語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【中村稔ノート】ある潟の日没 ~震災と戦災~

2011年10月15日 | 詩歌
 この衰残をきわめた地方を何としよう
 火田民の嵐が立ち去ったあとのように
 赤茶けた土塊はぼろぼろとくずれるばかり
 喬木には鳥さえもなかず
 疎らなる枝々はひたすら大地をねがう
 ああこの病みほけた岸辺に立って潟を望めば
 日没はあたかも天地の終焉のごとく
 あるいは創世の混沌のごとく

  --------------

 中村稔「ある潟の日没」の前半部だ。
 中村の長い詩業のうちでも、もっとも初期に属する一編だ。この作品は1945年に書かれた。原口統三(1927年1月14日~1946年10月25日)の入水の前年であり、終戦の年だ。
 ちなみに、中村は1927年1月17日生まれ。46年に『世代』に参加し、50年に第一詩集『無言歌』を刊行した。大学在学中に司法試験を通り、50年に卒業し、その2年後に弁護士登録をしている。

 「ある潟の日没」は、『鵜原抄』(思潮社 1966)に、後に『中村稔詩集 1944-1986』(青土社、1988)【注1】に、さらに後に『中村稔著作集 第1巻』(青土社、2004)に収録されている。

 震災の翌々日【注2】から「【震災】」というヘッダを付けた文章をアップしてきた。書いている間にしばしば念頭を去来したのが、上に引用した詩句だ。

 【注1】この詩集には加藤周一の評がある。「『加藤周一自選集8 1987-1993』」参照。
 【注2】「【震災】東日本巨大地震、専門家は・・・・
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