
さすがに、桃源郷の絵はありません。
雪解け水が落つる写真を掲載することにしました。
新入社員研修で、秋田に行きました。
40年前の4月のことでした。
籾の乾燥機に必要と思われる消火器を売るのが、ミッションでした。
代理店のセールスマンに同行していただきました。
水をはり始めた田んぼを抜けて行きました。
あたかも湖の上を滑るように車は走っていきました。
緑の林をいくつか抜けて、その家はありました。
忽然と現れた家は、緑に囲まれ庭の木々と融合していました。
今日のタイトルは、「桃源郷」です。
私は、中国の故事に描かれた桃源郷を見た思いにかられました。
籾摺り機は買わねけど、腿摺りきは買ってやる。
と主人は、にこにこしながら私をからかいました。
一向に仕事の話は、始まりませんでした。
代々受け継がれた春画を見せていただきました。
「桃源」(桃源郷ともいう)とは、
(陶淵明の「桃花源記」に書かれた理想郷から)俗世間を離れた別天地。仙境。武陵桃源。桃源郷。
(広辞苑より)
それから二週間、毎日農家を訪ねました。
忙しくなるちょっと前だったのか、どこでもお茶を勧めてくれました。
燻りガッコや自慢の漬物がお茶請けでした。
どの農家でも、仕事の話は出ませんでした。
「おめたち、馬鹿と言われてもわかんめ」と秋田弁で、ばっちゃんにからかわれました。
初心な新入社員を困らせては、面白がっていました。
長女が婚した相手の故郷が、秋田の秘境と言われる山里でした。
ちょうど6月のこの頃、山菜が獲れるからおいでと、招待を受けて訪ねました。
数年前までマタギをされていたお父さんが、山を案内してくれました。
今では、スノーモービルで熊を追うと聞きました。
一の矢、二の矢、三の矢で仕留めると聞きました。
どの矢も、雪深い山頂でひたすら待つ、マタギの鉄砲のことです。
一人で村を散策しました。
畑にも、庭にも色とりどりの花で溢れていました。
木に咲く花、野に咲く花がいっせいに咲いていました。
村は、花でむせるようでした。
どのうちにも引かれた水路は、雪解け水で流れはとても速かった。
これも桃源郷と感じました。
池には鯉が飼われ、納屋には漬物樽がいくつもありました。
樽のつけ汁をなめさせていただきました。苦味が効いた強い塩味でした。
2016年3月30日投稿記事「めんそーれ」を参照してください。
山形県酒田市出身の友人に、
「すし」と「すす」の発音を実演してもらったことがありました。
すしが「すす」に聞こえ、すすが「すし」に聞こえました。
違いを分かるように説明しながら、発音してもらって何とかわかったかな。
と記憶しています。
寒いから、あまり口を大きく開けないで喋るとそうなると聞きました。
(記事「めんそーれ」より抜粋)
秋田県は、人口減少で農業継承に苦労していると聞きました。
私が住んでいるこの辺りは、4月末から5月初めにかけて花が溢れます。
秋田の秘境は、遅れること一月。
明日から、桃源郷を訪ねる旅になります。
駆け足の旅ですが、ここだけは行きたいと思います。
長女に、「私に断りもせず、勝手に行って、私の立場も考えてよ」と怒られるでしょうか。
人有りて 開けし里も 花むせび
2018年5月31日