『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第2章  トラキアへ  61

2009-10-12 07:06:22 | アルツハイマー型認知症と闘おう
 一行五人は、月の照らす海をエノスの浜に向けて急いだ。心は急いていた。五人はだんまり、無言である。ただひたすらに帰途を急いだ。海を泡立てる櫂の音だけが海面を這って消えていった。往路は、魚を釣りながらであったが、復路は、心急くままの漕走であった。見慣れてきつつある浜は、月の光で明るかった。
 浜に四つの人影を見た。四つの影は、見たことのある風体をしている。魚行商の四人が帰ってきていたのである。アエネアスは、早足で歩み寄っていく、彼らも急ぎ足で、こちらに向かってくる。
 『お前ら、無事に帰ってきたか。近くによって顔を見せろ。』
 アエネアスは、大手を広げて四人をかき抱いた。彼らの苦労を心情としぐさで、ねぎらった。アエネアスとアレテス、その部下の三人は、二人の浜衆に厚く礼を言って見送った。
 『アレテス、ご苦労であった。二人、一緒に来い。イリオネス、パリヌルス、オキテス、カピュスもいる。俺たちも予定している戦場の視察から、いま、帰ってきたところだ。話を聞く。』
 一同は、月の光を避けて、浜に上げている船影の闇に円陣を組んで座った。


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