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語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】西脇順三郎「菫」

2016年01月30日 | 詩歌
 コク・テール作りはみずぼらしい銅銭振り
 であるがギリシャの調合は黄金の音がする
 「灰色の菫」というバーへ行ってみたまえ
 バコスの血とニムフの新しい涙が混合されて
 暗黒の不滅の生命が泡をふき
 車輪のように大きなヒラメと共に薫る

□西脇順三郎「菫」(『Ambarvalia』、東京出版、1947)
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 【参考】
【詩歌】西脇順三郎「皿」
太陽
【詩歌】西脇順三郎「雨」
【詩歌】西脇順三郎「天気」
【詩歌】西脇順三郎「カプリの牧人」 ~シシリアの伝説~
書評:『後方見聞録』
【T・S・エリオット】荒地 ~5 雷神の言葉~
【T・S・エリオット】荒地 ~4 水死~
【T・S・エリオット】荒地 ~3 火の説教~
【T・S・エリオット】荒地 ~2 将棋~
【T・S・エリオット】「荒地」 ~1 埋葬~

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【本】水木しげるが選ぶゲーテの賢言 ~『ゲゲゲのゲーテ』~

2016年01月30日 | 批評・思想
 (1)戦前、戦中、のん気な少年時代を過ごした水木しげるは、徴兵年齢が近づくにつれ、死の恐怖に耐えるべくニーチェやショーペンハウエルなどを読んだ。一番しっくりきたのがゲーテで、岩波文庫版全3巻の『ゲーテとの対話』は、暗記するほど読み込み、応召してからも雑嚢の底にしのばせ、ラバウルまで持っていった。戦地で読む余裕はほとんどなかったが、いわばお守りであった。復員後、結婚してからも売れない漫画家時代、折々にゲーテの格言を壁に貼っていた。心の支えとなっていたのだ。
 今や、水木サンの80%はゲーテだと水木しげるはおっしゃる。「水木サン」とは水木しげる自身による自称である。「私は・・・・」と言わずに、「水木サンは・・・・」と言うのだ。

 (2)本書は、水木しげる蔵書の傍線だらけの『ゲーテとの対話』の中から、93の「賢言」を水木しげるが選び、「賢言」のいくつかには水木しげるの短いエッセイを付す。93という数字は、2015年現在の水木しげるの満年齢にちなむ。「賢言」とは、格言・箴言・警句の総称と理解してよいだろう。
 ただし、読みやすさを考えて、水木しげるが愛読した亀尾英四郎・訳ではなく、現在も購入できる山下肇・訳の岩波文庫全3巻から引用されている。
 「賢言」は、4つに分類される。
   ①ものを創り出すこと
   ②働くこと・学ぶこと
   ③生きることはたいへんです
   ④死の先にあるもの
 これら「賢言」集の前に水木しげるへのインタビュー、後に水木夫妻へのインタビューが置かれる。「賢言」に付されたエッセイとあいまって、水木しげるの中でゲーテがどう消化されてきたかがよく分かる。そして、水木漫画の世界を支える生命観(死後の世界を含めて)や人生観の骨格も窺える。

 (3)選ばれた「賢言」は、例えば次のようなものだ。
 <例1>「①の22 天才とはなにか」
   ほかの人びとには青春は一回しかないが、
   この人びとには、反復する思春期がある。

 (水木しげるのエッセイ)
 <ゲーテのような天才的人間というのはいつまでも若く、精気がみなぎっているんです。私はベビィの頃から胃がいいものだから、なんでも美味しく食べられるんです。軍隊で野戦へ行っても、なんでも食べられました。だから、90歳を超えても健康でいられるわけです。
 ゲーテも徹頭徹尾、健全でたくましい人物でした。高齢で、重職にもついていたというのに、70歳を過ぎてから16、7歳の娘に結婚を申し込むんです。すごいですよ>

 (所見)
 「ベビィの頃」とは少年時代の水木しげる的言いまわしだ。
 また、「賢言」において、「反復する思春期」に傍点がふってある。
 ゲーテが天才だったことは疑いを入れないし、「反復する思春期」があったことも歴史的事実だ。
 しかし、凡人には「反復する思春期」がゼロというわけではない。
 プチ天才が、世の中にいくらかはいると思う。

 <例2> 「②の26 仕事について」
   一事を明確に処理できる人は、
   他の多くのことでも役に立つ

 <例3> 「②の31 最高のものから学ぶ」
   趣味というものは、中級品ではなく、
   最も優秀なものに接することによってのみつくられる

 <例4> 「②の45 質問の善し悪し」
   目的を尋ねる質問、つまり、
   なぜという質問はまったく学問的でない。
   だが、どのようにしてという質問ならば、
   一歩先に進めることができる。
    【注】「なぜ」と「どのようにして」には傍点。

□水木しげる『ゲゲゲのゲーテ 水木しげるが選んだ93の「賢者の言葉」』(双葉新書、2015)
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