語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>プルトニウムとストロンチウムの飛散範囲 ~100km圏超~

2011年10月14日 | 震災・原発事故
 9月30日、文科省は発表した。6~7月、半径80km圏内の100ヶ所で土壌を採取したところ、原発から45km離れた飯舘村を含む福島県内6ヶ所でプルトニウムが検出された、と。
 最高値は、浪江町の1平米当たり4.0Bq。土壌1kg換算で0.062Bqになる。
 このほか、飯舘村、双葉町を含む計3町村で1平米当たり0.55~2.3Bqを検出した。

 測定結果の公表まで、時間がかかりすぎている。データを寝かせてきた政府の対応は、まったく理解できない。プルトニウムが検出された飯舘村北部は、事故当時から放射線量がさほど高くはなかったため、油断した住民がプルトニウムを吸い込み、被曝した可能性がある。プルトニウムは毒性が強く、セシウムやヨウ素の何万倍もの厳しい規制値が必要なのだ。【上昌広・東大医科学研究所特任教授】
 
 原子力安全・保安院の試算によれば、今回の文科省の調査対象となったプルトニウム238、プルトニウム239、プルトニウム240の放出量は、計254億Bqだ。
 プルトニウムは、米国西海岸やハワイでも検出された。
 海洋への流出も否定できない。

 現状では、プルトニウムの拡散を予測するにはデータが不足している。プルトニウムが粒子、ガスなどどんな状態で放出されたかを知ることが飛散範囲や沈着量を逆水系するための第一歩だ。放出量の時間変化データを加えれば、より再現性の高いシミュレーションが可能だ。【大原利眞・独立行政法人国立環境研究所地域環境研究センター長】

 プルトニウムはアエロゾル(霧状)化して飛散した。ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料が使われていた3号機のメルトダウン、メルトスルーによって核燃料が格納容器基部のコンクリートと化学反応を起こし、プルトニウムが大気中に超微粒子になって放出された。アエロゾル化したプルトニウムは、少なくとも半径100km圏に到達した。首都圏から検出される可能性は十分にある。【佐藤暁・インターナショナル・アクセス・コーポレーション上級原子力コンサルタント】
 100km圏内には、北は仙台市、南は茨城県日立市、内陸方面は福島県会津若松市、栃木県那須塩原市が入る。

 プルトニウムがガス化するほど原子炉が高温になったとは考えにくい。遠くまで飛散したとは思えない。だが、半径20km圏の警戒区域ないではプルトニウムのホットスポットが形成されている可能性がある。【小出裕章・京都大学原子炉実験所助教】

 以上、記事「最凶プルトニウム254億ベクレルはどこまで飛んだのか」(「サンデー毎日」2011年10月23日号)に拠る。

   *

 9月30日、文科省が発表した土壌の汚染マップによれば、80km圏はストロンチウムに汚染され、原発の北西にはプルトニウムの汚染帯まで広がっていた。
 核燃料の温度が異常に上昇した場合、ヨウ素やセシウムなど融点・沸点の低い物質から順に放出されるが、このたびの事故では炉心溶融が生じたためプルトニウムも放出された。全放出量は数g程度だとはいえ、本来原子炉にあるべき核物質が45km離れた飯舘村で検出されてしまった。【高木直行・東海大教授】

 半減期は、ストロンチウム89が50日、ストロンチウム90が29年。ともにカルシウムと似た性質があるので、体内に入ると骨に付着してなかなか排出されない。白血病や骨癌の原因となる可能性がある。【伊藤伸彦・北里大教授】
 透過力の強いγ線を出すヨウ素やセシウムなら、ホールボディカウンター(WBC)で内部被曝のチェックができる。しかし、プルトニウムの出すα線やストロンチウムが出すβ線は、透過力が弱くて体外まで到達できないため、WBCでも計測できない。今回は飛散した範囲を調べたわけではないから、さらに広い範囲に飛び散っている可能性がある。セシウムが検出されている場所には、微量のストロンチウムやプルトニウムが存在し得る。【松田尚樹・長崎大教授】
 今回検出されたのは、プルトニウム238が最大で4Bq、ストロンチウム89は同22,000Bqで、それほど心配する値ではない。【伊藤教授】。

 6月2日、福島第一原発の周辺から採取した海底土から、ストロンチウム89が140Bq/kg、同90は44Bq/kg検出されている。
 「濃縮係数」は、セシウムが30~100倍であるのに対し、ストロンチウムは0.03~20倍と低い。
 しかし、濃縮係数が低いといっても、骨は他の部位と比べて高いので、骨まで丸ごと食べる魚は注意が必要だ。特に、淡水は海水に比べて濃縮しやすいので、少なくとも淡水魚のワカサギは検査したほうがよい。【広瀬勝己・上智大客員教授/元気性研究所地球化学研究部長】
 8月末には、赤城大沼(前橋市)で基準値を超えるセシウムが検出されている。ストロンチウムは、水産庁が骨まで食べる魚を中心に、これまで6種類を検査しているが、ワカサギは含まれていない。ゴマサバ、マイワシ、カタクチイワシ、アカガレイ、イカナゴは検出限界を下回った。マダラからのみ、0.03Bq/kgのストロンチウム90が検出されている。
 プルトニウムの検査は、魚に関しては、これまで一度も実施されていない。

 海の幸は上記のとおりだが、山の幸はどうか。
 食品によって、ストロンチウムの吸収率は違う。ピーナツや栗などの種実類、大豆などの豆類、じゃがいもなどは土中のストロンチウムを吸収しやすい。一律に「ストロンチウムの量はセシウムの量の1割程度だ」と推定して済ませるわけにはいかない。【白石久二雄・元放射線医学研究所内部被ばく評価室長】

 以上、記事「原発の敷地外からプルトニウム検出 ストロンチウムは80キロ圏外に拡散」(「週刊朝日」2011年10月21日号))に拠る。

   *

 8月に横浜市港北区のマンション屋上の堆積物から、195Bq/kgの放射性物質ストロンチウム90が検出された。
 単純には比較できないが、4~5月に福島市内の土壌から検出された77Bq/kgと比べても高い値だ。
 横浜市は250km離れている。100キロ圏外でストロンチウムの検出は初めてだ。文部科学省の調査では、福島第一原発から100km圏内の福島県で5月に土壌から最高250Bq/kgのストロンチウムを検出している。宮城県でも検出された。
 なお、くだんのマンションの同じ堆積物から、63,434~105,600Bq/kgのセシウムも検出された。

 ストロンチウムが離れた場所に飛ぶのは分かっていた。原発事故に伴い、横浜で検出されても不思議ではない。値は高いが、高濃度のセシウムが出ている場所なら納得できる。濃縮されたのだろう。【小出裕章・京都大学原子炉実験所助教】

 以上、記事「横浜でストロンチウム検出 100キロ圏外では初」(2011年10月12日3時32分 asahi.com)、記事「横浜でストロンチウム検出 原発100キロ圏外に拡散か」(2011/10/12 12:12 【共同通信】)に拠る。
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1 コメント

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電力のためにこれ以上の負担を国民に (中村富夫)
2012-07-27 07:02:22
押し付けるな!

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