということだ。)
林依輪をポッペラ歌手と言っていいかどうかわからないが、この「信仰」というアルバムは、限りなく“ポッペラ”に近いと思う。完全なベルカントとは言い難いが、かなりクラシック式に近い発声でゆったりと歌い上げる。全曲、有名な楽曲(たぶん)を改編(主に李泉が担当)、北京語の詞をつけてある。北京生まれの彼の発音は、オーソドックスな曲調に合っている。「愛[イ尓]到底」「情人」の2曲が大陸ですでにチャートイン。ロングヒットになるかもしれない。
元の曲が何だかわからない(書いてない!著作権にひっかからないような古い曲ばかりだったとしても、なんで書かない?)のが困りものだが、とりあえず私が知っていたのは3曲。シューベルトの「アベマリア」は、我が子を見守る父の喜びを歌う「聖嬰現象」となった。クライスラーの「愛の悲しみ」は、ミュージカルのような軽妙なタッチの「半支煙」に。そして目が点になっちゃったのは、「Dream a little dream of me」をまるでクラシックに仕立ててしまった「Fly Away Stay Alone」である。クラシックをジャズ風にアレンジするのはよくあるが、ジャズをクラシックにしちゃうなんて全く・・・
改編を担当した李泉は、上海の芸術大学で教える一方、ジャズやシャンソンなど様々な音楽の要素を取り入れて、耽美的な独特の音楽を作るシンガー・ソングライターで、よくピアノを弾きながら歌う。NHKと上海東方電視台が共同開催したアジア2002ミュージックフェスティバルin上海で、Kiroroと共演したのをご記憶の方もあるだろう。今回のアルバム参加は林依輪の希望で実現したようだ。
林依輪は北京の人だが、広州のポップスシーンで人気が出た人。詳しいことはよくわからないが、若い頃南米で生活したことがあるらしい。そのせいかダンスセンスはなかなかで、1999年に「愛在2000」というラテン調の曲がヒットしてからは「中国のリッキー・マーティン」なんて呼ばれ方も定着した。音域が広く、ファルセットも自在にこなす。私は99年に北京に引っ越した頃、この「愛在2000」を香港ロケのMVで歌い踊る彼を見て、「中国にも歌って踊れる人がいるじゃん~」と早速気に入ってしまったのだった。
ライナーを読むと、しばらく新譜が出ていなかったここ数年の間に結婚して2児の父になったらしい。めでたい(^^)
なお、中国大陸で発売されるCDは、一般にジャケット・歌詞カード共に簡体字が使われる(香港・台湾を含む大中華圏でのセールスを意識して、繁体字を使う場合もある)が、この文中では日本の漢字にした。
信仰 @YesAsia.com
デビュー当時は、「まあ、普通のアイドルグループかな」と思っていたのだが、このところしっかり歌えるようになってきた。Alex(写真左)は顔も声も少年っぽく、Ben(写真中央)はややハスキーで低めの声、Danny(写真右)は伸びやかな高音と、3人の個性もはっきりしてきて、グループとして成熟が感じられる。 前作がかなり良かったので、この新譜には期待していたのだが、ちょっとびっくり。まるで、K-popなんである。EnergyというグループがK-popカバーを得意としていて、北京語で歌うのが不思議なくらいなのだが、B.A.D.よお前らもか!という感じ。しかも、本家・神話のEricまで参加しちゃってる^^; 要するに、今回のコンセプトは「Hip Hop」らしい。
とはいえ、R&Bの「愛上了壊」「Don't say goodbye」は甘く聴かせてくれるし、カラオケでオッサンが酔っ払ってるみたいな「這首歌不是我點的」は笑える。「愛情攻投」は恋の駆け引きに長けた彼女をプロ野球選手に例えるあたり、野球の盛んな台湾らしい。Bonus Trackの「Get High」はスカ(東京スカパラダイスオーケストラのような)と、よく聴くとバラエティに富んでいる。
日本のジャニーズ系の雰囲気を持つ若い男性グループが次々出てくる台湾だが、この3人は一応、音楽で売れるようになりそうだ。
B.A.D.Ⅴ @YesAsia.com
この李聖傑(サム・リー)のデビューアルバムが出たのは2002年。その後なかなか2ndが出ず、私は「やっぱり一発屋だったのかしら」と寂しい思いをしていたのだが、レコード会社の問題だったようだ。1stを出した東方魅力が音楽から撤退してしまったので、その後の移籍先探しに手間取っていたのだと思う。幸い、無事に移籍できたようで、2004年末に滾石唱片(ロックレコード)から「手放開」をリリースした。今、このタイトル曲がけっこうヒットしているようで、嬉しい。そんなタイミングなので新譜を紹介した方がいいのかもしれないが、「これはいいかも!」と思ったデビューアルバム抜きには語れないのだ。
背が高く、程よく日焼けした李聖傑は、デビュー前はコーチで稼いでいたほどテニスができるらしい。パワーがあるが、決して荒っぽくはないボーカル。北京語の発音がクリアで聞き取り易く、詞がすんなり耳に入ってくるのがいい。ところどころ入れるファルセットで、バラードは切なさを増す。一方、ファンキーな「想太多」、ノリのいいディスコナンバー「Now & Forever」、ベタベタなジャズの「擁抱」とバラエティも充分。最後はアコギ1本でサラ・マクラクランの「Angel」を聴かせてくれる。タイトル曲の「痴心絶對」は、中国でドラマの主題歌に使われたようで、大陸でも知っている人は知っているらしい。この曲は移籍にあたって“餞別”にもらったのか、2nd「手放開」にも収録されている。
台湾では、新譜発売後しばらくして、何かオマケを付けた新バージョンが出ることがある。「手放開」もTV特番のVCDを付けたバージョンが出た。最初のバージョンでは流行りの無精髭でワイルドなイメージだったのが、新バージョンでは髭を剃ってすっきり、二枚目になっている。初めっからこれにすればいいのに~、と思ったのは私だけ?


痴心絶對 @YesAsia.com
私が初めてDreamzFM(夢飛船、FMはFlying Machineの略)を見たのは、陶晶瑩の「愛[口約]」MV。ラップとも歌ともつかない、ボソボソしたコーラスをしてた。その後、彼らのデビュー曲「[イ尓]愛[女也]我愛[女也]」で名前を知った。台湾でデビューしたが、あまり売れなかったようで、シンガポールに帰ってきてしまった。プロデューサーと合わなかったのかもしれない。帰ってからシンガポールのミュージシャン達と作った2ndは、当地ではまあまあ売れたらしい。(東京でメジャーデビューしたけど、やっぱり故郷へ帰って地道にインディーズで頑張ってるようなものだろうか)そこで自信をつけて出した3rdがこれ。気の合うミュージシャンと、じっくり作ったのがよくわかる、バランスのいいアルバムで、彼らの曲作りの才能と、ボーカル、コーラスの力を如何なく発揮している。
1曲目からファルセットを駆使した美しいハーモニーで、甘~いプロポーズソング「STAY WITH YOU」を聴かせてくれる。便利に使うだけの不実な彼女に引導を渡す「7.11的愛戀」、浮気ばっかりしてる彼女にちょっと恨み節の「壊毛病」は、3人の中ではややハスキーで低音のCavin(写真中央)がボーカル。ビージーズさながらの「戦略高手」はJim(写真右)のファルセットが冴える。「守護星」は後に香港の梅艶芳がデュエットアルバム「With」でカバーした。共演は蘇永康

3人で曲を作っていく様子の録音や、ラジオのDJのようなお喋りも入っている。シンガポール政府の「ボランティア活動をしよう」キャンペーンソングや、シンガポール観光宣伝ソングは英語。そういう歌を入れるところに、「シンガポールで頑張ろう」という意気込みが感じられる。が、しかし・・・このアルバムが出たのが2001年。その後、ドラマの主題歌などを歌ったという話はあるのだが、アルバムは出ていないのだ。Jim林毅心は作曲家として売れっ子になっている(いろいろな歌手のアルバムで彼の名前を見かける)。Ric劉瑞聰は元々グラフィックデザインをやってたらしく、ジャケのデザインも彼が手がけた。Cavin蘇志城は舞台に出たり、ラジオのDJもやってるらしい。もう3人で歌う予定はないんだろうか・・・。だとしたら、かなり寂しい。チャートの中心は台湾で活躍する人で占められても、地元で頑張るアーチストがいてほしい。
実は、わざわざシンガポールへ録音しに行く歌手がいるほど、シンガポールのミュージシャンの質は高いのだ。ちょっといい音だわ~と思うと、ギターやベースに参加してたりする。プロデューサーにも名手が多い。北京語ポップスを支えているのはシンガポールかも?! ただし、台湾のレーベルから出ていないCDは流通ルートにのりにくい。DreamzFMはデビューが台湾だったおかげで、日本の業者も名前を知っていて、2ndや3rdを仕入れてくれたが、他のアーチストだと入手自体が難しいかも。現地へ行った時に買うしかないようだ。う~ん。
Teiより前の“元祖・がらがら声”といえばこの人。なんて言ったらファンに殴られそうだが、この声が何とも魅力あるのだ。音楽的にはR&Bで、黒人っぽいと言われているようだ。
このアルバムは1st。すでに3rdまで出ているが、私にはこのアルバムの印象が一番強い。「Like A Movie」のタイトルどおり、全部の曲にモチーフとなった映画のタイトルが添えられている。大ヒットになった「アンデナヨ(ダメですか、という意味らしい)」は、「花様年華」がモチーフ。映画をイメージしながら聴くと、歌詞の意味はわからなくても、なんだか情景が浮かんでくるような気がする。他に使われている映画は「ブエノスアイレス」「春の日は過ぎ行く」「25歳のキス」など。発声はちょっと演歌っぽいくらいソウル系。力が入ると“うなり”も入る。英語の歌も表現力ある。
韓国のMVは短編映画かと思うくらい凝って作る事があるが、「アンデナヨ」も映画みたいだった。仲良し女子高生二人が住む下宿に、新任の教師(若い男)が越してくる。密かに憧れる内気な女の子。もう一人の活発な子は、無邪気に教師への好意を表す。それを自分への愛と勘違いした教師は本気で活発な子を好きになるが、ふられてしまう。自棄酒をあおる彼を見て、自分の気持ちに気づいてもらえない悲しみのあまり、内気な子は入水自殺を図る。助かったけれど心を病んでしまった彼女と、ようやく彼女の気持ちに気づいて後悔する教師・・・。このMVをテレビで見たとき、ストーリーに夢中になってしまい、曲も歌手の名前も全然記憶に残らなかった。それって、MVとしては本末転倒なんじゃないだろうか、、、
Wheesungが売れてから作られたもう一つのバージョンは、パブで歌うWheesungをじっと見つめる女性。このほうが普通、だよね。ちなみに、Wheesungには漢字で輝星とあてるらしい。スターらしくてカッコいいぞ。
このアルバムを知り合いに紹介したら、すごく気に入ってくれた。それはいいのだが、メールで「アンデナヨ」がなんとか、と書かれて、その頃韓国語がわからないのはもちろん、ハングルも全く読めなかった私は、「アンデナヨって何?」と質問してしまった。紹介した本人が曲のタイトルも知らないなんて・・・と、その人には思いっきり呆れられてしまった。今でもタイトル、歌詞と全然わからないままに聴いている。わかるようになったら感じ方がどう変わるか、ちょっと楽しみかも。
フィソン1集-Like A Movie @YesAsia.com
来週2ndが出るらしい。ちょっと楽しみ

The First Journey @YesAsia.com
韓国の19歳の若者。ということは兵役前だ。特別イケメンというわけではないが、ちょっと見は爽やか。写真によっては、やんちゃな感じも出る。アコースティックギターで始まる1曲目、やはりギターで聴かせる2曲目と優しい雰囲気が続く。3曲目の「Every day」はどっかで聴いたような気がする、、、ドラマの挿入歌だったのかもしれない。4曲目の「DESTINY」は荘厳なストリングスで始まり、ボーカルもパワー全開で力強い。少しかすれている声だが、目一杯張り上げても割れないのは聴きやすい。一方で、ファルセットを多用する曲でもとてもきれいに聴かせる。スペイン語とフランス語のラップが出てくる曲もある。韓国人って、フランス語上手な人が多いのは、母音が近いとか、どちらもリエゾンがあるとか、理由があるんだろうな。それにしても、これで19歳とは。韓国って、次から次へといい歌手が出てくる。
CDをパソコンに取り込もうとしたら、タイトルが入力されてなかった。初めて、韓国語を入力してみた。キーボードのやり方は知らないので、手書きパッド。お絵かきみたいで楽しい。入力がとりあえずできるようになったから、韓国語の検索もできるぞ~。(問題は、内容が理解できないことで^^;)
SOL vol.1 @YesAsia.com
BlissはボーカルのOscarと楽器のGucciの2人組。Oscarは元モデルだけあって、すらっとしたカッコいいお兄さんで、歌にものすごい個性があるわけではないが、甘い良い声をしている。GucciはOscarの隣に立つと損してるかも(笑)全曲作曲、編曲、ピアノと大活躍。先行シングルの「活該」はメロウなR&Bだが、CDの1曲目「help」はラグタイムっぽいジャズ。「失落奥斯卡」は香港によくある“K歌”(カラオケで歌いやすい曲)だが、「情人借借」は爽やかなボサノバで、「let me be alone」はムードジャズ。持ってくる曲がとにかく普通ではない。それも道理で、彼らは初めから「ジャズをやるぞ!」という意気込みで結成したユニットらしいのだ。使っているミュージシャンもドラムの恭碩良をはじめ、ベースのPaul Candelaria、ギターの蘇徳華と豪華。そこへ混じってどんな曲調でもばっちりピアノを弾きこなしているGucciの腕前は相当なものだ。
香港には主に4つのチャートがあるが、そのうちの一つでは4曲がすでにチャートインした。全部で6曲しかないミニアルバムから4曲というのは、すごい確率じゃないだろうか。(チャートは宣伝費をかければある程度入るものらしいし、そのラジオ局と特にいい関係なんだろうが、それでもかなりのものだろう。)彼らの好調さを見ていると、香港人の音楽の好みがちょっと洗練されてきたのかな?という気がする。
We Are @YesAsia.com
1stアルバム「MY WAY」でほとんど自作のR&Bを展開したが、今回は自作曲は少なく、盟友の常石磊が関わる曲が多い。その分、ボーカルやコーラスに工夫して、曲風もバラエティ豊かになった。常石磊と李悦君のコーラスが抜群の「春天」は、耳元でささやかれるボーカルが気持ちいい。しみじみバラードの「無能為力」はロングヒットになっている。北京語、英語、広東語の3バージョンある「Blessing」(北京語版は「他們」)。オリジナルはおそらく北京語版で、英語版が次で(Rayvaughn Covingtonという名前がクレジットされている)、最後に広東語版を作ったんじゃないかと思う。その広東語詞は、2004年11月に亡くなった香港の作詞・作曲家、黄霑の最後の作詞となった。最初に聴いたせいか、私はこの広東語版が一番好きだ。歌詞の内容と発音が一番曲に合っていて、盛り上がる。優しい歌い方のHinsがドラマチックに歌い上げるところは、ゴスペルと言ってもいい。
香港・大陸両版に共通の広東語曲は梁詠(ジジ・リョン)提供の「昨夜、早晨」と先行シングル「孤単公園」。これも大陸版は広州の地名を歌詞に織り込んだ「公園前」にするあたり、芸が細かい。曲順も大陸版は北京語曲を初めから並べ、広東語の2曲は最後だが、香港版は初めに「昨夜、早晨」を持ってきて、間に「孤単公園」や「Blessing(広東語)」を配置。香港人が飽きないようにしているわけだ。
2004年度の香港の音楽賞にもノミネートされ、授賞式に来ていた。香港のミュージシャン達とも顔がつながったようだから、次は意外な組み合わせの合作があったら面白いな。でも、授賞式にはもう少し良い服を着ておいでよね。可愛い顔してるんだから。
am/pm @YesAsia.com
2004年にアルバム「Start Up」でデビューした劉浩龍(ウィルフレッド・ラウ)の2nd。この人はレコード会社と契約してから実際にCDが出るまで、7年かかってしまった。華星(キャピタルレコード)倒産のあおりをくったらしい。新人・若手歌手たちの間ではその下積みの長さ故、「師兄(先輩、兄弟子)」と呼ばれているそうな。それがそのままデビュー曲になってしまった。声だけ聞いていると陳奕迅(イーソン・チャン)にそっくり。歌い方や楽曲もかなり似ている。イーソンが“育児休暇”中でなかったら、すんなり売れなかったのでは・・・鬼のいぬ間のなんとやら。けれども何故か、イーソンとは違う、独自のスタイルをそのうち見せてくれそうな気がする。
「師兄」はアップテンポでノリのいい曲だったが、アルバム「Start Up」は思ったよりバラード中心。ジャズもどきが入ってて、いっぱいいっぱいで必死に歌ってるのが面白かった。そういうのが歌えてしまうのもイーソンに似てる・・・ と思ってたら、2ndもほぼ似たような雰囲気。でも、この水準のものならいつでも作れると証明してしまった。メインの「斷尾」は渋いバラードで、ライブで巧く歌いこなせたらカッコいいかも。ジャズもどき「奇幻世紀」はかなり本格的に、ピアノにRoel Garciaを引っ張り出している。1stでメイン曲だった「思覺失調」の北京語版「遺失感覺」では、ポルタメンテ(上の音から下の音へ流れるように移る)を自然に使っていて、言語の特性を活かした対応をする能力に感心した。(広東語「思覺失調」では入声の関係であまり使えなかったと思われる。)微妙に発声が広東語を歌う時と違うのも鋭い。
声そのものはあまり個性がなく、環球10周年演唱會で大勢といっしょに歌っていると、どこにいるやら全然わからなかった。それでも気持ちいいのは、GoEast(正東)というレーベルの、この時期の音作りが、私の好みに合ってるってことかな、と思う。(ある時期のあるレーベルの音がなんか好き、っていうことありません? 一時期ファンハウスの音が妙に好きだったんだけど)パッケージが入れ子構造になっていて、CDにたどりつくまで大変なのだった。香港ってこういうところに凝るのが好きなのよね~。
Singing in the ring @YesAsia.com