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Untersee-Boot

あるいは感想記として

現代狂言Ⅹ その3 新作「不思議なフシギな鳥獣茶会」(ダンス&ミュージック編)

2016年03月30日 | 現代狂言Ⅹ
新作で印象に残る場面はいろいろありましたが、鳥獣戯画のマイムからラストにかけての流れは、観ていて自然と引き込まれてしまいました。

           
(飛び出す鳥獣戯画。東急ハンズで買った鳥獣戯画シールを紙に貼って飛び出させてみました(笑)。背景は四国土産の内子座100周年記念切手シート)


まず、「それ何ギガバイトですか?」の鳥獣戯画の場面(笑)。
弓を射ったり、相撲を取ったり、鳥獣戯画の世界をマイムだけで見事に表現していて、ホントに巻物の中から飛び出してきたんじゃ?という感じでした。
文字などは書かれていない鳥獣戯画ですから、無言のマイムだけで表現するというのはぴったり。
そして、喋るとその世界観が壊れて人間だとばれてしまう、というのも、観ていて納得&感心の演出でした。
もちろん笑いもありましたし、「三本のヤー!」は鉄板で客席から笑い(笑)。
自然と頬が緩んでしまう、鳥獣戯画の世界でした。

相撲に勝って思わず声を出し、かえるたちに追いかけられる太郎と太郎さん。
月うさぎ 天より垂れる雨しずく
わが子も夢で ともに釣るなり
と、和歌を詠んでかえるたちを和ませたあとは、「ゲロゲーロ(宴の始まりじゃ)」(笑)。
三浦さんの♪茶会じゃ茶会じゃさぁ踊れ♪の声に合わせ、出演者全員でダンス。
この場面。
最初は、社交ダンス組と田楽組が互いに向かい合い、対決するように踊っていましたが、次第に打ち解け交じりあい、最後は皆で輪になって踊る。
これ、西洋と東洋(日本)、あるいは異なる文化の人たちも互いに理解しあい皆で仲良く・・・なんて言葉にすると、ものすご~く薄っぺらな感じになってしまいますし、口で言うのは簡単だけど現実は・・なんてことも言いたくなりますが、ああやって音楽とダンスで見せられると、とても説得力があり自然と共感してしまいます。
このあとの、最後の最後の南原さんのマイムもそうですが、面白い場面や伝えたいメッセージなどを、言葉ではなく音楽やダンス、マイムで表現する。
そして、それがちゃんと伝わってくるというのが素晴らしく、笑ったり涙したりしながらも大感心で観てしまいました。

それから、あの皆でのダンスの場面は、バイブス上がる(ヒルナン見ておぼえた・笑)といいますか、一気に会場も盛り上がる爽快な場面でした。
中でも、稲葉さんのフルートの♪運命♪のメロディーは、家に帰っても耳から離れず困りました(笑)。
今回、特徴のある言葉や音楽がいろいろありましたが、頭の中のリフレイン率がいちばん高かったのは、このダンスの場面の♪運命♪だった気がします(笑)。
そして、この皆のダンスのあとに続く、南原さんと万蔵さんの二人の場面と、南原さんの最後のマイム。
動から静へと一転して変わり、祭のあとの寂しさの雰囲気も重なり、二人の会話がより心に沁みて、毎回涙涙になってしまいました(笑)。


それから・・・。
話が前後してしまいますが、今回、いちばん衝撃を受けたのは、何といっても♪メ~モリ~♪(笑)。
現代狂言一休みの大衝撃がなかったら、この話をいの一番にしていたところでした。いや、ホントに(笑)。
南原さんが何かを歌う、という情報は初観劇の前に少し耳に入っていたのですが、まさか♪メモリ~♪だったとは!?
松島で最初に聴いたときは、笑いながら思わずヅッこけてしまいました(笑)。
「できませんよ、自分の心を歌うなんて」という振りがあっての♪メ~モリ~♪ですから、これはもう笑わずにはいられません(笑)。
それにしても・・・何で♪メモリー♪だったのでしょう?
集大成ということで、学生時代三平食堂で内村さんに「俺、ブロードウェイに行くよ」と熱く語っていた自分の原点を思い出したのか(笑)、あるいは「キャッツ」世代だからということだけかもしれませんが、兎にも角にも、♪メ~モリ~僕の人生は~♪は、何度聞いても大笑いしてしまいました。
あと、この歌詞からは、南原さんの心情もうかがい知ることが出来て興味深くもありました。
♪成績や数字に追われて~♪という歌詞などは、まさに視聴率に日々追われる南原さんという感じ(笑)。
ただ、南原さんはラインやフェイスブックはやっていないと思いますし、現太郎のように日常に疲れているということもないでしょうから(笑)、心情の一部を表した歌詞ということなのでしょう。


あとは。
「僕は癒しを求めて・・」「計画が無茶苦茶だ」「僕は一人だ、僕は孤独なんだ」と、泣き言ばかりの現太郎。
これに対して、
王様は、「毎日何かに追われていると思い込み・・」とそっけない言葉。
なんてこった肩凝ったのジョニ男女王は、「何かに追われるのは当たり前」♪現代人はいつも何かに追われる運命~♪と、こちらもあっさり。
そして、コンプライアンス部長も、「それがお前の運命だから」♪現代人の運命~♪
「追われている」ではなく「・・と思い込み」と、すげなく言い放つとこなども良かったですし、愚痴を言う太郎をバッサバッサと切り捨てていく感じが、観ていてとても気持ちよく感じてしまいました(私自身耳に痛いこともあったのですが・笑)。
で、日常に追われる現太郎に対し、太郎さんは、「なかなかで良しとせよ」「あきらめるのじゃ」と、こちらもあっさり(笑)。
こういう台詞をさらりと言わせちゃう南原さんは良いな~と、改めて感心。
深刻ぶった顔をするのではなく、軽~く受け流す。それでいて、すべてを受け入れていくという覚悟。
「ひとつ手放せば、ひとつ手に入る」というのもそうですが、こういう芯の強さこそが、南原さんらしさであり、南原さんの魅力なんだと思いました。



あと、印象に残った場面を挙げると、
「いにしえも行く末も隣り合わせ」「それを知らぬは人間ばかり」の洞穴の中。
懐中電灯を手に持った南原さんと、扇の燭台を持った万蔵さん。
同じような動きをして最後手を合わせて出会う・・と思わせて直前でお預け(笑)。
ちょっとずれたシンクロ具合と、最後の「あぁもう少しだったのにぃ」という感じが良かったです(笑)。

太郎と太郎さん、実は・・という場面。
「もしかして僕たちは・・・」
「そのようじゃの」
(ドーン)
「ホー」
大事なことを全部言わないところ、そして、和田さんのパーカッションと三浦さんのフクロウの声の絶妙な間に、思わず感心してしまいました。

他にも、洞穴の中で釣りをする場面や、万蔵さんの「へっ」という酔っぱらった顔と返事(笑)、南原さんのしっぽにアリスにうさ耳などなど(笑)、印象に残ったことはたくさんあるのですが、キリがなくなりそうなのでこのへんで。

あ、それから、トランプたちの「モードありがとう」のギャグの場面(笑)が、ほとんどブラッシュアップしなかったのは、ちょっと残念。
千秋楽で新たなコントが加わっていましたが、それ以外はあまり変化なし。
ラップも絡めてのギャグの場面だったので、途中でいろいろ手を加えるのは難しかったのかもしれません。


それから、最後になってしまいましたが、現代狂言に欠かせない、楽士のお二人について。
毎公演、新作前の演奏で客席はいい雰囲気に。
そして、舞台が始まると、三浦さんの「ホー」という鳴き声と和田さん奏でる風の音で、一気に不思議なフシギな世界へ導かれいきました。
和田さんは、鍾乳石から滴の垂れる音や、ドラム演奏。
稲葉さんも、笙、横笛、フルートの♪運命♪そしてノコギリで「ポヨ~ン」(笑)。
出演者の演技と、楽士の方の素晴らしい演奏、この二つが融合したからこそ、現代狂言の舞台上には素晴らしいイマジネーションの世界が広がったのだな~と、今回も大感心でした。
あ、それから、カーテンコールは、いつもお二人の演奏のおかげで大盛り上がり(笑)。
3/5夜の国立能楽堂のカーテンコールで、南原さんが「(お客さんは)音楽にのせられ上手」と言ってましたが(笑)、確かに、カーテンコールのあのお馴染みの演奏が始まると、毎回手が痛くなるまで手拍子と拍手をしてしまいます(笑)。
改めて、稲葉さんと和田さん、いつもいつも素晴らしい演奏をありがとうございます、です。



今回は、なかなか感想がまとまらなかったので、思いつくままに書いてしまいました。
話があっちこっちに飛んでわかりずらい部分もあるかと思いますが、悪しからずご了承ください。
まだまだ、書き残したことがあるような気もしますが・・思い返すと、いまだに頬が緩み、目頭を押さえてしまう(笑)、思い出に残る作品。
南原さんの想いの詰まった舞台。
集大成にふさわしい、「不思議なフシギな鳥獣茶会」でした。



その4(総括編)につづく・・・。
(まだ書くのか?・笑)


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