『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第７章 築砦 1134

　レテムノンの浜の朝が明ける。
　イリオネスら一行の朝行事である。彼らはレテムノンの海に親しんだ。
　『軍団長、おはようございます。とてもいい朝です』
　微笑みを浮かべる。朝行事を終えた者らがイリオネスと朝の挨拶を交わしている。
　『おう、おはよう！いい朝だ。陽が昇る、風は微風、海は静か、落ち着いている』
　『おう、オキテス、一同を集めてくれ。朝食をみんなでやろう。そして、今日の予定を打ち合わせる。そのように場を作ってくれ』
　『解りました』
　オキテスは、ギアスとゴッカスに指示を出す、イリオネスを囲んで朝食の場ができる、彼は場を見廻す、口を開く。
　『おう、一同！おはよう、このうえなく、いい朝だ！』
　『おはようございます、いい朝です』
　一同の唱和が返る。
　『おう、朝めしを終えたら、今日の予定を打ち合わせる、いいな。さあ～、めしだ！腹ごしらえだ』
　彼らは、パンとぶどう酒で朝食を終える。
　『おう、食べ終わったかな』
　場を見廻す。
　『では、打ち合わせを始める！』
　イリオネスは一同と目を合わせ、うなずき口を開く。
　『おう、一同ご苦労。今日の予定を話しておく。まず、俺の予定だが、このあとテムノス浜頭と懇談することになっている。一刻半ぐらいであろうと考えている。それを終えて状況を見て、イラクリオンに向けて出港する。オキテス隊長は俺と同席する。ギアス、ゴッカス、クリテスの三人は、テムノス方の水夫頭と納入した新艇の使い具合について話し合ってほしい、改良点の有無についてもだ、解ったな。漕ぎかたの一同は艇を点検整備して、出航に際して待機してくれ。今日の航海の行程は、レテムノンよりイラクリオンまで三刻ぐらいの航走で目的地に着く。以上だ』
　『はい、了解しました』
　一同からの返事を受け取る。イリオネスは、一同との打ち合わせを終えた。
　イリオネスは、ギアス、ゴッカス、クリテスの三人を呼び寄せる。
　『ギアスにゴッカスは、水夫頭と話し合って新艇の使用具合を話し合うわけだが、我が方としては、これからの船造りについての方策のためなのだ。解るな。これにはギアス、お前が話し合いの主役だ。話す言葉に難解な点があることが予想される。クリテス、しっかり聞きとめて言葉を訳して、ギアス、ゴッカスに伝える、解ったな。テムノス方の水夫頭との話し合いは、相手方の作業都合もあると考えられる。時間を見計らってやること。以上だ』
　イリオネスの感覚が研ぎ澄まされている、一時が過ぎる、テムノス浜頭方から連絡が来た。