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『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1082

2017-07-25 08:04:20 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 昼めしの時となる。
 建造の場の者ら一同が、統領と軍団長、パリヌルス、オキテスを囲んでの昼めしの場である。
 屈託のない彼らの話題は、昨夕の宴が話題である。
 彼らの話を耳にして統領が話しかける。
 『そうか、宴が楽しいか!しょっちゅう宴をやるというわけにはいかんな』
 『宴は時たまやる、それだから楽しいのですな。待ちかねる、それも大事な楽しみの要素のひとつです。それ故に集う者らをがっかりさせられないのです。それが宴を催行する者の力量ということだ』
 『イリオネス、お前、なかなか手厳しい。もっと軽いノリではいけないのか』
 『それはいけません、統領。宴の価値を軽んじてはいけないと思います』
 この一言ひと言を聞いて統領とパリヌルスらが『そうか』とうなずき、イリオネスの軍団長としての宴催行の心情を理解した。
 オキテスがパリヌルスに話しかける。
 『おう、パリヌルス、今の軍団長の話を聞いて、お前が言った『宴の催行はまつりごとの世界』であることを理解した。お前の言う通りだ』
 『まあ~、言えばその通りなのだが、反面そのように重いものでもない。友の肩をたたいて『おい!一杯やろうぜ!』の世界でもある。互いの意思通じの根本的なものだな。何をおいても、楽しいことはいいことだ』
 これを聞いた周りの者たちが声をあげて笑いをこぼす、一同が過ごす昼めしの場が和んだ。
 昼が終わった。彼らが持ち場に戻っていく、パリヌルスも持ち場へと場を去っていく、アエネアスとイリオネスは、建造の場を巡回する。
 夏の陽が燦燦と照りつける、二人の思念は、その暑さを退ける、建造の場を丹念に見廻った。
 統領と軍団長、二人には誰にも明かさないネクストに関する課題がある。事業の遂行に関して、他の者にゆだねることのできない次元の領域が存在している。それが二人の肩にずっしりと乗っている。二人は、常にそれを認識して、役務と作業の遂行をパリヌルスらにさせているのである。二人は、それを念頭に持してネクストを考えている。
 二人が念頭に持するもの、その思念は同じではない。その思念には微妙な差異がある、二人は、その根本にある原点を言葉では明かしてはいないが、会議の場で、話し合いの場で具体的な意見として言葉にしている。二人はその何故については語らない。また聞こうともしない。
 アエネアスと彼ら一族の使命である建国を二人が設計し、俯瞰し、恐怖を滅却して、未来を掌中にしていかなければならないのである。
 彼ら二人は、その剣の刃の上を歩いているのである。