語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【経済】アベノミクスこそ我々の危機 ~災害リスクのレジリエンス~

2014年12月23日 | 社会
 アベノミクスは、異常気象災害に対するレジリエンス(柔軟な回復力)を問わない。
 金融と財政のエンジンをフルパワーに設定して、実体経済に刺激を与えようとするアベノミクス(今までにない経済実験)は、年金積立金さえもリスクにさらす賭けに出ている。

 12月3日付け「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」の創刊5周年記念特別企画の1本に、記事「アベノミクスのジレンマ -破壊的再生か安楽な衰退か」【ジェイコブ・スレンシンジャー・アジア経済主席特派員・中央銀行担当エディター】があった。ストレンジャーはピュリツァー受賞歴のある論客。彼は年金積立金運用の改革について、こう書いている。
 <日本のリスク回避からリスク負担への急転換は、130兆円の資金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GRIF)にも拡大した。あまり慎重でない国でさえ、保守的に扱う傾向がある老後の支えだが、GRIFは今や安全だが低利回りの国債の比率を減らし、より利益性は高いが値動きの激しい株式の比率を増やしている。>

 上記の高リスク・高リターンのアイデアと関連して、イギリス王立協会(現存する最古の科学学会、1660年創立)が、11月27日、レポート「異常気象に対するレジリエンス」を発表した。いわく、1980~2004年までの異常気象のコストは1.4兆米ドルに達した。この被害の4分の3には保険が掛けられていなかった・・・・。
 コストは年々加速して拡大している。今世紀半ばには海岸の大都市だけでも年間1兆ドルほどの被害を受けるかもしれない。今「利益性は高い」と評価された投資先は、こうした異常気象にレジリエンスがなければブラックホールのような損失を被る危険性が高いのだ。
 レポートが指摘するように、金融システムと会計基準は今も異常気象のコストを無視し続けている。

 投資のリスクを計算して判断するアナリストや組織はGRIFのような資本の配分決定に対してかなりの影響を及ぼすはずだが、すでに世界中でますます悪化しているリスクについて彼らはあまりに無知だ。
 信じがたいのは、王立協会の警告について和文記事が1本もないことだ。
 対照的に、王立協会のレポートは国連国際防災戦略事務局(中国の北京にある)等の組織が合同で設置したプログラム「災害リスク統合研究」で12月3日に発表された。

 中国に遅れをとるものの、同レポートの内容については日本でも発表される(来年1月14~16日、東京大学本郷キャンパス、イベント「防災・減災に関する国際研究のための東京会議 -災害リスクの軽減と持続可能な開発を統合した新たな科学技術の構築へ向けて」)。
 この国際会議が、危ない矢を次から次に放つアベノミクスこそ我々の危機であることを理解し、真の危機に取り組む好機となるか?

□アンドリュー・デウィット「アベノミクスこそ我々の危機 災害リスクのレジリエンスを問え」(「週刊金曜日」2014年12月12日号)
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 【参考】
【政治】「第三の矢」の実態 ~アベノミクスの末路~
【官僚】年金で利権を拡大 ~年金積立金管理運用独立法人(GPIF)~


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