ひだまりクリニック~産んだ後にも母親学級~

杉並区で小児科医がひらいている母子で集えるクラスです。

おっぱいへの思い、それぞれ

2012-06-02 16:46:06 | 子育てあれこれ

子育て支援という言葉も普通に受け入れられる言葉となり、大切なものだとい社会の認識もできてきたと思うけど、

「支援」って簡単ではないなぁといつも思います。

人はそれぞれの価値観があり、思いやこだわりもそれぞれだからです。

母乳育児に対する気持ちは、その中でも全く違うと日々健診で感じます。

一か月健診での悩みは・・・

「おっぱいは十分出ているのか」

「体重はちゃんと増えているのか」

「どのくらいミルクを足せばいいのか」

などのおっぱいに関する悩みはとても多いです。

正しい抱き方・正しい授乳の仕方がわかっていて努力しているのに、

やはりどうしても足りな目の人もいます。

十分出ていてオエオエしているくらいなのに、ミルクを足している人もいます。

ちょうど供給と需要が合ってきて張らなくなってきたのに、

それは、ちょうど母子のおっぱいの共鳴現象なのに、

それをおっぱいが出にくくなってきたと勘違いしていることもあります。

それで、ミルクを足して余計に吐きやすくなっていたり・・・。

足りな目の人はミルクを足しながらでも、母乳回数を減らさなければ、母乳を嫌いになることはないはず。

そうして、ミルクの力で体重を増やしていきながら、おっぱいを飲む力がついてくれば、

だんだん飲めてくる、それにより、母乳の分泌量も増えるということはよくあります。

おっぱいにこだわる→母子ともに疲れる→体重も増えず飲む意欲も乏しくなる→分泌が増えない→ますます母子ともに疲れる

そんな悪循環に陥ることもあります。

完全な母乳にこだわる方が、よけいに自分を追い込んで体力的にも精神的にも自分を追い込んでしまって、

おっぱいが出にくくなるとか、うつっぽくなっていくということがあるような気がします。

おっぱいをあげるのが子育ての目標ではないはず。

子どもを可愛いと思いながら幸せに育てるのがもっと大事だと思うのです。

だから、ミルクを必要なときは少し足すのも一つの方法。

頑張ったし仕方ない、ミルクでもいいやと思ったら、急に楽になっておっぱいが出始めたということもあります。

(ただし、足し過ぎはおっぱいを飲む意欲を減らしますから、そのさじ加減は難しいのですけど)

おっぱいが出るかどうかは、母親の方の努力だけではないのも、感じます。

ミルクにしても、母乳にしても、意欲の少ない子は確かにいます。

また、つくづく人っていろいろだと思うのですが、

親が混合でやっていきたいというとき・・・

二か月前後からということが多いのですが、

おっぱいがいい!という子やミルクがいい!という子や、親の思うように混合を素直に受け入れる子。

本当にいろいろです。

そういう赤ちゃんのそれぞれを知るとき、つくづく人間って面白いなぁって思います。

おっぱいへの母の思いもそれぞれです。

医師の思いもそれぞれなように。

おっぱいの援助をすごくしたくて完全母乳や母乳率にこだわる医師もいます。

私はそこには反発してしまいます。

実は、私自身、二人目の出産後、あまりにもおっぱい育児がスムーズで幸せだったものだから、

おっぱい育児がなんとか成功するようにというアドバイスを一生懸命していた時期がありました。

でも、そのアドバイスが、欲しい情報だったのか、楽になることだったのか、

逆に追い詰めることになっていなかったか、と次第に反省するようになってきました。

そんな頃、おっぱいを直接飲めなくて、搾乳して哺乳瓶であげているというお母さんに6か月健診で出会いました。

離乳食も始まって、自分の時間は全くないということ。

それでも、周囲の「やっぱりおっぱいが一番よね!」という言葉に、おっぱいをやめる勇気はなかったと。

そんなに辛いならやめてもいいのではない?と言ったら、

「やめていいんですよね」と言って、泣き出したお母さん。

10年ほども前の忘れられない方です。

おっぱいは幸せになれるからいい、そう改めて思いました。

私は、一人目のおっぱいは幸せでなかった、完全母乳でも辛かった。

そして、その経験があったからこそ、幸せな母乳育児があると初めて二人目の育児で経験した。

幸せで楽なおっぱい育児だからこそおっぱいはいいのだと思う。

「おっぱいで育てたい」そういう気持ちも、その思いの強さも人それぞれですね。

私ならできないなと思うような努力で、乳頭混乱を乗り越えた方を見ると思います。

ときには、カウプ指数が13という方もいらして、どのようにアドバイスをしたものかと思案しますが、

そのような人のためにひだまりクリニックがあると思いなおして、経過観察をしながら、

どのようなことができるか、考えていきたいなと思います。

子育ての悩みは一様ではなく、そして、子どもが大事だからこそ悩むのだと

どの方を見ていても思います。

悩んだからこその結論にたどりつけまように。

その自分らしいこだわりに納得できる決着のつけ方ができますように。

そのお手伝いをすることができたら・・・と思います。

理想通りにいかなくっても、自分の精一杯で頑張ったのだから仕方ないと思えますように。

どのお母さんにも、その結果を温かく受け止めてくれる周りの支えがありますように。

 

 

 

 

 


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