宮部みゆき著『心とろかすような マサの事件簿』(創元推理文庫2019年11月15日新装新版東京創元社発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
俺の名前はマサ。蓮見探偵事務所の用心犬だ。飼い主で所長の浩一郎氏、長女で調査員の加代ちゃん、末っ子で高校生の糸ちゃん、『パーフェクト・ブルー』事件で蓮見一家と親しくなった諸岡進也青年……俺の大好きな人々が遭遇する事件を通して、人生の素晴らしさ、ほろ苦さをお伝えできれば、これにすぐる喜びはない、いやほんと。元警察犬マサの目を通して描く連作短編集全五編。
『パーフェクト・ブルー』の続編で、5編の連作短編集。
登場人物
マサ:元警察犬のジャーマン・シェパード。老犬。警察で5年、蓮見事務所で4年。人間の言葉を理解できるが、もちろんしゃべれない。犬猫鳥とは会話できる。
蓮見浩一郎:蓮見探偵事務所所長。
蓮見加代子:浩一郎の長女。事務所調査員。7歳下の妹は高校生の糸子。
ミミ:事務所の古参のおっさん調査員。嘱託。盗聴エキスパート。
諸岡進也:問題児。
椎名:スナック「ラシーナ」のマスター
「心とろかすような」
植草:画廊など経営の金持ち。妻と二人暮らし。
白鳥みずえ:ハウスキーピング業の和男と律子の娘。小学6年生。
「てのひらの森の下で」
藤実咲子:加代のジョギング仲間。
井波洋:若手の暴力団員。弟は孝。
「白い騎士は歌う」
宇野友恵:指名手配されている弟・敏彦が何故金に困っていたかを調査依頼。
相沢一郎:「ハートフル・コーヒー」社長で社長室で殺害。若い営業マンは敏彦、宇田川達郎。
秋末次郎:相沢社長を20年越しのベテラン社員。息子は画家の雅史。
奥村孝:新聞社の社会部記者。
「マサ、留守番する」
早川純子:ジュンコ。30代後半の翻訳家。蓮見事務所の社員旅行中のマサの世話を引き受ける。
高野ゆかり:うさぎを小学校から連れ出した。高野ゲームセンタの子供。
藤堂孝夫:52歳。水上公園で殺害された。長男は優等生で、次男は反抗的。
ハラショウ:鉄工所に鎖でつながれたままの犬。アインシュタインはカラス。
「マサの弁明」
宮部みゆき:売れていない推理小説家。30歳。ある時突然、一夜のうちにガタンとおバアさんになるタイプの童顔。午前2時過ぎにつっかけの音をさせて歩いてくると調査依頼。
初出:『鮎川哲也と十三の謎‘90』1990年12月・1991年12月、<野性時代>1989年8月号・1990年5月号、「マサ、留守番する」は書き下ろし
なお、本版は2001年4月20日初版の新装新版
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
約30年前の作品で、自動車電話が登場するなどさすがに古い。しかし、犬が一人(匹)で犯人を探したり(「マサ、留守番する」)、謎解きできているのに喋れなくて、じれったがったりと面白い設定だ。話の内容もとくに古めかしいとは感じなかった。
驚くような展開、謎解きはないが、楽しく読める。
家族経営の探偵事務所で、隣り近所の事件だし、下町出身の宮部さんが描く話は、人同士の距離が近く、身近な物語に感じる。