(1)米国ニューヨーク市では、全米に15店舗以上展開するチェーン店に対し、ナトリウムが2,300mg(1日当たりの推奨摂取量上限)以上含まれているメニューに、塩分が多いことを知らせるマークを表示することになった。2015年12月1日施行。違反すると罰金(200ドル)が科される。
塩分が2,300mgという報道もあるが、1日当たりの推奨摂取量が2,300mg(2.3g)というのは低すぎる。ナトリウムで2,300mg、塩分換算で約5.8gが正しい(推定)。
(2)米国、特にニューヨーク市は食品表示を重視している。トランス脂肪酸の規制、メニューへのカロリー表示などを積極的に進めている。
一方、日本では外食産業に対する規制が非常に甘い。昨年施行された食品表示法で、加工食品は熱量(カロリー)と4種の栄養成分(蛋白質・脂質・炭水化物・食塩相当量)を表示することが義務づけられたが、消費者から要望が強かった外食産業は対象から外されている。
(3)日本人は、米国人よりも塩分を過剰摂取している。
1日当たりの塩分摂取量は、
成人男性 11.1g
成人女性 9.4g
だ【厚生労働省「国民健康・栄養調査」、2013年】。1日当たり約8g摂取しているといわれる米国人より、日本人男性は3gも多い。
(a)厚労省は、2015年版食事摂取基準で、1日当たり塩分摂取目標量を
12歳以上の男性 8.0g未満
10歳以上の女性 7.0g未満
に設定している。
(b)ところが、日本高血圧学会は、高血圧予防のために、血圧が正常な人でも1日当たり6g未満を推奨している。
(c)世界保健機関(WHO)は、1日5g未満を推奨している。
(d)(b)も(c)も、子どもはもっと少ない量にすべきだという見解だ。
(4)日本人の現在の摂取量は、一番甘い厚労省の目標量を男女とも2g以上オーバーしている。高血圧学会やWHOの目標量と比べると、2倍近く摂取している。
(5)日本より摂取量のが少ない米国でも、外食の1食分に含まれる塩分が非常に多いので、メニューに塩分量を表示するだけでなく、多いものには警告マークも表示させることにしたのだ。
(6)日本の外食産業の料理にも、非常に多くの塩分が含まれている。義務表示ではないが、大手のファミリーレストランなどでは、カロリーと塩分量をメニューやホームページで公開している。
それによれば、1食の塩分量が3gを切るものは非常に少ない。米国流の警告マークを表示することになると、表示対象商品は米国以上に多くなるはずだ。
実態を分かっていながら、日本では「外食産業に対する表示規制」がいっこうに進まない。食品表示法を制定する際やメニュー表示偽造事件が多発した時も、「外食産業にも表示義務を」という意見があったが、事業者の不利益を考慮して見送られている。
(7)米国では、トランス脂肪酸やカロリーなどが飲食店のメニューなどに表示されるようになったので、健康を意識する消費者が増えた、といわれている。
日本も、外食や中食を利用する消費者が増えている。軽減税率には外食産業も含めたのに、規制となると蚊帳の外にする。業界の利益ばかり優先する政治はいつまで続くのか。
□垣屋達哉(食品問題評論家/消費者問題研究所代表)「米ニューヨークで進む塩分過多の警告表示。日本の外食産業にも必要なのでは?」(「週刊金曜日」2016年3月11日号)
↓クリック、プリーズ。↓
塩分が2,300mgという報道もあるが、1日当たりの推奨摂取量が2,300mg(2.3g)というのは低すぎる。ナトリウムで2,300mg、塩分換算で約5.8gが正しい(推定)。
(2)米国、特にニューヨーク市は食品表示を重視している。トランス脂肪酸の規制、メニューへのカロリー表示などを積極的に進めている。
一方、日本では外食産業に対する規制が非常に甘い。昨年施行された食品表示法で、加工食品は熱量(カロリー)と4種の栄養成分(蛋白質・脂質・炭水化物・食塩相当量)を表示することが義務づけられたが、消費者から要望が強かった外食産業は対象から外されている。
(3)日本人は、米国人よりも塩分を過剰摂取している。
1日当たりの塩分摂取量は、
成人男性 11.1g
成人女性 9.4g
だ【厚生労働省「国民健康・栄養調査」、2013年】。1日当たり約8g摂取しているといわれる米国人より、日本人男性は3gも多い。
(a)厚労省は、2015年版食事摂取基準で、1日当たり塩分摂取目標量を
12歳以上の男性 8.0g未満
10歳以上の女性 7.0g未満
に設定している。
(b)ところが、日本高血圧学会は、高血圧予防のために、血圧が正常な人でも1日当たり6g未満を推奨している。
(c)世界保健機関(WHO)は、1日5g未満を推奨している。
(d)(b)も(c)も、子どもはもっと少ない量にすべきだという見解だ。
(4)日本人の現在の摂取量は、一番甘い厚労省の目標量を男女とも2g以上オーバーしている。高血圧学会やWHOの目標量と比べると、2倍近く摂取している。
(5)日本より摂取量のが少ない米国でも、外食の1食分に含まれる塩分が非常に多いので、メニューに塩分量を表示するだけでなく、多いものには警告マークも表示させることにしたのだ。
(6)日本の外食産業の料理にも、非常に多くの塩分が含まれている。義務表示ではないが、大手のファミリーレストランなどでは、カロリーと塩分量をメニューやホームページで公開している。
それによれば、1食の塩分量が3gを切るものは非常に少ない。米国流の警告マークを表示することになると、表示対象商品は米国以上に多くなるはずだ。
実態を分かっていながら、日本では「外食産業に対する表示規制」がいっこうに進まない。食品表示法を制定する際やメニュー表示偽造事件が多発した時も、「外食産業にも表示義務を」という意見があったが、事業者の不利益を考慮して見送られている。
(7)米国では、トランス脂肪酸やカロリーなどが飲食店のメニューなどに表示されるようになったので、健康を意識する消費者が増えた、といわれている。
日本も、外食や中食を利用する消費者が増えている。軽減税率には外食産業も含めたのに、規制となると蚊帳の外にする。業界の利益ばかり優先する政治はいつまで続くのか。
□垣屋達哉(食品問題評論家/消費者問題研究所代表)「米ニューヨークで進む塩分過多の警告表示。日本の外食産業にも必要なのでは?」(「週刊金曜日」2016年3月11日号)
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