『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1454

2019-01-17 06:10:48 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パナモス浜頭一行を乗せた試乗戦闘艇が岸壁の乗降埠頭に帰ってくる。
 テムノス浜頭とオキテスが出迎える。
 『テムノス浜頭、出迎えありがとう。海上の試乗航走条件が最適であった。いい試乗ができた』
 『それは重畳であった。パナモス浜頭、昼食の準備ができている。漕ぎかたの連中も引き連れて一緒に行こう』
 『テムノス浜頭、そのようなはからいをしてくれて、ありがとう!痛みいる』
 パナモス浜頭が漕ぎかたの長を呼ぶ、漕ぎかた連中一同を連れてくるよう指示する、一同がそろう。
 『テムノス浜頭、一同そろいました。同行します』
 一行がテムノス浜頭の屋敷へと歩を運ぶ、屋敷の庭には気持ちのこもった昼食が整えられている、招待されたパナモス浜頭方の一同が席に就く。
 テムノス浜頭が歓迎の辞を述べる。
 『本日はようこそ!当方が催行した船舶売り出し展示試乗会に来てくれました。ありがとう!パナモス浜頭とは、イラクリオンにおいて、よくとは言えないが時たま顔を合わせる間柄である。パナモス浜頭、本日の来駕、ありがとう。心から礼を言う。ここに心づくしの昼食を準備した心おきなく食していただきたい』
 テムノス浜頭の歓迎の辞が終わる、場から拍手が沸く、歓声があがった。
 パナモス浜頭が起ちあがる。
 テムノス浜頭の言葉にこたえる。
 『テムノス浜頭、このように私らを迎えてくれて、ありがとう。テムノス浜頭の心遣いをひしひしと身に届く!遠慮することなく馳走になります』
 またもや場に拍手が沸き、歓声があがる。
 接待係が一同の酒杯に酒を注ぐ、テムノス浜頭が声をあげる。
 『一行、ようこそ!船舶売り出し展示試乗会に来てくれた。大歓迎である!乾杯!』
 一同が杯の酒を飲み乾す。
 飲み乾された酒杯に酒が注がれる。
 パナモス浜頭が声をあげる。
 『テムノス浜頭、歓迎ありがとう!乾杯!』
 場から歓声と拍手が沸きあがる。
 乾杯の交歓を終える、一同がテーブル上の肴を口に運ぶ、おおらかにそして和やかに昼食会を終える。
 二人の浜頭の談義は、商談はせず、市場状況の話題展開に終始した。
 『テムノス浜頭、言葉に甘えて、一同、馳走になりました。ありがとう』
 『いやいや、浜頭、これは当然、私らのすべきであり、昼食を共にできたことを喜んでいる』
 パナモス浜頭一行が退席していく、帰途に就くため停留岸壁へと歩を進める。
 テムノス浜頭がパナモス浜頭を送って出る。
 パナモス浜頭がテムノス浜頭に声をかけた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1453

2019-01-16 06:33:06 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 握手を交わしたテムノス浜頭とパナモス浜頭の目が合う。
 パナモス浜頭が口を開く。
 『俺らの一行は総勢21人だが、チョット厚かましい気がしている』
 テムノス浜頭が返事をする。
 『解った。浜頭、おおらかな気分で昼食のひと時を過ごそうではないか』
 水夫頭とオキテスが試乗の準備ができていることを伝えに姿を見せる、一行が試乗の岸壁埠頭へ足を運ぶ。
 オキテスが一行を試乗戦闘艇艇上に案内する、水夫頭が同行する。
 テムノス浜頭が水夫頭に指示をする。
 『この試乗が終わったら、パナモス浜頭の一行と昼食会をやることになっている。俺がこの埠頭で待っている』
 『了解しました』
 試乗戦闘艇が岸壁を離れていく、テムノス浜頭とオキテスがこれを見送る。
 海上の状況は、各所に白ウサギが飛び、東からのいい風が吹いている、試乗の好状況を呈していた。
 艇上のパナモス浜頭は、操船操作と船の走行状態に意を注いで体感する、持ち船との差異を比較検討している。
 彼が操船担当のダックスに声をかける。
 『操船担当!操舵をやってみたいのだが』
 『了解しました。艇尾のほうに行きましょう』
 二人が艇尾に移る、ダックスが簡明に説明する。
 『了解!』
 操舵担当がパナモス浜頭に操舵席についてもらう、操舵棒の把手を引き継ぐ。
 ダックスが声をかける。
 『浜頭、大きくジグザグ走行するように操舵してみてください』
 『そうです!あとは思いつくままに操舵してみてください。何かあれば、担当に聞いてくだされば結構です』
 パナモス浜頭が操舵棒の把手を操作する、艇尾の動きに応じて艇の舳先が進みたい方向に向かう、舵の切れ具合の効果を体感する。
 彼は船を理解する、操舵席を担当に引き継ぎ、操舵体験を終える。
 ダックスがパナモス浜頭に声をかける。
 『浜頭、如何でしたでしょうか?そろそろ浜に向かおうと思っていますが』
 浜頭が同行の5人に声をかける。
 『おう、お前ら試乗体感を充分にしたな!浜に引きあげるぞ!』
 『はい!もう、充分です』
 『おう、操船担当、浜に向かってくれていい。いろいろとありがとう』
 艇が進行方向を浜に向けて転じる、左手方向からの風に抗して櫂を操作する、しぶきが舞い上がる、艇上の者らは降りかかるしぶきで濡れる。
 パナモス浜頭は、しぶきに濡れながら決断思考に集中する、同行の5人の意向を確かめる、船の走行安定性に重きを置いて試乗感を質す、帆張り作業、防御楯の取り扱い等についても意見を聞く。
 彼は意を決した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1452

2019-01-15 04:28:07 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 レテムノンの浜が船舶売り出し展示試乗会の三日目の朝を迎える。
 昨日とうって変わり洋上には、試乗客を乗せて航走するにいい東からの風が吹いている。
 昨日、来場された客の姿がある、水夫頭と顔が合う、歩み寄っていく、声をかける。
 『あっ!浜頭、ようこそ!来場くださいました。ありがとうございます』
 『おう、頭!船舶売り出し展示試乗会、忙しそうだな。なによりなにより!』
 オキテスが水夫頭に小声で耳うちする。
 『頭、こちらさま、昨日ヘルメス艇を試乗された再訪のお客です』
 『なになに、昨日も来場くださった?』
 水夫頭が驚きの声をあげる、客人に声をかける。
 『それはそれは、たいへん失礼しております。昨日もおいでくださった。私ども気づかずで失礼の段、お許しください』
 水夫頭が平身して低頭する。
 『いやいや、頭、気にしないでいただきたい。私の勝手で来ているわけだから。今日、ここに来たのはだな、朝、浜に出てみたらいい風が吹いているではないか。その風具合を見て試乗気分が沸いてきたというわけだ』
 『そうですか』
 『昨日は小さいほうの船に乗ってみた。今日は大きいほうの船に乗ってみようと思ってな』
 『解りました。浜頭、つれの方がおられますか?』
 『おう、連れかいるいる、もう来る』
 『試乗、第2便となります。待っていただきたいのですが』
 『おう、それでいい!』
 『どうぞ、少々、腰を下ろして休んだください』
 水夫頭が浜頭と姿を見せた5人を接客の場へと案内する。
 テムノス浜頭が姿を見せる、来客に気づく、歩を速める、客と顔を合わせる、声をかける。
 『おう、パナモス浜頭殿、来てくれたのか、ありがとう!大歓迎だ、休んでくれ。用件を言ってくれたか?』
 『昨日も来た、そして、今日も来た。納得の試乗をしたくてな。昨日来た時に声をかけようと思ったが、来場者が多くて多忙を極めていた。そのようなわけで失礼した』
 『俺の方こそ、気づかずで失礼した、許してもらいたい』
 テムノス浜頭が軽く詫びを言う。
 『試し乗りして船を買う。これまでのクレタになかった船の売り方ではないか。今朝浜に出てみたら、いい東からの風が吹いている、そのようなわけで再度、試し乗りに来たというわけだ』
 『それはそれは、ようこそ来てくれた。ありがとう。厚く礼を言う。この頃合いだ、昼を準備する、昼を一緒しよう!漕ぎの連中をいれて何人だ?』
 『何っ!?漕ぎの者らまで昼の馳走になるのか』
 『そうだ、俺の気持ちのもてなしだ、受けてくれ』
 『浜頭の言葉に甘えていたら、何としても船を買わなくてはならないということになる。浜頭、悪いが遠慮する。悪く思わんでくれ』
 『そのように言われたら、言いだした俺の顔がたたない!買う買わない、それは慮外のことだ。日ごろの疎遠の詫びだ、遠慮はしてくれるな。昼食の場は屋敷の庭に設ける、話し合おう。お互い取り仕切っている場が違う関係でイラクリオンで顔を合わせたときぐらいではないか、ここで逢ったが幸い、昼食を一緒しよう』
 『了解した。テムノス浜頭殿、馳走になる、言葉に甘える。この厚遇を返す時がある、その時は遠慮せず俺の言いなりになってくれることを約束してくれ!いいな』
 『解った。約束する』
 二人は手をさしのべる、固く握り合った。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1451

2019-01-14 03:23:47 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 秋の気配が漂うクレタの朝が明ける、今日もいい空模様である。
 あわただしい気分で朝食を終える、スダヌス浜頭ら一行の試乗を実施する。
 海上の試乗条件が充分とはいいがたい、そのことを試乗客人に告げる、いい風を期待して少々沖へと出る。
 スダヌスが操船担当のカイクスに声をかける。
 『おう、この海上状態でいい走りをすれば客の船を買う心が決まる!操船をうまくやってくれ!』
 『解りました。やってみます』
 カイクスは海上の航走条件がよくなることを心うちに強く念じる、少々不足気味なれど試乗航走充分条件となってくる、海上のあちこちに白い波頭の波を目にする、ヘルメス艇が生まれ変わった走りをする。
 操船するカイクスが快走するヘルメス艇の不思議を感じる。試乗航走は試乗客人らに好印象を与えて試乗を終える。
 岸壁埠頭にテムノス浜頭が立っている、試乗を終えた客人ら一行をを迎える。
 スダヌス浜頭がテムノス浜頭に報告する。
 『テムノス浜頭、試乗航走を終えました。海上の航走条件がよいとは言えませんでしたが試乗を終えました』
 『おう、そうか、ご苦労であった。客人らは満足されたかな?』
 『充分とは言えないまでも目的を果たしたと思います。返事は後日、改めてすると言っています』
 『スダヌス浜頭、話の詰めをよろしく頼む』
 『解っています。いい返事を待ってください。客人都合によってすぐに帰途に就きます。よろしく願います』
 『おう、スダヌス浜頭、今回はご苦労であった。ありがとう。いい返事を待っている』
 『では、これにて失礼します』
 スダヌスがテムノス浜頭との話を終える、次いでオキテスに話しかける。
 『オキテス、聞いていた通りだ、解るな。船を買うことは、ほぼ決まっている。安心しろ!いい引き合いだ。俺らは客人都合で直ちに帰途に就く、あとのこと、よろしくな!あ~あ、それから。明日のことだがお前らの来るのを待っている!』
 『おう、よろしく頼む』
 スダヌスとオキテスの打ち合わせが終わる。
 スダヌスと客人三人が乗ってきた船上の人となり岸壁を離れていく、これをテムノス浜頭とオキテスが見送る、彼らはアサイチの仕事が終える。
 今日も試乗客が絶えることなく続き、終日、試乗艇が航走して客を満足させる。
 レテムノンにおける船舶売り出し展示試乗会の二日目が暮れていった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1450

2019-01-12 09:13:34 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 艇上のスダヌスと客人三人は、販促ツールと首っ引きで書かれている5つの特長を順序立ててチエックしていく。
 二本帆柱、4枚帆の風ハラミ、効果性と操船の合理性、新舵方式の操作と切れ具合、防御楯構造の使用方法、理屈不明の衝角構造体が関係する波割りと走行安定性、事細かに体感によってチエックに及んだ。
 彼らは船に関しての豊富な経験を基準にして評価する。彼らなりに単純明快に二項対立方式で解釈、AでなければB,BでなければAであると結論していく、試乗感を彼らの思考水準で話し合っている。
 彼らは試乗を終えた。
 『おう、スダヌス浜頭、こうして試し乗りして船の購入を決める。これまでになかった手法だな。俺はもう一つの船を試乗してみたい。そのうえで買う買わないを決めたい。そのようにテムノス浜頭に伝えてくれればいい』
 『おう、そうか。そこまで腹積もりを決めているのか、テムノス浜頭がそれを聞いたら喜ぶぜ!』
 『そこまで腹積もりをしているとは言うものの、でっかい買い物だ、気持ちが揺れに揺れまくっているわい』
 『そりゃそうだろう、お前の気持ちがよくわかる。これからは船足の出やすい速い船が喜ばれる時代になる。それに加えて、お前のところの商取引の拡大、船荷の積載量の多い少ないを検討して決めろ。そういうことだ、マイテス浜頭』
 『スダヌス、お前に言う通りだ!今、使っている船は、試し乗りした船に比べて、二回りくらい小さい、それを考えると願ってもない船の大きさだ。船を買うことは心に決めている。ただ、どちらにするかだけを考えている』
 『マイテス、お前の気持ちがよ~く解った。そのことを伝えて買う船を決めると伝えておく。また、そのためにどうするかを営業担当のオキテスと話し合っておく』
 『船を買う。でっかい買い物だ!買い物の失敗をしたくない。よろしく頼む』
 『了解した』
 スダヌスはこのことをオキテスに伝え、彼を同道させて試乗結果をテムノス浜頭に伝える、テムノス浜頭とオキテスが話し合う。
 『テムノス浜頭、解りました。客人の都合を聞いてみて、明日、もう一度、もうひとつの試乗艇のヘルメス艇に試乗してもらうようにします』
 スダヌスに声をかける。
 『スダヌス浜頭、客人の都合はどうだろうか?聞いてほしい』
 『おう、いいだろう。客人に都合を聞く』
 スダヌスが快諾する、二人はテムノス浜頭のもとをはなれる。
 スダヌスはその足で客人が休んでいる場に向かう、マイテス浜頭と話し合う。
 『スダヌス浜頭、了解した。明日、アサイチに試乗する。俺の明日の都合もある。後日返事ということで帰る。そのように手筈を整えてくれ』
 『解った。アサイチの試乗であれば、マイテス浜頭の浜まで昼前に帰れる。そのように段取りする』
 スダヌスは、そのことをオキテスに伝え段取りを整えた。
 スダヌスと客人ら三人は、テムノス浜頭の夕食会に招待される、宿営はオキテスらとともに停留岸壁の浜でスダヌス方の漕ぎかた連中と共にした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1449

2019-01-11 08:56:58 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 船を降りたスダヌスがオキテスに向けて歩を運ぶ、オキテスの前に立つ。
 『おう、オキテス、頑張っているかな?』
 『おう、スダヌス!来てくれたのか!』
 『俺が来ないわけがなかろうが!客人三人が一緒だ。とりあえず、テムノス浜頭に挨拶してくる』
 スダヌスが客人三人を連れてテムノス浜頭のところに足を運ぶ。
 『テムノス浜頭、久しぶりです。只今到着しました。達者の様子何よりです。船舶売り出し展示試乗会、客足はいかがですかな?私ですが客人三人が同道しています。よろしく願います』
 三人の客人をテムノス浜頭に紹介する。
 『ようこそ、船舶売り出し展示試乗会においで下さった。ありがとう。厚く礼を言います。新しい造作を凝らした船です。試乗よろしく願います』
 『お~っ!スダヌス浜頭、ありがとう!よろしく願うのは俺の方だ。まあ~、休んでくれ』
 『ありがとうございます。チョット、オキテスのところへ行ってきます』
 客人三人を接客の場に休ませ、オキテスのところに来る、声をかける。
 『おう。オキテス、商況はどんな具合だ?』
 『おう、商況か、おかげでというところだ。俺の力でないことだけが解る。俺はつなぎに介在しているだけだと感じている』
 『お~、そうか、お前がいなけりゃ、つながらないではないか、重要な役務だ!誰でもやれるというものではない。ところで食糧事情だが、うまくいっているのか?』
 『それは、まあ~まあ~、うまくいっている』
 『そうか、なればいい、安堵した。オロンテス隊長からパンを預かってきている。それから俺からの差し入れもある。客人を交えて昼を一緒にやろう。いいな!そのように準備してくれ』
 『合点!承知!こうして、お前に会う、元気が湧いてくる、意気が盛んになる!一同を元気づけられる。ありがとう』
 『俺らの試乗には、どれくらい待たなければならない?』
 『試乗岸壁に行ってみよう!』
 『おうっ!』
 二人は、試乗の岸壁に来る、オキテスが担当に声をかける、答えが返る。
 『隊長、これから、第2便が出ます。第3便は昼頃です』
 『そうか。スダヌス浜頭の一行が試乗する。よろしく頼む。戦闘艇にしてほしい!昼めしを済ませて、その頃にここへ来る』
 『了解しました。待っています』
 オキテスがスダヌスのほうに体を向ける。
 『スダヌス浜頭、少し早いと思うが昼をすまそう』
 『おう、者どもに荷をおろさせる。場へ案内してくれ』
 オキテスがスダヌスを案内して一同が待機している場へと向かう。
 用件を伝えて、昼食の準備を整えさせる。
 スダヌスが配下の一同に指示して荷を運ばせる。
 客人を招く、彼ら全員が場に顔をそろえる。一同が和気あいあいで昼食を済ませる。
 オキテスとスダヌスが客人一行を案内して試乗に及ぶ。
 レテムノンの沖の海上には絶好の風が吹いている。試乗艇は快走する。
 客人一行は、スダヌス浜頭を囲んで、舞い上がるしぶきをかぶりながら試乗の体感を話し合った。
 

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1448

2019-01-09 10:10:36 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 水夫頭がオキテスからの礼を受けとる、設営要領について話し合う。
 『いえいえ、どういたしまして、長い船旅、いろんな苦労がついてまわります。互いに苦労の共有です。ところで、オキテス隊長、明朝、陽の出後、朝めしを済ませ一同を連れてこちらへ来ます。よろしく願います』
 『了解しました。待っています。浜は、どのあたりを使うことになりますかな?』
 『この辺りは接客の場になります。試乗の乗り場は、停留岸壁の東端しを使おうと考えています』
 『解りました』
 オキテスと一同が夕食の馳走を届けてくれた水夫頭と一行に声をかける。
 『喜んで馳走になります。ありがとうございます』
 その礼言葉に一行は、手を振りかざして場を去っていく、一同がこれを見送る。
 彼らは、届けられた馳走を味わい夕食を終える。
 この季節、夜空に照る清明の弦月、にぎやかに輝きに興ずる星を仰ぎ見て寝につく、眠りをさまたげる蚊はいない、彼らはぐっすりと眠りをむさぼった。
 
 レテムノンにおける船舶売り出し展示試乗会の朝が明ける。
 朝行事を終えてオキテスは、一同の気鋭を確かめる。
 『おう、おはよう。お前ら、気は張っているか!?』
 『おうっ!』
 『一に気迫だ!』
 『おうっ!』
 『ニに、気合いだ!』
 『三、四がなくて、五に、気合いだ!』
 『おうっ!』
 オキテスは、一連の船舶売り出し展示試乗会の最終回に及んで一同の気勢をたからませる。
 『よしっ!朝めしといこう!』
 彼らは、朝めしを胃ブクロに収める。
 テムノス浜頭方の水夫ら一行が来る、オキテスと水夫頭が作業段どりをうち合わせる、台や丸太を切ってしつらえた腰掛が運び込まれる、場が整う、会場設営が終わる。
 一同が担当の場に就く、オキテスが陽の位置を確かめる、態勢をチエックする、一同の気張りを肌に感じとる。
 テムノス浜頭が客人とその一行を引き連れて姿を見せる。
 彼らを迎える、水夫頭、イリオネス、オキテスと係員一同、レテムノンにおける船舶売り出し展示試乗会の開催の幕を切って落とした。
 オキテス以下の業務に携わる者らが慣れた手順で客対応をする。
 試乗艇が客人らを乗せて白い航跡を引いて沖へと岸壁を離れていく。
 オキテスの耳に聞き覚えのある声が届く、パキオテ頭領が知り合いを連れて会場に姿を見せる。これを迎えるテムノス浜頭とオキテス。
 停留岸壁に一艘の船が着く、スダヌス浜頭が船から降りてくる。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1447

2019-01-09 05:16:04 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 テムノス浜頭とイリオネスの二人が再会をこの上なく喜び合う。
 テムノス浜頭が声をかける。
 『イリオネス軍団長殿にオキテス隊長、こちらがテムパキオから来た友人のダムネス浜頭です。よろしく!』
 テムノス浜頭とダムネス浜頭、イリオネスとオキテス、四人が目に親しみを浮かべ目線を交わす。
 『ダムネス浜頭、こちらの二人がニューキドニアの浜で造船事業をしているアエネアス統領の営業の業務を担当しているイリオネス軍団長とオキテス隊長である』
 『そうですか。私は、テムパキオのパキオテ頭領と同業のダムネスです。よろしく願います』と言って、手をさし伸べる。
 イリオネスとオキテスは、差し出された手をしっかりと握る。
 互いに目を合わせうなずき合う、固い握手を交わし終える。
 テムノス浜頭が三人が挨拶を交わし終えるのを待って声をかける。
 『オキテス隊長、明日のことだが、船舶売り出し展示試乗会の会場設営のことだが、どのような段取りで作業を進めるかを説明してくれればいいのだが。俺の方では、水夫頭以下数名の者が手伝うことにしている』
 『そうですか、それは心強い!ありがとうございます。明朝、現地集合でやるということで如何でしょうか』
 『それでいいのか。了解した』
 テムノス浜頭が水夫頭のほうへ体を向ける。
 『頭、聞いたとおりだ。そういうことだ。朝早く者どもを連れて浜のほうへ出向いてくれ』
 『承知しました』
 『オキテス隊長、そのように段取りする。よろしく頼む』
 『テムノス浜頭、よろしく頼みます。それでよろしく願いたいのは、今夜ですが、停留岸壁の浜で宿営したいのですがーーー』
 『あ~あ、いいとも!使ってくれ』
 『ありがとうございます』
 『君らも長い道中だ、食糧のほうはことたりているのかな?君らの夕食の副菜を届けようかと考えている。人員は何人だ?』
 『はい、ありがとうございます。そのような心遣いをいただいて、とても恐縮です。私らの総員は65人です』
 『解った!』
 打ち合わせを終えて、イリオネスとオキテスが場を引きあげる、浜に戻る、一同を集める、オキテスが明日からの三日間の業務の遂行予定を説明する。
 一同から了解の目線が返ってくる、話し終える。
 『おうっ!』『おうっ!』『おうっ!』
 一同から応諾の返事がかえって歓声があがる。
 テムノス浜頭の心遣いの副菜が届く、一同が歓声をあげる。
 『水夫頭殿、これはこれはかたじけない、喜んで頂戴します』
 オキテスは、水夫頭に丁寧に夕食の副菜をもらった礼を述べた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1446

2019-01-07 05:52:50 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 戦闘艇、ヘルメス艇の2艇がパノルモスの沖の洋上を西へと航走している。
 艇上の漕ぎかたらがイデー山山頂をのぞんでの櫂さばきをしている、ピッチがおちている、船速が遅滞してくる、ダックスが声をあげる、叱咤の檄を飛ばす。
 2艇がパノルモスの沖を通過する、海上状況が変わりつつある。
 風向きが変わってきている、東寄りの北風が北寄りの東風に代わってきている、強さも増して来ている。
 ダックスは風具合を読む、海上を見回す。
 海上のあちこちに白い波頭の波立ちを見とめる、白ウサギの飛び跳ねである。
 ダックスが帆走でいけると決断する、帆張り指示の声をあげる。
 『帆を張れ!全帆帆張りせよ!櫂をあげ!』
 風が艇を押す、波を割る、舞い飛ぶしぶきが艇上の者らにふりかかる。
 2艇がレテムノンに向けてひた走る、レテムノンの村邑が見えてくる。
 彼らは、レテムノンに着く、停留岸壁に2艇を係留する、イラクリオンからの航走を終えた。
 オキテスが太陽を仰ぎ見る、時を計る。
 『軍団長、予定した時間にレテムノンに無事到着しました!』
 『おっ!そうか、重畳!ご苦労!』
 イリオネスが安堵の表情でうなずく、オキテスが用向きを打ち合わせる、ダックスを呼び寄せる。
 『おう、ダックス、ご苦労であった。到着は予定通りである、重畳!』
 『パノルモスを過ぎたあたりからの海上状況が艇を押してくれました。願ってもない幸運でした』
 『そうだな。軍団長と俺とは、テムノス浜頭のところに行ってくる。漕ぎかたほか一同を休ませてくれ。腹が減っているようであれば、小腹に何か入れてやってくれ』
 『解りました』
 イリオネスとオキテスの二人は、テムノス浜頭の屋敷へと歩を運ぶ。
 オキテスがテムノス浜頭の屋敷の戸口に立つ、声をかける、水夫頭が顔を見せる、彼が声をあげる。
 『おっ!オキテス隊長、到着されましたか』
 『たった今、無事に到着しました』
 『そうかそうか、それは何よりでした。ご苦労でした。浜頭を呼んできます。腰を下ろして休んでください。あ!軍団長も一緒でしたか』
 水夫頭がイリオネスに挨拶する。
 『軍団長殿、ようこそ!ただいま、浜頭を呼んできます、少々待ってください』
 水夫頭が浜頭を呼びに行く、イリオネスとオキテスは庭にしつらえてある椅子にくつろぐ。
 二人を待たせることなく、テムノス浜頭が客人とおぼしき二人を連れて姿を見せる。
 『おう、オキテス隊長、無事に着いたか、ごくろう!パムテキオからの客人を紹介する』
 イリオネスが立ちあがる、テムノス浜頭に声をかける。
 『テムノス浜頭殿、久しぶりです。変わりなく過ごしていられますかな?』
 『軍団長殿、久しぶりです。元気そうで何よりです。私も元気そのものです』
 二人の目が合う、ガシット互いの肩を抱く、力の入れ具合に遠慮がない、身をはなす、目を合わせる、再び互いの肩を抱いた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY 2019年 新年のご挨拶

2019-01-01 10:47:11 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
             新年のご挨拶を申し上げます。

            あけましておめでとうございます
            今年もよろしくお願い申し上げます

            2019年 元旦

             山田 秀雄  山田 萌愛