hiyamizu's blog

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宮部みゆき『理由』を読む

2020年08月19日 | 読書2

 

宮部みゆき著『理由(りゆう)』(新潮文庫み22-13、2004年7月1日新潮社発行)を読んだ。

裏表紙にはこうある。

事件はなぜ起こったか。殺されたのは「誰」で、いったい「誰」が殺人者であったのか――。東京荒川区の超高層マンションで凄惨な殺人事件が起きた。室内には中年男女と老女の惨殺体。そして、ベランダから転落した若い男。ところが、四人の死者は、そこに住んでいるはずの家族ではなかった……。ドキュメンタリー的手法で現代社会ならではの悲劇を浮き彫りにする、直木賞受賞作。

 

本作品は1996年9月2日から1997年9月20日まで「朝日新聞」夕刊に連載。1998年朝日新聞社より単行本、2002年朝日文庫として刊行された。

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき)(最大は五つ星)

 

777ページと大部だが、飽きることなく、読み進められる。最初から最後まで貫く筋に導かれながら、3,4冊の家族小説を読んでしまった気がした。

犯人はもちろん被害者たちの身元もわからないまま最後の方まで引っ張っていく、珍しい展開だ。しかし、飽きることはない。借金漬けの家族、凄まじい嫁舅争いの家族、18歳の未婚の母を抱える家族など様々な形の家族の話をしっかり重厚に描きながら話を進めていくからだ。

 

著者は、TVのクルーが解決済み事件を検証し、アナウンサーのナレーションや、記者が語るという「NHK特集」のつもりで書いたという(池上冬樹の解説より)。したがって、ドキュメンタリー風に話は進み、若干の解説もつくので、各段階での展開が徐々に積み重なっていくので分かりやすい。

 

 

宮部みゆき 概歴と既読本リスト

 

登場人物

ヴァンダール千住北ニューシティ:東西の地上25階の高層タワー2棟と、中央棟は15階。ウエストタワー20階の2025号室が事件現場。

佐野利明:ウエストタワーの管理人。妻・昌子は入院中。20歳の娘は雪美。

葛西美枝子:ウエストタワー2023号の住人。編集プロダクション勤務。夫はアパレルメーカー勤務の一之。

佐藤義男:ウエストタワー1225号の住人。妻は秋江、長男博史。長女彩美が落下した人を見る。

北畠敦子:ウエストタワー2024号に離婚して小4と小2の子と67歳の母・智恵子と住む。

島崎昭文:中央棟の管理人。妻は房枝。

佐々木茂:イーストタワーの管理人。32歳。

井出康文:パークハウジング・マンション管理部長

 

小糸信治:事件現場ウエストタワー2025号室の持主。41歳。機械メーカー勤務。

小糸静子:信治の妻。40歳。衣料品店勤務。派手で浪費家。長男は孝弘10歳で私立小学校在学。

小糸貴子:信治の姉。塾の教師。53歳。静子と仲が悪い。

 

片倉義文:簡易旅館「片倉ハウス」経営。42歳。妻は幸恵。中一の信子、小6の春樹と母68歳のたえ子。

 

宝井睦夫:「宝食堂」経営。妻は敏子。長女は綾子。長男は高1の康隆。

宝井綾子:18歳で、八代祐司との間に2か月の祐介がいる。

八代祐司:宝井家に来て綾子と結婚するつもりはないという。

 

木村惟之(これゆき):小糸静子の父。妻は逸子。資産家。

坂田尚子:小糸静子の子供の時の友人。木村家の近くに住む。

 

石田直澄:事件現場の部屋の買受人。一家4人殺しの重要参考人。物流会社運転手。46歳。妻はキヌ江、大2の直己、高2の由香里。

早川一起:一起揆不動産経営。競売物件の元持主を夜逃げさせてさかのぼって賃貸契約させた「占有屋」である砂川一家を住まわせ、競売妨害をする。

砂川一家:夫が砂川信夫、妻は里子、長男が毅、信夫の母がトメ86歳。

伊沢和宜:深谷市でサンドイッチスタンド「あしべ」経営。妻は総子(ふさこ)。従業員は砂川里子。

秋吉克之:草津町で「レストランさなえ」を経営。妻は早苗。末の妹は勝子。

皆川康子:浜松市郊外の老人ホーム「あすか園」に勤務。三田ハツエは入園者。

 

 

料理の味付けとか、掃除の仕方とか、収納のやり方など、生活のなかのきわめて実際的なところの主義が一致することが多かった。……女性の場合、こういう部分の好みさえ一致するならば、資本主義者と共産主義者だって一緒に暮らしていかえるものだ。(p522)

 

 

 

 

 

 

 

 

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