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『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY             第5章  クレタ島  136

2012-10-03 06:30:25 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 風雨の中である、船足はかなり速い。その船速を制御しての回頭は、それなりの操船技術を必要とした。この風雨の中で各船がうまく回頭してくれるよう念じた。各船の間隔は約2分の1スタジオン(約100メートル)離れている。船の衝突はありえないと考えていた。回頭時には、帆を降ろして櫂操作と操舵で方向転換を行うよう操船要領を伝えてあった。
 彼は、各船の状態を確かめた、難なく方向転換を終えたようであった。彼らは波頭が風に飛ぶ風雨の中で難易度の高い操船をやってのけ、接岸を目指して漕ぎかたが奮闘していた。
 パリヌルスの第一船は各船よりも先行している。彼はカイクスに海の深さを測るべく指示した。
 各船は浜まで残すところ1スタジオン(約200メートル)くらいである。海の深さはかなりある、安全深度である。荒れる海での深度探査である、波の高さと海の深さ、その安全度に注意を払った。浜まであと2分の1スタジオン(100メートル)である、深さが約3メートル。彼は船を進めた。浜まで70メートル、深さ1メートル50センチ、迷わず各船に停船を命じた。
 船底が海底に接するぎりぎりの深さと判断した。また、人間が海中歩行する深さの限界でもあると判断した。
 オキテスとオロンテスの第二船、第五船は海の深さが4メートルくらいの地点で停船するようにあらかじめ指示してあり、彼らの船はその地点で、波にゆられているのを目にした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY             第5章  クレタ島  135

2012-10-02 08:42:41 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 この時代、この小島(現在のPOLYAIGOS島)にはまだ名は無い。この島の近辺には海面上に姿を見せていない岩礁が多く、不用意に島に近づくと座礁の危険があったのである。風雨で荒れ気味のの海上にあって船団は危険を避けなければならなかった。
 パリヌルスの船が先頭にたって船団を誘導した。彼の算段では、ミロス島の停泊予定地までにあと半刻あまりで着く。彼は浜までの海の深さを記憶のそこから想い起こしていた。どのようにして船団を接岸させるかを考えた。荒れた海での浅瀬への誘導に知恵を搾った。
 『カイクス、海の深さを測る準備をしておいてくれ』
 彼は各船に注意を促した。島の沿岸より5スタジオン(約1キロ)くらい離れての沿岸航法で航走するようにと信号をカイクスに送らせた。停泊を予定している浜までは残すところ6キロ余りである。彼は風雨の状態に注意を払いながら船団を慎重に誘導した。
 彼は船列における各船の間隔を測った。各船の間隔は2分の1スタジオン(100メートル)が保たれている。彼は着岸のための方向転換点にさしかかるのを待っていた。徐々に沿岸との距離をつめながら進んでいた。彼はミロス島の停泊予定の浜の目印を探していた。
 かすんで見える浜の目印が目に入った。目印はひときわ鮮やかに白く輝いて目に入ってきた。石灰岩でできた岩である。彼は一斉回頭を指示した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY             第5章  クレタ島  134

2012-10-01 07:48:13 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『隊長っ!隊長っ!』
 カイクスの叫ぶ声が耳を突いた。ふりむくパリヌルス、緊張が走った。
 『どうしたっ?』
 『左手前方に小島ですっ!』
 カイクスの言葉とともに雨も来た。雨嵐の一歩手前の状況である。
 『何っ!左手前方に小島?』
 海上はもやって霞んでいる、パリヌルスはもやって霞む大気を払いのけるしぐさをしながら前方を見た。小さく小島の島影を見とめた。船足が速い、小さな島影が迫ってくる。
 進行方向が狂っていた。右手に見えなければならないはずの島影を左手前方に見るとは、しかし、彼は迷わなかった。進路の変更とこの船のポジションである。この船が先導しなければ、行き着くミロス島の浜への導きと座礁の危険の回避を何んとしてもしなければならない。彼の心は急いた。そのうえ雨が来た、霞む海上、視界がはっきりしない。
 カイクスに命じた。
 『カイクス!操舵の者に伝えろ!この船は船列を離れ先頭に出る。船列の左に出て先頭に出ろと伝えろ。漕ぎかたに指示するのだ漕ぎかたはじめだ。急げっ!』
 『判りました』
 『それから各船に信号を送れ!『我に続け!』だ手信号で伝えろ!』
 『判りました』
 パリヌルスの第一船は、各船に信号を送りながら、先頭を行くオキテス第二船の左側に並んだ。船首の左舷にオキテスの姿が見える。パリヌルスは手信号で伝えた。
 『左へ回頭せよ。我が船に続け』
 手信号を三度繰り返した。オキテスから『了解』の返事が来る。間をおかずにパリヌルス第一船が左へ船首を向けて先頭に出た。
 小島から離れた。と同時に目にしたのは、ミロス島の大きな島影であった。