語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【読書余滴】スウェーデン、「保育料2万円」は高いか安いか

2010年08月13日 | □スウェーデン
 「週刊現代」はフス恵美子に取材し(2010年8月21・28日号)、「【読書余滴】スウェーデンは本当に幸せな国なのか
」に引いたように、「例4、小学校入学前の保育に月2万円程度の費用がかかる(フス夫妻の収入からすると「かなり高額」)」と述べている。

 スウェーデンでは2002年に保育料上限措置が導入され、第一子は所得の3%(最高1,140クローナ)、第二子、第三子はそれぞれ追加費用2%(最高760クローナ)、1%(最高380クローナ)となった。
 「週刊現代」は、スウェーデン人の平均年所得は男性580万円、女性440万円と数値をあげている。
 2002年の保育料上限措置が2010年も適用されると仮定した場合、かつ、1クローナ=10円で換算した場合、フス夫妻の所得は併せてスウェーデン人の平均年所得に近いらしい。

 これ以上は余計なお世話だから突っこまないが、日本の場合、東京都のある区では、3歳未満29,200円、3歳児19,500円、4歳以上18,000円といったところだ。千葉県のある市では、もっと、ぐんと高くなる。

 ところで、スウェーデンには児童手当がある。16歳未満の子どもをもつ親に対して、社会保険事務所から全額国庫負担で給付される。所得制限はない。
 一律に第一子から子ども一人につき月額950クローナが支給される(2001年)。二人なら1,900クローナで、2002年の保育料上限額(二人)と同額である。ちなみに、2005年には子ども一人につき月額1,050クローナに引き上げられた。
 
 育児支援策には、(1)両親保険制度(妊婦手当、両親手当)、(2)児童手当、(3)保育所サービスのほかに住宅手当がある。
 住宅手当(全額国庫負担)は、子どもの数が増えるにしたがって増額した家賃補助をおこなう制度である。
 たとえば、子どもが3人で家賃が6,600クローナの場合、基本額が1,200クローナ、(ア)子ども3人以上で家賃3,600までの支給率は3,600×75%=2,700クローナ、(イ)子ども3人以上で家賃3,600クローナ超の場合は(6,600-3,600)×50%=1,500クローナ、月額最高額5,400クローナ・・・・といったものである。
 子どもを伸びのびとした住宅環境のもとで育てることができるような政策的な配慮である。

 日本の児童手当は、3歳未満が一律に月額10,000円、3歳以上12歳(到達後の最初の年度末)まで第一子と第二子が月額5,000円、第三子以降は一人につき月額10,000円支給された。額は保育料よりもはるかに低いし、所得制限があった。2010年度は、児童手当に代わって子ども手当が15歳(の4月1日の前日)まで一人につき月額13,000円支給されるが、これまた保育料に満たない(所得制限はない)。
 そして、日本には子どもに特化した住宅手当は、ない。
 こうした事情を勘案すると、少なくとも育児に関するかぎり、スウェーデンより日本のほうがよい、とする理由は見あたらない。

【参考】藤井威『スウェーデン・スペシャルⅠ』(新評論、2002)
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