hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

碓井広義『少しぐらいの嘘は大目に 向田邦子の言葉』を読む

2021年08月23日 | 読書2

 

碓井広義編『少しぐらいの嘘は大目に 向田邦子の言葉』(新潮文庫 む-3-21、2021年4月1日新潮社発行)を読んだ。

 

新潮社の宣伝文句

今なお愛される著者の全ドラマ・エッセイ・小説作品から名言をセレクト。没後40年記念。

『阿修羅のごとく』『あ・うん』『寺内貫太郎一家』……傑作ドラマの脚本家として知られ、名エッセイスト、直木賞受賞作家でもあった向田邦子。突然の飛行機事故から40年が経つにもかかわらず、今なお読み継がれ、愛されるのはなぜなのか。日本のテレビドラマ史を語らせれば右に出る者のない編者が彼女の全作品から名言・名セリフをセレクト。いつでも向田作品の世界に没入できる座右の一冊。

 

以下、たまたま私の目に留まった部分のうちいくつかを挙げる。全体がわかる目次を最後に示す。

 

パックをしている時だけは、女は鏡を見ない。その代わりに、心の目を開き、わが心の中のうぬぼれ鏡を見ているのである。 「パックの心理学」『眠る盃』

 

貫太郎「まわりもまわりだけどな、本人も本人だ! そんなに行きたかったら、親だろうが何だろうが押しのけて行ったらいいだろう! それくらいの度胸がなくて」

静江「(静かに)お父さん」

貫太郎「………」

静江「本当に好きなら……行かなくたって……こうしてたって、しあわせなのよ」  『寺内貫太郎一家』

 

久米「そこいくと、昔の人間は教養があったねえ。『忘れねばこそ思い出さず候』なんて、すばらしいじゃないの」  ……

久米「紺屋高尾という、遊女の書いたラブレターですよ」

土岡「遊女、ですか」

久米「…仙台の伊達の殿様の恋人だったんだけどね、『忘れねばこそ思い出さず候』わたしはあなた様を思い出すなんて、そんなことはございません。なぜなら、片時もあなた様を忘れたことがないからでございます」

 

謙造「うちってのは、出た方が負けなんだよ。角力(すもう)と同じだ」 『家族熱』

 

兄弟げんかも、夫婦げんかも、母と祖母のちょっとした気まずさも、台風の夜だけは、休戦になった。一家をあげて固まっていた。そこが、なんだかひどく嬉しかった。父も母も、みな生き生きしていた。 「傷だらけの茄子」『霊長類ヒト科動物図鑑』

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

向田さんのすべての小説、エッセイ、脚本から選んだ名言、名セリフを並べてあるのだが、一つ一つをじっくり味わって読みたいが、全部で370以上となると、さすがに根気が続かない。気が向いた時にパラっと開いて読んで、フムフムと味わって、閉じるという読み方が良いかもしれない。

 

男と女の駆け引きや、本音に関する記述も多いが、私にはなんだかわざとらしく思えて、どうも。歳のせいだと思いますが。

 

こんなのもあった。
離婚した友人(女性)が言っていた。主人のサンダルの汚れを見てたら「吐き気がしてきたって――、そうなったら、もう、ダメね」 『家族熱』

女性ってのは、一度生理的に受け付けなくなったら、もうダメ。絶対にダメで、ひっくりかえることはない。怖いですね!!

 

 

向田邦子の略歴と既読本リスト

 

碓井広義

1955(昭和30)年、長野県生まれ。メディア文化評論家。2020(令和2)年3月まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。慶應義塾大学法学部政治学科卒。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。

1981年、テレビマンユニオンに参加、以後20年間ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。

代表作に『人間ドキュメント 夏目雅子物語』など。

著書に『テレビの教科書』、『ドラマへの遺言』(倉本聰との共著)など、編著に『倉本聰の言葉――ドラマの中の名言』がある。

 

目次

はじめに

第一章 男と女の風景――見栄はらないような女は、女じゃないよ

1 女のはなしには省略がない――女というもの
2 男は、どんなしぐさをしても、男なのだ――男というもの
3 それじゃ、しあわせ、掴めないよ――男と女
4 恋をすると、人は正気でなくなります――恋愛とは
5 あんな声で呼ばれたこと、一度もなかった――道ならぬ恋

第二章 家族の風景――どこのうちだって、ヤブ突きゃヘビの一匹や二匹

1 結婚てのは七年じゃ駄目なのね――結婚
2 世の中、そんな綺麗ごとじゃないんだよ――夫婦
3 お父さん、謝ってるつもりなのよ――親と子
4 ヨメにゆくと姉妹は他人のはじまりか――姉と妹(弟)
5 完全な家庭というものもあるはずない――家族

第三章 生きるということ――七転八倒して迷いなさい

1 判らないところがいいんじゃないの――人間と人生と
2 物がおいしい間は、死んじゃつまりませんよ――老いと死と
3 昔の女は、忙しかったものねえ――むかしの人と暮し
4 事件の方が、人間を選ぶのである――日常という冒険

第四章 自身を語る――私を極めて現実的な欲望の強い人間です

1 それが父の詫び状であった――父と母のこと
2 昔のセーラー服は、いつも衿が光っていた――少女時代のこと
3 私は「清貧」ということばが嫌いです――「わたし」のこと
4 私の勝負服は地味である――わたしの暮し

第五章 向田邦子の「仕事」――嘘をお楽しみになりませんか?

1 楽しんでいないと、顔つきがけわしくなる――仕事とわたし
2 どれだけその人間になりきることができるか――ドラマを書く

第六章 食と猫と旅と――好きなものは好きなのだから仕方がない

1 「う」は、うまいものの略である――食
2 甘えあって暮しながら、油断は出来ない――猫
3 帰り道は旅のお釣りである――旅

おわりに
主要ドラマ一覧
資料書籍一覧



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする