働く人を守る 労働組合を活用したい
2019/11/21 紙面から
労働条件の改善を求め働く人たち自らが労働組合を結成する動きが目立つ。働き方が多様化する時代、労働者の権利や健康をどう守るのかが大きな課題になっている。もっと労組を活用していい。
17%。最近の労働組合の推定組織率だ。換言すれば八割以上の職場に労組がないことになる。
経営側に対峙(たいじ)する労働者の「盾」のような存在と言うには心もとない数字だ。
一方、注目すべき動きがある。
米配車大手ウーバー・テクノロジーズが日本で展開する「ウーバーイーツ」の配達員が十月、労組を結成した。
配達員たちは雇用されている従業員ではなく「個人事業主」だ。個人事業主は法的には「労働者」ではないため労災や雇用保険、最低賃金などの規定が適用されない。配達員たちは特に事故時の十分な補償を求めている。
まだある。東京電力の関連企業で各家庭の電気メーターの交換業務を請け負う人たちが昨年十二月に労組を結成した。請負契約打ち切り問題で団体交渉を求めている。請負で働く人も個人事業主だ。
個人事業主でも労組は結成できる。それは労働組合法が失業者も含め雇用されていなくても広く労働者と認めているからだ。プロ野球の選手らが労組をつくり球団と交渉する例もある。
個人事業主だが、実態は取引先から指示を受けるなど事実上労使関係にある働き方をしている人もいる。雇用形態に関係なく働く側は企業より立場は弱い。幅広く働く環境を改善せねばならない。
労働運動は下火となったが、団体交渉などで企業と交渉できる労組の役割は今も小さくない。
雇用される従業員でも今後は兼業や副業に挑戦する人や、フリーランス、外国人労働者も増える。どんな働き方をしても頼れる労組の存在はさらに重要になる。
十一月に発足三十年を迎える連合もこの課題に直面している。
今後は、こうした多様な働き方への支援に乗り出す。労組を結成できない人の連合加盟も認めるという。日本最大の労組の中央組織として当然の対応だ。
連合は大企業で働く組合員が中心で「正社員クラブ」ともやゆされてきた。パートなど非正規労働者への対応が後手に回ってきたことは否めない。同じ轍(てつ)を踏むべきではない。
「働き方改革」は労組のあり方の再考や意識改革も迫っていると自覚してほしい。