中山祐次郎著『外科医、島へ 泣くな研修医6』(幻冬舎文庫な46-6、2024年1月15日幻冬舎発行)を読んだ
裏表紙にはこうある。
半年の任期で離島の診療所に派遣された、三一歳の外科医・雨野隆治。島ではあらゆる病気を診なければならず、自分の未熟さを思い知る。束の間の息抜きを楽しんだ夏祭りの夜に、駐在所の警官から電話が。それは竹藪で見つかった身元不明の死体を検死してほしいという依頼だった――。現役外科医が生と死の現場をリアルに描く、シリーズ第六弾。
難度の高い腹腔鏡での手術を終えて、雨野隆治が助手を務めた西桜寺凛子と控室で寛いでいると外科部長の岩井がやって来た。岩井は「お前、島に行かないか?」「4月から半年。外科だけでなくなんでもやる。どうだ」と言う。凛子が「えぇ、島ってなんですかぁ先生」と茶々を入れようとする。一瞬の逡巡ののち、隆治は「行きます」と言ってしまった。
伊豆七島・三宅島の傍の小さな神仙島の診療所には、医師は所長の瀬戸山と隆治だけで、他は優秀な看護師・半田志真と繁田秀子だけだった。
ようやく一人前の外科医になりかけていた隆治は、精神科などほとんど知識のない病状に苦労し、後輩の凛子の外科技量に抜かれる心配もしだす。
島では医療に意義を見つけ、志真とも心を通じ合った隆治は……。
この作品は書下ろし
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)
本シリーズを読んだことのある人は、まったく新たな環境での馴染みの医師・隆治のチャレンジを楽しく読めるだろう。「泣くな研修医シリーズ」を1~3まで読んだ私自身は、四つ星を付けたい。
しかし、大病院での高度な技術習得に挑むシリーズの面白さと全く異なる島での医療行為、島民とのコミュニケーションが主体の本書は、全体にのんびりムードで、気楽だが刺激がない。
死体が発見される話も、どろどろした所がなく、なんだか迫力がない。