学院生の一人が目に涙を一杯浮かべて、僕に懇願してきた。「先生!どうしてセメントで小川を固めてしまうんですか?緑の小川をセメントで固めてしまう理由は何ですか?」、悲しくて涙が止まらないのか、どうしようもない気持ちを僕に訴えてきた。世の中のいろんなことに疲れて、自分を慰めてくれる風景に帰りたくて、昔懐かしい緑のせせらぎに逢いたくなって、訪れた小川の変貌。土砂と機械の化け物が緑を食い尽くしている。死んだような冷たさだけが伝わってくるセメントの水路に変えられようとしていた。「こんなにたくさんの建造物があるのに、どうして果てしなく建物を作るの。みんな言ってるじゃない、自然を取り戻そうと。メダカやフナや鯉が元気に泳いでいる小川を。水草やススキが川面に移っている小川をと・・・」、言葉巧みに表面だけは賛成しながらも、相も変わらず自然破壊を続けている資本主義のお金の魔物に取り付かれた人間達の悪の心と、どう戦えばいいのか?彼女の涙を理解できる大人達がどんどん消えていく。頑張れ!学院生!緑の地球を取り戻すために!
第23期生の小原学君(通称テリー)の結婚披露宴が行われた。宴会場は奄美の島を中心に鹿児島から与論までの東シナ海の島々を日本庭園の中に描いた荘厳な風景を楽しみながらの紬の老舗、大島紬の里である。新婦は剣道の達人で茶道の心得も持ち合わせた、学君には申し分ない良妻賢母を絵に描いたような美人の千賀さん。高校時代にはまさかと思っていた二人だそうだが、とても微笑ましい風景であった。学院卒業生の結婚式にはいつも驚かされることがある。今回もその例外ではなかった。お祝いの席に参列と言うことだけのつもりでの出席だったが、司会者から突然、開式一番にお祝いの言葉を指名された。御両家の皆さんに申し訳ないと思いながらも、即興のスピーチで勘弁していただいた。「どんな時にも、臨機応変に、即興でお話ができるぐらいのスピーチ力を身に付けておくのが、国際社会を生き抜いていくための大切な教養ですよ。」と教えてきたことが、自分の身に降りかかる火の粉となった。即興スピーチのリクエストもそうだが、学君の自作自演のとてもユニークな披露宴に、大阪からの特別ゲストのご婦人が、学君を吉本に紹介したいと絶賛するぐらいの演出振りであった。学君、千賀さん、おめでとう、そしてお幸せに。