hiyamizu's blog

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キャロル・オフ『チョコレートの真実』を読む

2013年02月13日 | 読書2

キャロル・オフ著、北村陽子訳『チョコレートの真実』(2007年9月英冶出版発行)を読んだ。

(チョコレートの原材料)カカオの実を収穫する(西アフリカの子供たちの)手と、チョコレートに伸ばす(先進国の子供たちの)手の間の溝は、埋めようもなく深い。


コートジボワールはカカオ栽培により奇跡的な経済成長を遂げたが、国際市場でのグローバル・チョコレート会社との競争に敗れ、経済が破綻し、IMF(の助け)により国内産業が崩壊する。貧困に陥ったカカオ生産農家は隣国マリからの児童労働に頼る。

幾度となく実質奴隷労働を告発する動きはあったが、巨大アグリビジネスにもみ消される。そして、希望の光りオーガニック・チョコレート会社は大企業に合併し、フェアトレードも普及の兆しが見えない。
エピローグは、「ずっと昔から続くこの不公正が正される見込みは、ほとんどない」で終わる。

原題は"Bitter Chocolate: Investigating the dark side of the world's most seductive sweet"(ビター・チョコレート:世界で最も魅力的なお菓子の闇の部分の調査)



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

チョコレートの甘く華やかな印象と正反対の暗く辛い現実が、カカオ生産の現場にあることを嫌になるほど明快に知らせてくれる。
しかし、あまりにもくどく、377ページの大書にする必要はなかったと思う。例えば、チョコレートの歴史に約70ページ、フランス人ジャーナリストのキーフェルの謎の死に約50ページも費やしている。



キャロル・オフ Caroll Off
ジャーナリスト。ユーゴスラビアの崩壊からアフガニスタンでのアメリカ主導の「対テロ戦争」まで、世界で数多くの紛争を取材、報道している。アフリカ、アジア、ヨーロッパについてのCBCテレビ・ドキュメンタリーで数多くの賞を受賞。他の著作に、The Lion, The Fox And The Eagle(『ライオンと狐と鷲』)、The Ghosts of Medak Pocket: The Story of Canada’s Secret War(『クロアチア・メダック村の亡霊―カナダPKO部隊の知られざる戦争』)。後者は2005年ダフォー賞を受賞。

北村陽子
東京都生まれ。上智大学外国語学部フランス語科卒。共訳書にS・ペレティエ『陰謀国家アメリカの石油戦争』(ビジネス社、2006年)、H・ジン「怒りを胸に立ち上がれ」(『自然と人間』2005年2月号)などがある。



以下、メモ。

第1章「流血の歴史を経て」、第2章「黄金の液体」
中米・メキシコ南部に生まれた粥状のカカオがヨーロッパに伝わり、徐々に普及していく。
第3章「チョコレート会社の法廷闘争」
オランダ人バンホーテンが発明された油圧装置で脂肪分を抜くことに成功し、美味しいチョコレートが出来上がる。フライ社は板チョコを作り、キャドバリー社はチョコをバレンタインデー、イースターエッグを結びつけて、一気に普及させる。
しかし、アフリカでのカカオ生産は奴隷制度にささえられていた。
第4章「ハーシーハーシーの栄光と挫折」
アメリカ人ミントン・ハーシーは、ミルク入りやアーモンド入りの板チョコで大成功。
やがて、戦後の買収と合併により、大きなチョコレート会社は、ネスレ、マーズという強大会社になる。一方、カカオ豆の売買という汚い仕事はカーギル社、ミッドランド社、バリーカレボー、など巨大食品企業の領分となり、表面に出なくなる。
第5章「甘くない世界」
ガーナのカカオ農園の誕生と崩壊、コートジボワールの栄光と挫折
第6章「使い捨て」
コートジボワールでのカカオ生産農園が児童人身売買ネットワークと取引している事実を暴露した外交官マッコは失業し、実態は闇に沈んだ。
第7章「汚れたチョコレート」

カカオ生産における奴隷労働を禁止する議定書は、「児童労働の最悪の形態」などと妥協の産物となり、やがて対テロ戦争の中で忘れ去られていった。
第8章「チョコレートの兵隊」
第9章「カカオ集団訴訟」
第10章「知りすぎた男

カナダ国籍を持つフランス人ジャーナリストのキーフェルは、カカオ管理機構の真相に迫り、謎の死をとげる。
第11章「盗まれた果実」
第12章「ほろ苦い勝利

オーガニック・チョコレートで成功した「グリーン&ブラック」社もさらなる拡大のため巨大製菓会社キャドバリー社に過半数の株を売り渡した。
チョコレート大企業はフェアトレードを受け入れる気配はないし、小さな会社が認証を受けるには膨大な事務作業が必要で、犠牲が大きい。アフリカの農民には不可能だ。
エピローグ「公正を求めて」
「ずっと昔から続くこの不公正が正される見込みは、ほとんどない」

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