東野圭吾著「赤い指」2006年7月、講談社発行を読んだ。
2006年に直木賞受賞した後の第一作目で、1999年に小説現代に掲載された短編をもとに書下ろした長編。
刑事加賀恭一郎のシリーズの一つ。彼とその父との関係が最後にはじめて明かされ、加賀ファンはグッーと来るだろう。
家庭から逃げていた前原昭男、姑に辛く当り子供を偏愛する妻、昭男のボケた老母、不登校でわがままな息子。始めの方はどこにでもありそうな家庭のいやな面ばかりが続き、少々うんざりだ。
中程にかかると、殺人事件の犯人が読者に明かされ、いかに隠し通すかが語られる。少々強引な筋道だが、隠蔽作業を進めるときの恐怖、あせりと混乱する様子には真実味がある。
中盤以降は、本来なら指導的立場にある本庁の捜査一課の刑事松宮と、その指揮に従う立場の所轄刑事加賀のコンビでの捜査活動が中心になる。しかし、松宮は新米で、加賀はやり手で、しかもこの二人はいとこ同士なのだ。
最後には、凄腕刑事の加賀が真相を見抜き、少しでも良い解決に至るよう仕掛をする。
おおよその展開は予想でき、老母について多少の無理が感じられたにしても、いくつかの驚きがあり、心に迫る終章は見事だ。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)
読みやすく一気に読み切った。最終章へ一気に畳み込んでいき、驚きと感動の最後を迎える。東野圭吾の作品の中でとくに素晴らしいとは言えないが、楽しめる作品になっている。前原家のあまりにもいじましい夫、妻、息子にいやになるが、刑事加賀と父との係わり合いの秘密を知ると、嬉しくなり、加賀ファンになる。
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