hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

内田康夫『汚れちまった道』を読む

2019年05月03日 | 読書2

 

内田康夫著『汚れちまった道 上下』(文春文庫う14-22、-23、2018年11月10日文藝春秋発行)を読んだ。

 

山口毎朝新聞萩支局の記者・奥田伸二が萩で失踪した。妻の奥田こずえから浅見光彦は行方捜しを依頼される。フリーライターの浅見はちょうど、雑誌「旅と歴史」から山口出身の中原中也の記事の依頼を受け、二つの目的をもって山口を訪ねた。奥田は姿を消す直前に「ポロリ、ポロリと死んでゆく、か」と中也の詩の一節を漏らしたという。失踪の翌々日には、萩市の海岸で元美祢(みね)市議・生島一憲の遺体が発見された。

 

奥田は四年前に書いた記事が没になってもめて本社から萩支局へ飛ばされた。奥田の取材先と疑われた竹澤郁は不審のある飲酒運転で事故死し、恋人の市職員・子安一也が中也の詩の一節「愛するものが死んだ時には 自殺しなけあなりません」と書いて自殺した。

浅見の親友で出版社の文芸編集部に勤める松田将明は、八木康子と見合いで山口を訪れ、生島の刺殺事件に巻き込まれた。いくつか起こった事件は奥田失踪事件と絡まり合う。いくつもの謎に翻弄される浅見。奥田の身には何が起こったのか?

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

内田康夫の本は初めて読んだが(TVでも記憶がない)、たしかに気楽にスイスイ読める。

浅見光彦はそれほど魅力的な人物とは思えないし、少なくともこの本では驚くような推理を見せるわけでもない。殺人も、怨恨もそれほど生々しくなくさらっとしている。

山口県は50年以上前に行ったきりだが、萩、山口市、美弥、防府などそれほどわざとらしくなく、万遍なく紹介しているところはさすがだ。

 

 

生島一憲:美祢市の会社社長・元美祢市議。息子は武人。
岡山:山口毎朝新聞社主筆。

北林:山口毎朝新聞社防府支局長。部下は原麻野香(まやか)。

角田美樹:防府市役所記者クラブ管理役

成松利香:中原中也同好会幹事。車は赤いアルファロメオ。

山田啓蔵:福岡市の福王タクシーの運転手
西岡由姫:萩焼のジュエリー作家

遠藤:山口署の部長刑事
國田賢吉:「未来21」の元伝説的な編集長。

 

『汚れちまった道』『萩殺人事件』同時刊行によせて これはひょっとすると「世界初」で「世界唯一」のミステリーになるのかもしれない。 同時に発生した事件・物語が同時進行形で展開し、互いに干渉しあい、登場人物が錯綜しながら大団円に向かう。そしてそれぞれの事件それぞれの物語が独自に収斂する。僕自身、そんなことが可能なのかと疑いながら創作に没頭し、丸一年がかりで二つのミステリーが完成した。二つであって一つでもあるような不思議な小説世界を旅してみませんか。――著者・内田康夫

 

単行本:2012年10月、ノベルス版:2014年5月、一次文庫:2015年10月、いずれも祥伝社刊

 

内田康夫(うちだ・やすお)

1934年東京生まれ。2018年3月83歳で死去。CMアニメ制作、コピーライター、CM制作会社社長

1980年『死者の木霊』を自費出版してデビュー。

旅情ミステリーを続々発表、2007年にはその著作が累計1億冊を突破した。浅見光彦シリーズは100事件を超えた。

2008年、第11回日本ミステリー文学大賞を受賞。

著書に『幻香』、『長野殺人事件』、『還らざる道』、本書『汚れちまった道』、『ふしむけば飛鳥』など多数。

浅見光彦記念館  

  

「その時の凝(しこ)り」 凝結、凝固、凝り性などと使う。「痼」という漢字もある。

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