語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>廃炉を提案した東海村長 ~危なかった東海第二原発~

2011年10月15日 | 震災・原発事故
 このたび、福島第一原発から110km南南西に位置する茨城県東海村にも、大量の放射性物質が降り注いだ。
 実は、日本原子力発電東海第二原発も危なかった。3月11日、東海村は震度6弱の大きな揺れに襲われ、電気・水道は止まり、あちこちで道路が陥没した。村役場の建物は一部破損し、建物の周囲も陥没して段差ができた。
 原発(沸騰水型軽水炉1基)は自動停止した。近くの変電所は機能不全になり、外部電源をすべて喪失した。3台の非常用ディーゼル発電機がすぐに稼働した。
 しかし、地震発生から30分以上経過後、津波が次々に押し寄せ、最高5.4mに達した。原子炉建屋(標高8m)は直接の被害を免れたものの、海側の低い位置にある非常用ディーゼル発電機用海水ポンプ(冷却用)3台のうち1台が、浸水によって機能不全に陥った。原子炉建屋内の非常用ディーゼル発電機3台のうち1台が停止した。数日間にわたって冷却不十分な状態が続いた【注】。
 ポンプ室の水かさがあと少し高かったら、津波があと1mでも高かったら、他の2台のポンプも停止してすべての発電機が機能不全になり、福島第一原発1~4号機と同様に全電源喪失に陥るところだった。
 また、津波の浸水高が8mを超えていたら、原子炉建屋の地下に置かれた非常用ディーゼル発電機自体、機能喪失していたかもしれない。
 幸い、ほぼ53時間で外部電源が復旧したが、単に運が良かった、というだけのことだ。

 東海第二原発の20km圏内には水戸市と日立市の中心部も入る。70万人が居住し、30km圏内には100万人が居住する。
 村上達也・東海村長はいう。
 「そういった住民を安全に避難させれることができるのか? 政府の対応を見ていると、できやしないと思う。そんなところに原発を造るべきじゃない」
 事故後の政府の対応は、「後手後手で、詳細な汚染データが公表されず、福島第一原発周辺の住民避難体制が組めなかった。そのため、住民は無用な被曝を強いられた。国民保護という観点が完全に欠落している」。
 「こういった国には原発を持つ資格はない」
 「この地震列島に54基もの原発を造って平然としている。その神経がおかしい」
 原発に緊急安全対策の改修が施されたが、運転再開は「東海村だけで決めるには難しい話だ。現在のようないい加減な安全規制体制のままでは、ただちに廃炉だ」。
 「村には使途自由な財政調整基金が約70億円ある。『だから脱原発』と言っているわけではないが、カネに困って運転再開を認めることはあり得ない。村民の安全を第一に考えて判断する」
 村上村長は、「脱原発」発言を繰り返すが、村内の原子力関連事業すべてに否定的なわけではない。震災前に発表した原子力センター(仮称)構想は撤回していない。が、徐々に「脱原発」へ軌道修正しつつある。
 原発を止めようと言っても、一発で「きれいに」なるわけではない。原子力の安全性に係る基盤づくり、原発廃止後の問題解決がより一層求められるようになった。これまで培った技術力と人材を生かして、東海村を原子力研究国際都市にしていきたい。【村上村長】

 他方、村議20人の大多数は、原発推進派だ。
 また、東海村内の世帯には、原子力関連や日立製作所に勤務する人が1人以上いる。原子力に否定的な意見を表だっては言いにくい。
 東海村民の意向は掴みにくいが、周辺自治体の住民には運転再開に反対の声が増えている。反対の署名運動は、9月末現在で13,000筆集まった。

 【注】海水ポンプ室手前にある側壁/防潮壁(標高4.9m)に加え、2年前に6.1mの側壁が新設されたが、封止工事が未完了だったため、ポンプ室に浸水した・・・・というのが、原電側の説明だ。

 以上、星徹(ルポライター)「茨城県東海村は「脱原発」へ向かうのか? ~危なかった東海第二原発~」(「週刊金曜日」2011年10月7日号)に拠る。

   *

 10月14日、村上達也・東海村長は、村議会原子力問題調査特別委員会において、細野豪志原発担当相に対する東海第二原発の廃炉提案について説明し、「村がこれから先も原発に依存していくことには限界がある」と述べ、「私の考え方は福島第一原発事故後、一貫して脱原発だ」と明言した。
 さらに、圷(あくつ)常美・委員/会派「新和とうかい」代表の批判に対し、「地震津波対策に万全ということはありえない。万全だというなら国が保証することが必要だ」と述べた。

 以上、記事「東海村長 原発廃炉提案 議会委で説明」(2011年10月15日 asahi.com)に拠る。
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【震災】原発>プルトニウム... | トップ | 【中村稔ノート】ある潟の日... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

震災・原発事故」カテゴリの最新記事