語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【古賀茂明】テレビコメンテーターの種類 ~テレ朝問題(7)~

2015年04月17日 | 社会
 (1)3月27日のテレビ朝日「報道ステーション」における古賀発言をめぐり、「古舘伊知郎vs.古賀茂明のバトル」という面ばかりがクローズアップされ、面白おかしく報道されている。
 官邸から見れば願ってもない展開だ。より本質的な
   「権力による報道の自由の抑圧」
という論点が全く陰に霞んでしまうからだ【注】。

 (2)「官邸からの圧力があった」ことについて異論を唱えるコメンテーターがいる。これが、本質論がなかなか展開されない原因の一つだ。
 現実に取材をしているまともなジャーナリストなら、権力側がいかにして(直接的な圧力も含めて)、異例なまでのマスコミ工作を繰り広げているかは周知の事実だ(すでに報道も行われている)。
 自分で取材しないか、偏った取材をしている自称「ジャーナリスト」だけが、こうした愚かなコメントを繰り返す。彼らの罪は重い。視聴者が、これに騙されて、「圧力はあったか」という入口の議論に関心を向けてしまい、本質論にたどり着けないからだ。

 (3)市民を惑わせる(2)のようなコメンテーターは多いのだが、彼らは3つに分類することができる。
   (a)そもそも政権寄りなので、政権側から圧力を受けるはずがない人たち。
   (b)テレビ局に媚びて出演機会を確保する人たち。その多くは自分の信念などなく、自ら局側の意向を汲んでコメントする。このグループが一番多い。テレビ出演で名前と顔を売ることが最優先。他番組への出演や講演の依頼が増え、ギャラが上がり、本が売れる。彼らも圧力とは無縁だ。
   (c)政権の監視や批判がマスコミの重要な役割だ・・・・ということは分かっているのだが、人間が弱く、信念を貫けない人たちだ。
      ①テレビの外では、けっこう政府批判もするが、在京キー局の本番では本質を避ける。番組外でのイメージがあるので、もやもやした発言でも真面目なコメントとして視聴者は受け入れてしまう。
      ②「出られなくなれば政権批判も何もできない」と、彼らは必ず言い訳する。・・・・しかし、その考えでは、政権の圧力によってテレビ局が自粛を強めるに従って、自分の発言の自主規制ラインも自動的に狭まってしまう。
      ③②のような行動を続けていると、最初は常に問題意識を持っていた人でも、いつのまにか自動的に政権の言うことに合わせるように変わってしまい、さらには、自分が変わってしまったことにさえ気づかなくなる。

 (4)(3)-(c)は、コメンテーターだけではなく、現場の記者やディレクターについても言える。
 古賀茂明が自分の考えを妥協しないで発言するのは、それを続けなければ自分自身が変わってしまう、と思うからだ。
 そのことをマスコミの人たちに考えて欲しい・・・・そう思ったから、古賀茂明は「報道ステーション」で、最後にマハトマ・ガンジーの次の言葉を紹介した。
 「あなたのすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは、世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするためである」

 【注】記事「「放送法」でTV局を牽制 そもそもの理念は?」(朝日新聞デジタル 2015年4月16日)によれば、
 <(3月27日の報ステにおける発言の)真意について朝日新聞の取材に応じ、「(テレビ局側に)政府批判を自粛するムードが広がっている。背後には政権与党の(テレビ局への)圧力と懐柔があると考えている。この二つを伝えたかった」と語った。
 「圧力」とは、首相がフェイスブックで民間人を非難したり、政治家が「放送法」を持ち出してメディアを牽制したりすることなどを指すという。
 古賀氏によると、第一に権力が圧力と懐柔でマスコミを抑え、第二にマスコミのトップが戦わなくなり組織全体として自粛し、第三に、現場の記者らが問題意識さえなくしてしまうとして、「今は第三段階の入り口まできており、危機感を抱いている」と話した。
 実際、政権側がテレビ局に注文を付ける例がこの半年で相次いでいる。自民党は昨年11月、報ステのアベノミクスの取り上げ方を問題視し文書で「公平中立」を求め、NHKと在京民放キー局にも衆院選報道での街頭インタビューに偏りがないようになどと注文を付けた。>

□古賀茂明「テレビコメンテーターの種類 ~官々愕々第151回~」(「週刊現代」2015年4月25日号)
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 【参考】
【報道】古賀氏ら降板の裏に新事実 ~テレ朝問題(6)~
【報道】ジャーナリズムの役目と現状 ~テレ朝問題(5)~
【古賀茂明】氏を視聴者の7割が支持 ~テレ朝問題(4)~
【古賀茂明】氏、何があったかを全部話す ~テレ朝「報ステ」問題(3)~
【古賀茂明】氏に係る官邸の圧力 ~テレ朝「報道ステーション」(2)~
【古賀茂明】氏に対するバッシング ~テレ朝「報道ステーション」問題~


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