米パリ協定離脱 気候危機に背を向けて (2019年11月7日 中日新聞)

2019-11-07 08:54:28 | 桜ヶ丘9条の会

米パリ協定離脱 気候危機に背を向けて 

2019/11/7 紙面から

 トランプ米大統領がパリ協定からの離脱を国連に通告した。気候危機が地球を覆う中、再選戦略優先か。世界第二の温室効果ガス排出大国不在でも、私たちはパリ協定を軌道に乗せていくしかない。

 今月四日は、パリ協定発効からちょうど三年の節目になる。トランプ大統領はその日を待ちかねたかのように、協定からの離脱を国連に通告した。

 新年から始動する温暖化対策の新たなルールのパリ協定は、二〇五〇年以降の世界の温室効果ガスの排出量を実質ゼロとし、産業革命以前からの温度上昇を二度未満、できれば一・五度に抑えることを目指す。一六年十一月に発効した。

 協定離脱は「米国に不公平な経済負担を強いている」と主張するトランプ氏の選挙公約だった。就任後半年足らずの一七年六月にその方針は表明していた。正式通告が今になったのは、協定の合意の中に、発効後三年間は離脱を通告できず、通告後一年たたないと、脱退が成立しないという取り決めが盛り込まれていたからだ。米国が離脱できるのは来年十一月四日、大統領選挙の翌日で、米国民は離脱成立直前に、その是非を問われることになる。結果次第では、いったん離脱が成立しても、早期復帰は可能である。

 米国はパリ協定以前の国際ルール、京都議定書からもいち早く離脱した。〇一年、共和党ブッシュ政権に代わった直後のことだった。そのことを念頭に組み込まれていた「安全装置」だったのだ。

 日本も米国に追随するかのように京都の名を冠した議定書から抜け出した。米国離脱の影響で、京都議定書の効果は尻すぼみになった感がある。だが当時とは事情が違う。気候変動による異常気象は年々激しさを増している。国際社会の危機感も膨らんで、その共有が進んでいる。多くの米国民や米国企業も例外ではないはずだ。

 来月二日開幕の気候変動枠組み条約第二十五回締約国会議(COP25)は、政情不安などを理由に開催国が二度変わった。土壇場でスペインが引き受けたのも、パリ協定スタート直前の重要な会合を成功させたいという使命感と危機感の表れなのだろう。

 温暖化の進行で失われるものは計り知れない。とりわけこの国は、うち続く台風被害で、十分体感したはずだ。トランプ氏の言動に惑うことなく、COP25の成功に貢献し、パリ協定の船出の追い風になるような国でありたい。