『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1491

2019-03-11 08:31:37 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスは、想い浮かべ生起してきた己の信条を口中でつぶやく、2回3回声にはせず唱える、彼は一歩さがる、己を見つめ考える。
 パリヌルスやオキテス、オロンテスには、信条について時折その旨を機会があるたびに語ってきた、その心情を自分に向けてであることに気づく。
 『己の大事ではないか!』と気づいて再び口中で唱える、3回4回意識せずに口中で唱える。
 己の信条が気づくことなく声になっている、低く重みのある声で唱えている。5回6回7回、そして、最後に結びの言葉も唱えている。
 『脚下照顧!』『一歩前へ!』と吟じている。
 『一歩前へ!歩を踏み出すには決断、決断しなければならない。あげた脚足の降ろし場はどこか?』
 『お前、それが見えているのか?』
 自分に問う、心中で一歩身を引く、口中で再び言う。
 『脚下照顧!』
 軽く目を閉じる、想いを馳せる。
 からだ全体で考える、体中に流れる血に意識を絡ませて考える、思考に集中する。
 感覚の中にはだかる混沌のカオスに動きを感じる、気づく。
 アエネアスのからだ全体が耳となる、風の声か、声の風か、風が頬を張る。
 『アエネアス、心耳できけ!』
 風が通り過ぎる、肌に鳥肌が立つ。
 『時の来たるを知れ!』
 風がやむ、閉じていた目を開ける。
 思考を続行する、混沌としているカオスに雲霧が渦巻いている、はだかる雲霧が縮小していく、しかし、密度が増していく、濃くなっていく、アエネアスは、その混沌カオスに対峙する。 
 彼は気づく、その混沌としているカオスがなんであるかに気づく。
 『建国と言っているカオスか』
 建国と声に出して言う、『建国と言うが、その実体をお前は知っているのか?』
 アエネアスは、この問いに答えられない自分を知る。
 『建国を知らない、建国を理解していない。今の俺には建国はカオスか』
 アエネアスに自覚を促しているのか、今の俺にはうたかたの口で唱える夢の夢にすぎないのか、今日に到るまで建国と唱えてきたにもかかわらず、そのような自分が恥ずかしいと感じる。
 『今の俺には建国はカオスか、うたかたの夢の夢か。建国の実体を理解していない俺に、建国の途につくときが来ているという。お前の至高の希望であったはずではないか。建国とはなんであるかを知らずに建国と言ってきたのか。途に就くべき時がおとずれている。その実体を正しく理解して把握して起つのだ!建国を知ろう!己を知ろう!襲いかかる苦難をクリアできるのか。それを知ったうえで途に就こう』
 アエネアスは、知らないを恥じた、これまでの自分を叱った。