hiyamizu's blog

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柚月裕子『教誨』を読む

2023年04月19日 | 読書2

 

柚月裕子著『教誨(きょうかい)』(2022年11月30日小学館発行)を読んだ。

 

小学館の内容紹介

女性死刑囚の心に迫る本格的長編犯罪小説!
幼女二人を殺害した女性死刑囚が最期に遺した言葉――
「約束は守ったよ、褒めて」

 吉沢香純と母の静江は、遠縁の死刑囚三原響子から身柄引受人に指名され、刑の執行後に東京拘置所で遺骨と遺品を受け取った。響子は十年前、我が子も含む女児二人を殺めたとされた。香純は、響子の遺骨を三原家の墓におさめてもらうため、菩提寺がある青森県相野町を単身訪れる。香純は、響子が最期に遺した言葉の真意を探るため、事件を知る関係者と面会を重ねてゆく。

 

「秋田児童連続殺人事件」をモデルとしている。2006年4月に小学校4年生の女子児童が中州での水死体で発見されたが、警察は事故として早々に捜査を打ち切った。しかし、翌月近所に住む男子児童の死体が川岸で発見され、再捜査し、6月に女子児童の母親を被疑者として逮捕した。母親は高校時代に激しいいじめにあっていたという(ウィキペディア)。当時メディアも過熱していて、私も「畠山彩香」という名に覚えがある。

教誨(きょうかい)は、教えさとすこと。 受刑者に対して教誨を行うのが教誨師。

 

吉沢香純33歳は遠縁の処刑された三原響子の遺骨と日記などの遺品を受け取りに東京拘置所を訪れた。三原の本家は青森県相野町の名家で、響子のセンセーショナルな事件に傷つき、今後一切響子とは係わらないとし、遺骨の三原家の墓への埋葬も許さないと、香純に伝えた。香純は幼い時に響子と一度だけ会っただけなのだが、なぜ響子が自分の8歳の娘・愛理を殺し、近所の5歳の栞ちゃんまで殺したのか、信じられない思いだった。

 

遺骨の処置に困った香純は、響子の拘置所での教誨師・曹洞宗光圓寺の住職・下間将人を訪ね、響子の最後の言葉「約束は守ったよ、褒めて」は、誰に、何の約束だったのか聞いてみるが、答えはなかった。

 

響子は本当に殺人犯なのか? なぜ事件を起こしたのか? 最後の言葉の意味はなにか? 納得できない香純は、転職先に就職までの一か月をかけて調べてみようと、相野町へ向かう。

 

 

吉沢香純:32歳。経理の仕事。小3のとき、母・静江の実家に泊り、本家へ行ったときに当時中学生の響子と会い、短い言葉を交わした。それが唯一の出会い。

三原響子:28歳で事件を起こし、38歳で処刑。子供の頃からがんばっても運動も勉強もできなかった。

三原千枝子:響子の母。三原家の小作人の家出身で、何事も我慢の人生。父親・健一は出来が悪く、暴力的。

樋口純也:津軽日報社の記者。事件について香純とともに調べる。

 

 

私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの?  最大は五つ星)

 

二つ星なのは、話が暗く、楽しいところがないから。

ミステリーとしても、犯人探求の面白さはない。響子か、無理しても千枝子としか考えられない。

響子が誰と何を約束して、守りぬいたのかは……、結局、すっきりしない。

 

本家の分家への圧力、元小作人や元下請けから本家に入った嫁へのマウンティング、誰もが知り合いという村人からの圧迫など田舎の風習になじめないというより馬鹿にする想いしかないCity Boyの私には響いてこない話だった。

 

香純がこれほど「響子の何故」にこだわり、前のめりになるのかが納得できない。香純は「私、響ちゃんの人生が淋しいだけだったなんて思いたくないの。必死に守った約束のなかに、響ちゃんが求めたなにかがある。それはきっと、響ちゃんの唯一の救いだった。それを見つけたいの」(p244)と語っているのだが、……。

 

 

柚月裕子 経歴&既読本リスト

 

 

犯罪白書によると、殺人事件の被害者と加害者の関係は、8割以上が顔見知りで、半分が親族、見ず知らずの関係は2割以下。動機は、恨みや怨恨といった感情によるものが半分。次に、暴力団の勢力争い。そのあと介護や育児疲れによる精神や肉体の限界を感じての犯行と続く。強盗や金銭目的の犯行はとても少ない。(p123)

 

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