今週、二人のアイドルのニュースが流れた。
昨年のPRODUCE48でデビュー圏外ながら14位の成績で、人気を集めた韓国Pledisエンターテインメントのイ・カウンが約7年在籍した同プロダクションと契約終了となったこと。
2011年の結成から乃木坂46のキャプテンを務めた桜井玲香が、この夏のツアーの千秋楽で卒業すること。
この二人は同じ1994年生まれで、同学年であり、同じ時期に人生の節目を迎えることになった。
だがその節目の内容はあまりに違いすぎて、今、自分は切ない気分でいっぱいになっている。
イ・カウンについては、所属していたAFTER SCHOOLというガールズグループについては、ほとんど知らない。
ここに記す大半はネットニュースの引用であることをお断りしておく。
カウンが練習生からAFTERSCHOOLに参加しデビューしたのは、2012年の4月。
AFTERSCHOOLとしては結成4年目であったが、既に数人が脱退し、グループ内ユニットや個人活動が盛んになりはじめ、2014年にはAFTERSCHOOLの活動は停止してしまう。
そこから4年近く目立った活動は無く、ずっと活動再開あるいは別グループでの再デビューを待っていたがその機会がないまま時間が経過してしまう。
そして2018年にPRODUCE48への参加を決意。
番組ティザーCMや本編初期ではカウンの再デビューチャンスへのチャレンジが語られ、全編に渡り、彼女が関連するエピソードが流れる分量も多く、制作陣に注目されていたことは確かだった。
プデュの中でのカウンは、グローバルガールズグループへのデビューチャンスをどん欲に狙いながらも、同じチームになったメンバーに対する気遣いや思いやり、真摯な姿勢は韓日両国のファンから愛され、尊敬されるキャラクターになった。
コンセプト評価でカウンは「I AM」に参加し、当初はセンターポジションに入るが、この曲は題名の通り、大人になりかけている女の子が、自分らしさを自己主張するテーマで、その世界観から大人=セクシーさだけではなく、若さ=キュートさが必要ではないかという、講師陣や作曲チームの指摘から、チームで1位評価を得るために、自らセンターをアン・ユジンに譲る決断をするというエピソードがあった。
当時23歳は参加メンバーの中では最年長となり、本人が意識しなくてもパフォーマンスが大人らしい妖艶さを兼ね備えていることが、却って曲のコンセプトに合わないというジレンマ。
もし彼女が20歳前後なら、センターを譲ることなく、セクシーアンドキュートな雰囲気を表現できていただろう。
最終回では、20位内のファイナリストにも入り、デビュー評価で「好きになっちゃうだろう」チームでパフォーマンスし、得意の日本語でしっかりした発音と歌唱力、安定したダンスを魅せた。
最終投票では残念ながら14位に終わり、デビューは果たせなかったが、その人気の高さから、プデュ終了後にすぐにガールズグループでデビューするのではないかと期待されていた。
実際、プデュメンバーが2019年に入って次々にガールズグループでデビューしていったが、Predisからは何のアナウンスもされず、1年以上が経過し、今回の契約終了のニュースが飛び込んできたのだ。
今年25歳を迎える彼女にとって、おそらくアイドルグループでのデビューは困難だろうが、歌唱力もあり、その人柄からあふれる魅力はアーティストとして十分な実力があり、別プロダクションからのデビューが成功するように祈りたい。
プデュ参加までの実質練習生の時間は、レッスンこそたくさん積むことはできるが、いわゆる「本番」での、ステージでの経験が大きく不足していることも、14位の理由かもしれない。あきらかに実力では劣るであろう宮脇咲良が2位でフィニッシュしたのは、カメラを通したステージ上の彼女が恐ろしく魅力的に映え、国民プロデューサーの心を掴んだからであり、そこにはHKT48やAKB48の劇場やコンサート、テレビ出演で鍛えられたものが、十分発揮されたのだろう。
そして乃木坂46のキャプテン桜井玲香。
2011年8月結成し、CDデビューは2012年2月。
伸び悩んだ期間もあったが、白石麻衣センターの「ガールズルール」当たりから、スマッシュヒットが出始め、2013年からは真夏の全国ツアーが恒例となり、AKBグループのような劇場は持たないものの、冠番組でのバラエティ出演、桜井自身を初め、若月、樋口、生田、井上といったメンバーが早々に個人で舞台をこなし始め、1期生のほとんどと、続く、2期生・3期生も舞台経験を豊富積んでいくというそれまでなかった活動エリアを持つグループに育った。
その中で桜井は2014年にスーパーエキセントリックシアターの舞台に客演し、そこから本人のスキルアップに合わせたかのように、次々と演劇の舞台を経験していく。
2016年からは乃木坂に関連のない、外部からオファーによる舞台が多くなり、今や生田絵梨花に劣らない舞台女優のキャリアを持つほどになった。
その間にグループとしてのライブ、シングル選抜もこなしているのだから、その活動量は相当なものだ。
今回、乃木坂46は卒業するが、今後も女優として、生駒里奈と同様に乃木坂LLCで引き続きマネジメントをされていくようであり、同じプロダクションとして乃木坂の後輩たちとの関連性は継続される。
正直もっと映像作品にも出演してほしいところであるが、本人自身が生の舞台が好きなのだろう。
彼女の卒業は、しっかりしたキャリアと乃木坂46という分厚い看板と舞台を中心にした芸能活動が今後もしっかり描かれていて、本人の発言通り、乃木坂の後輩たちの道標になっていくだろう素晴らしいものだ。
この二人が同い年で、国は違えど同じアイドルの出自ながら、キャリアに恵まれた者、そうでない者のストーリーがあることに、非常に感傷的になってしまう。
歌やダンスで抜群のポテンシャルを持ちながら、アイドル活動のキャリアをつくれなかったカウン、アイドルとして8年近くをしっかり全うし、ライブ・舞台でしっかりキャリアを積んで女優として羽ばたいていく桜井玲香。
実力だけではなく、運と環境に恵まれるかどうかで、変わってしまう道。
いつか、イ・カウンの名前をしっかりクレジットされたライブや作品を観たいと強く願う。
又、桜井玲香は長い間のキャプテンのプレッシャーに向き合ってきたことが、絶大な力になってさらに成長していくだろう。
この二人が共演するなんて夢を見ても、決して笑われることはない。
それだけの力が二人にはあるはずなのだから。