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『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第10章  アキレスとヘクトル  1

2008-01-29 06:50:49 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 パトロクロスは、率いてきた軍団と離れすぎたことに気がついた。そのときは、腹背に敵をうける寸前であった。舞い上がる砂塵の中からヘクトルが現れた。パトロクロスとわずかの手勢は、敵に包囲された。戦車から降り立ったパトロクロスは、右手に角ばった大石を、左手に槍で身構えた。ヘクトルの戦車が投石の射程距離に入った、ヘクトルめがけて大石を投げつけた。狙いははずれ、手綱を取っていたケブリネオスの顔面をとらえた。もんどりうって落車するケブリネオス、彼の双眸に闇が訪れた。
 ヘクトルの眼中には、目の前のアキレスしかない。戦車から降りて立ったヘクトル、二人は、眼差し鋭く対峙した。穂先鋭い槍を右手に持ち替えて起つパトロクロスのアキレス、ヘクトルの槍の横なぎの一閃は、パトロクロスの兜をはねとばした。背後に迫っていたエボルボスの槍の一突きは、背から胸を貫いた。二人の攻撃は同時であった。ヘクトルは、男の顔を見た。アキレスではなくパトロクロスであった。パトロクロスは、前後の敵に一撃をと槍を突き出したが、弱弱しく力が無かった。ヘクトルは、渾身の力でパトロクロスの下腹部を槍で貫いた。
 噴き出す鮮血、遠のく意識、死に向かう意識は、ヘクトルに向けて言葉を吐いた。