飛んで鼻に入る夏の虫

「飛んで火に入る夏の虫」はよく聞く下りだが
鼻に入ると大変だ
先日の警察学校での講義で
偉そうに姿勢を正して
暑さも吹き飛ばす勢いで
思いきり鼻から深呼吸をしたら
何を間違えたのか
一匹の虫が
僕の鼻の中に飛び込んで来た
一糸乱れず直視して
僕の講義を聞いている警察官諸君の面々
如何ともし難い
早く鼻をかまないと
ドンドン奥に侵入して行く
痛いような
かゆいような
でも顔の表情は変えられない
講義中に鼻はかみたくない
僕のプライドが許さない
鼻の奥でピクピクする虫を無視しながら
僕の講義は続いた
耐えに耐えた数十分
あの虫は
鼻の奥の何処に消えていったのだろう
生きていると
いろんなことが起きる
生きるというのは大変だ

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