『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第７章 築砦 ８０４

　パリヌルスは、ギアスのところへ顔を出す。
　『おう、ギアス、明日、ヘルメスに乗る！よろしくな』
　『判りました』
　浜は、進水披露を明後日に控えて気が張ってきている。
　オキテスは、イリオネスに今日の推移と結果を報告した。
　ここ数日にわたって、ヘルメス艇に造作をして、その機能と効果のほどを試したことを話した。
　イリオネスは、関心を示して聞き入った。
　『ほう、そうか。ヘルメスが進化したか。それでーーー』
　オキテスはヘルメスの進化した走行の模様について、こと細かに話した。
　イリオネスの目がオキテスの目を見つめる。オキテスが答える。
　『その造作を新艇の構造に付加します』
　『それはいいことだ。やるべきだな。オキテス』
　『明日にでも、統領と一緒にヘルメスに乗ってもらう機会を作ります』
　『おう、そうしてくれ』
　話題が進水披露に招待する客のことに及んで報告を終える。
　次いで、進水披露の催行次第を説明して段取りと対処をを明日から行う旨を伝えた。
　アレテスの便船がオロンテスの一行を乗せて帰ってくる、パリヌルスが彼をねぎらう。
　『おう、アレテス、ご苦労！まあ～、休め。オキテスが報告を終えて、もう戻ってくる。進水披露の件で打ち合わせもある』
　『おう、オロンテス、いま、オキテスは、軍団長のところへ行っている、もう戻ると思う。ここにアレテスもいる。明後日に迫った進水披露の打ち合わせをやらないか』
　『判った。パリヌルス、こういってはなんだが、ヘルメスは変わった。お前も乗ってみろ！あの変わりようには、お前といえども驚く』
　『ほう、そんなに変わったか。明日が楽しみだ。明日、乗ってキドニアに行く！』
　オキテスが戻ってきた。
　『おう、オキテス、進水披露の件、明日から準備にかかるわけだが、アレテスもいる、打ち合わせておかないか』
　『その件か、まだ、対処と段取りを決めていないが、ここで決めてしまうか』
　『おう、それでいい、やってしまおう』
　『進水披露の主役を務めるドックスを呼ばなきゃならん』
　パリヌルスが浜の張り番を呼ぶ。
　『おう、建造の場へ一走りしてくれ！建造の場へ行って、ドックス棟梁にここに来るように伝えてくれ。それでだが、木板を１０枚くらいと木炭を持ってくるように言ってくれ』
　時を待つことなく、ドックスが来る、メンバーがそろった。浜の一隅に場をとって打ち合わせを開始した。