語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>ヘリウムガス冷却計画 ~工程表以外の方法~

2011年06月14日 | 震災・原発事故
 福島第一原発の収束を妨げている最大要因は、施設内に充満する放射能汚染水だ。仏・原子力企業「アレバ」などが製作中の浄化装置の稼働が遅れた場合、6月20日にも汚染水は溢れ出る。
 工程表では、装置で汚染水を浄化後、冷却水として再利用し、原子炉を循環させる。が、完全に作動するかどうかは不明だ。むしろ、メルトダウンによる原子炉の破損が濃厚となった現状では失敗に終わる可能性がある。

 東京とワシントンに拠点をもつ原発コンサルタント会社「IAC」は、事故分析、事故収束策、原子炉の冷温停止後から廃炉プロセスまで綴られている文書を作成している。文書は、日本政府を飛び越え、米原子力規制委員会(NRC)、米エネルギー省(DOE)などの公的機関、さらに米原子力業界に極秘裏に送付され、現在、米国側の評価を待っている。
 3月末、「IAC」は米国経由で事故分析レポートを官邸に届けた。しかし、政府は同社の提言を生かせず、東電に“丸投げ”している。同社は、今回、意図的に米国を優先し、外圧によって政府に行動を促そうとしているのではないか。

 工程表に対する文書の評価は厳しい。特に、浄化後の汚染水を原子炉の冷却に再利用する循環冷却システムを「現実的でない」と切り捨てている。漏出する汚染水を100%回収できるなら循環注水システムは意味がある。しかし、実際は大量の汚染水が循環系の外部に漏れ続けている。循環冷却を長期続ければ、地下水、海洋への汚染がますます拡大するばかりだ。「冷やす」「閉じこめる」が両立していない。
 要するに、工程表に従えばカネも時間もかかりすぎ、国民の被曝は食い止められない。
 そこで文書が提起するのは、「ヘリウムガス冷却」だ。
 現在の「水冷」から「空冷」に切り替えるために、現時点で水が漏出している原子炉の破損箇所を塞ぐ必要がある。注水にガラス繊維と微粒子をまぜる手段などが考えられる。その後、1号機はヘリウムガスを強制循環させて1年程度冷却。さらに空気の強制循環を2年間行い、以降は建屋に排気筒を設けて空気を自然対流させる。2、3号機はヘリウムガス冷却に2年、その後8年間は空気の強制循環を行い、9年目から自然対流に移行する。当然、汚染水は発生しない。ヘリウムガスは、次世代の原子炉「高温ガス炉」の冷却材に使われる媒体だ。熱伝導率が高く、徐熱効果が高い。高温状態でも核燃料などと化学反応を起こさず、安全だ。【佐藤暁・「IAC」上級原子力コンサルタント】
 計画では、各炉は解体せず、建屋全体をコンクリートで固め、「石棺」化する。地下もコンクリート壁で遮断し、地下水や海洋への汚染を防ぐ。さらにヘリウムや空気を循環させるための配管、換気装置などの設備を外部に設置。それまでに貯めこんだ低濃度汚染水は、コンクリート調合用として再利用し、高濃度汚染水はガラスで固めて地下に埋没する。
 溶融して格納容器外へ漏出した核燃料【注】の回収は、超高度の放射線量や残留熱などから、ほぼ不可能。このため、原発敷地を最終処分地として100年以上管理する廃炉計画が盛りこまれている。
 なお、空冷に移行する際、コンクリートで固められた建屋は密閉空間になる。この時、高温の燃料がコンクリートを分解して水素、酸素が発生して建屋内に充満すれば爆発のリスクは高まる。残留熱で水を蒸発させることで、爆発を回避する。

 循環冷却による冷温停止は、廃炉に向けた単なる道標にすぎない。しかし、政府は冷温停止後の廃炉に至る大綱を示していない。コスト面を含めて工程表の先にある廃炉に向けた議論になれば、と計画案をまとめた。【佐藤】
 廃炉に至る計画案は、「IAC」以外にも、東芝、日立などが既に東電と政府に提出している。
 現状以外の方法論を知れば、事態収束に向けた議論は深まるはずだ。
 「政府は“東電任せ”ではなく、事態収束の主導権を握って国民に道筋を示すべきだ」【佐藤】

 【注】「IAC」文書によれば、1~3号機の原子炉内で溶融してマグマ状になった核燃料は、格納容器から漏出している可能性が十分にある。格納容器下部とコンクリートの溶融(放射性エアゾルの大量発生をもたらす)は現在は起きていないと考えられるが、初期段階では発生した可能性がある。コンクリートは、おそらく貫通していない。

 以上、記事「菅アテにせず!“機能不全”の官邸スルー ヘリウムガス冷却計画」(「サンデー毎日」2011年6月19日号)に拠る。
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