事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

追悼森田芳光。

2011-12-23 | 芸能ネタ

Moritaimg01 「森田は天才だ」

松田優作は、いま思えばアクション俳優から脱皮しようと画策した「家族ゲーム」撮影中から、メディア向けにこう連発していた。

「ライブイン・茅ヶ崎」がPFFで入選し(だから1978年頃のぴあにはこの作品の告知が毎号のように載っていた)、「の・ようなもの」で注目されていただけのど新人を、リップサービスもあるとはいえ、そこまで断言して大丈夫かと思ったら、映画の出来は想像を超えていた。確かに、天才だった。

ただ、シャイな性格の裏返しのためだろう、年賀状で「流行監督宣言」なんかやっちゃったものだから業界でバッシングを受けたこともあってか、彼は映画界において決してメインストリームにいようとはしなかった。

だからいつまでも巨匠ではなく鬼才あつかいだったのは本人も納得ずくだろうか。享年61。60歳の誕生日に死んだ小津安二郎よりも年長だったとは意外だ。新鋭のイメージがなにしろ強烈だったから。

作風は、良くも悪しくも『頭で考えた』感じ。広告代理店が使いすぎて手垢がついたフレーズ“コンセプト”がはっきりしているというか。名場面だった「の・ようなもの」の道中づけ、「家族ゲーム」の静謐なラスト、「それから」の赤い影などは、そのコンセプトが奏効した部分だと思う。

個人的には「ときめきに死す」において「涼しいですね」とテロリスト沢田研二、杉浦直樹がやりとりするシーン、「悲しい色やねん」の森尾由美のかけ声、そしてなんといっても「の・ようなもの」のラストが大好き。脚本を担当した(監督は根岸吉太郎)「ウホッホ探検隊」の静けさもよかったなあ。

製作者としても有能で、業界で干されていた爆笑問題を「おいしい結婚」でコメディリリーフに使い、のちに太田光を監督に起用したりもしている。だから彼の森田哀悼のコメントは重みがあるはずだ。

頭のいい人だったから、こんな映画も撮れるんだぞ、と主張したような「武士の家計簿」的方向に行く選択肢もあっただろう。ストレートな直球が余技にみえる才能。まことに、惜しい人を……。

Noyounamonoimg

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14 コメント

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「悲しい色やねん」までの映像派だった頃の作品が印... (雨止み)
2012-08-14 02:16:28
「悲しい色やねん」までの映像派だった頃の作品が印象的でした。以降は知識人向けの映画になった様な…。森田さんの浅野ゆう子物とか観たかったです。安らかにお休み下さい[E:#xE408]。
俳優に機械のような台詞回しを要求するのって、 (hori109)
2012-08-14 21:46:33
俳優に機械のような台詞回しを要求するのって、
きっと照れ屋だったからだと思うんです。小津にしても、
思い入れたっぷりの演技は拒否していたでしょう?
あれに近いものがあったんじゃないかなあ。
カメラマンの仙元誠三さんが森田さんを「器用な人だ... (雨止み)
2012-10-22 18:28:47
カメラマンの仙元誠三さんが森田さんを「器用な人だ、米さん(前田米造)とは違った空気を出せたら…。」て何かの映画の時に話してましたね。芳光さん物は時々幾何学的な構図が現れるのがそう思わしたのかも。「家族ゲーム」て名古屋の劇場で観た時(同時上映は「台風クラブ」でした)いい意味での大ショックを受けました。「○本噂のストリッパー」もビデオで観たのですがラストの人ごみの何処からケンちゃんが出てくるのかが何回観ても分からなかったです。シュールなのか、ミステリーなのか…。
森田作品とくれば前田米造、ってのがお決まりでし... (hori109)
2012-10-22 22:23:24
森田作品とくれば前田米造、ってのがお決まりでしたもんね。
「噂のストリッパー」は見てないんで、ぜひともディスカスしたいと
思いますっ。
「それから」が公開された時「極上の出来栄えである。... (雨止み)
2012-10-23 18:00:53
「それから」が公開された時「極上の出来栄えである。森田の代表作の一つになるだろう。」て映画評論を読んだ事あります。私はこの作品をビデオで観たのですがよく分からなかったです。でも最期の作品の「僕達急行A列車で行こう」は森田版寅さんの様で楽しかったです。幾つかのので組んだ伊藤克信さんや前田米造さん今どんな気持ちなのだろう…。
「赤い影」が賞揚されすぎたかもしれませんね。 (hori109)
2012-10-25 20:13:22
「赤い影」が賞揚されすぎたかもしれませんね。
でも森田芳光が評価され始めたころは、
まだ技術に走る作家は貶められていたかも。
テーマ第一主義は生きていましたから。
森田監督作品ではありませんが、「ウホッホ探検隊」
は一度観てほしいと思います。
あれは、どう考えても小津を意識してたと思うんです。
もしかしたら森田さんて映画監督版尾崎豊みたく人... (雨止み)
2012-10-27 18:10:18
もしかしたら森田さんて映画監督版尾崎豊みたく人だったのかな。名曲=名作、ふとこの前思いました。深作さんとは違った意味での直球活動屋だったのかも。「ウホッホ探険隊」(観た事ないです)の根岸さんみたく組んだスタッフで作風を変化させれる人しか生き残れるのかも知れないですね。
あ、それはきっと違うと思うな。 (hori109)
2012-10-27 22:11:09
あ、それはきっと違うと思うな。
森田芳光の栄光と不幸は
“いかようにも撮れてしまう”
あたりだったと思います。もちろん不自然な
セリフまわしとかも含めて。
おそらく、“業”とか“必然”とかとは無縁だったのでは
ないかと。ファンに怒られそうだけど。
少なくともそう考えて嫌っている人はけっこういますよね。

尾崎豊の破綻は、幻冬舎の見城社長の本でそれこそ必然
だと思いました。ありゃー長生きできないわ。
おじゃまします。 (キムチ)
2012-12-28 15:29:33
おじゃまします。
お!名古屋のATG二本立て、シルバー(ゴールド?)劇場
家族ゲーム、ドッカンドッカン受けてました。
映画の、ストーリー以外の楽しみをたっぷりこってりと
教えてもらった監督さんでした。
ああ、今が「家族ゲーム」がどっかんどっかんな時... (hori109)
2012-12-28 21:20:11
ああ、今が「家族ゲーム」がどっかんどっかんな時代なんだなあ。
画面の温度が低い感じ、いいですよね。
「の・ようなもの」の道中づけは、しかしめずらしく
激しいので、その破綻もうれしいです。

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