『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  237

2014-03-26 07:31:09 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼はそのように言いおいて、真っ暗闇の海に身を浸した。彼はしばし黙考をする、今日をまぶたの裏にイメージして朝行事を終えた。一同の前に立つ、彼らと朝のあいさつを交わした。彼らに伝えるべき第一語が出てこない、とまどう、黙したまま一同を見渡した。彼は今日一日を短く伝え、『君らが作るものが世界を変えていく、心を込めて励んでくれ』と檄で言いたいことを結んだ。セレストスが大声をあげて令を発した。
 『おう諸君っ!行くぞ!』彼らはオロンテスとセレストスを先頭に立てて作業の場へと向かった。
 オロンテスはうれしかった。このようにして一同が仕事に励んでくれる姿を目にして感動せずにはいられなかった。彼は心の中で微笑んだ。『これで事は成る!』と決まった。仕事の場へと歩を運ぶ足は軽かった。彼と彼らを動かしている心情は、明日に向かって今日を生きるといった真摯な心意気であった。

 夜が明ける、陽が昇る、朝の光射すニュウキドニアの浜はかってなかった活気にあふれていた。その活気の中に焼きたてのパンのふくよかな香りが漂って、高く立ちのぼって消えていく、そのパンの香りを追って身を動かす男たちの姿があった。
 焼きあがったパンは、大きな籠にに入っている籠は、藤蔓で編まれて造られていた。大籠は10を数える、ギアスは舟艇の上に立って運ばれてくる荷を積んでいた。見守るオロンテス、見つめるパリヌルスとオキテス、肩を並べてアヱネアスとイリオネスが姿を見せた。朝の挨拶と掛け声が飛び交った。舟艇の周りは喧噪の雰囲気風情であった。港といえない浜である、出航の準備が整った。
 オロンテスがアヱネアスに歩み寄る、二言、三言、言葉を交わす、イリオネスが声をかけてきた。
 『オロンテスご苦労!パンはうまくできたか?勝負どころの第一日だ!』
 『はい、上々の出来です。出発のときです。では、行きます、吉報をお待ちください』
 彼らは艇上に移り、ギアスに離岸を促した。舟艇は波上を統べるように沖に出てキドニアに向かった。艇の上の者たちの心情は一方向であることが艇の上の雰囲気で知れた。
 パリヌルスもまた彼らの目を見て『事は成る』を確信した。主だった者たちと目を合わせてうなづきあった。
 彼らは、作業管理に心を砕いている。小戦略を収束して、中戦略にまとめあげ、その領域の作業を統括管理していた。


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