hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

今村夏子『木になった亜紗』を読む

2021年08月17日 | 読書2

 

今村夏子著『木になった亜紗』(2020年4月5日文藝春秋発行)を読んだ。

 

文藝春秋の内容紹介は以下。

誰かに食べさせたい。願いがかなって杉の木に転生した亜沙は、わりばしになって若者と出会う(「木になった亜沙」)。どんぐりも、ドッジボールも、なぜだか七未には当たらない。「ナナちゃんがんばれ、あたればおわる」と、みなは応援してくれるのだが(「的になった七未」)。夜の商店街で出会った男が連れていってくれたのは、お母さんの家だった。でも、どうやら「本当のお母さん」ではないようで…(「ある夜の思い出」)。『むらさきのスカートの女』で芥川賞を受賞した気鋭の作家による、奇妙で不穏で純粋な三つの愛の物語。

 

芥川賞作家・今村夏子さんの6冊目の本書は、3編の短篇集。いずれも「特殊な能力」を持つ女の子の話。

 

「木になった亜紗」

自分の手からの食べ物は何ひとつ食べてもらえない亜紗。保育園で仲良しのるいちゃんに「いらん!」といってヒマワリの種をどうしても食べてもらえなかった。作ったクッキーも山崎シュンくんに突き返された。金魚にも、盛り付けた給食も食べてもらえなかった。中学で不良になり、入った厚生施設でも亜紗は食べてもらえなかった。やがて亜紗は割りばしへと転生し、‥‥。

通常の日常の中でスタートした話は、徐々に曲がって極端な方向へ進み、やがて現実の世界を外して奇想の世界になってしまったことに気づく。しかしそれでも日常の中で暮らしている感じは失われておらず、奇妙な感覚になってしまう。

 

「的になった七未」

通っていた保育園の園長先生は、飼っていたやぎにどんぐりをぶつけた男の木に怒って「わかったか!」といってどんぐりを投げつけた。次々と子供たちに投げつけたが、七未(なみ)にはどうしても当たらなかった(どんぐり事件)。

小学校で六年生が周りの子に水風船を投げつけたが、七未にはどうしても当たらなかった(水風船事件)。ドッジボール事件、空き缶事件でも七未には当たらなかった。心を入れ替えた七未は自ら当たろうとするようになったが、‥‥。だんだん話はハチャメチャになっていって、‥‥。

 

「ある夜の思い出」

学校を卒業してから15年間、無職だった。なるべい立ち上がらずに、いつも腹這いで過ごすことを心掛けていた。(ここのところ、私もほぼ同じ。トホホ!)

父親に追い出されて、男の家に上がり込む。ジャックという男、お母さん、小学生ののぼる君、3人の関係も不明。私はジャックから‥‥されて……。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

3冊続けて今村本を読んでしまったので、さすがにちょっと辛めの三つ星。
私の好きな今村ワールドだが、続けて読むと、体内に抗体ができて、それはないんじゃないかとか思ってしまう抵抗感が頭をもたげてくる。

 

登場する負け組の、ダメ人間がだんだん自分じゃないかと思えて憂鬱になり、そして少しだけ、俺はこれほどひどくないと安心する気持ちも芽生える。このところ、友達や知人に逢えていないのもいけないのだろう。

 

ここ3冊ほど続けて今村夏子さんの本を読んでいると、だんだん精神に変調をきたしそうな気がしてくる。最初から奇想天外な話ならその気で読むので良いのだが、最初は普通の日常の話で、入れ込んで読み進めると徐々におかしな世界に引き込まれて行くのだ。1冊、2冊なら良いが、3冊目となり、今村ワールドにハマると、危険だ。

 

今村夏子の略歴と既読本リスト

 

コメント
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