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Untersee-Boot

あるいは感想記として

現代狂言Ⅹ その1 古典「千切木」

2016年03月26日 | 現代狂言Ⅹ
2月14日から3月19日まで、全国各地で全12公演が行われた現代狂言Ⅹ
私は、松島、東京、所沢、琴平、内子、下呂の公演へ行ってきました。
計10公演を観劇した感想を、あれこれと。

              


まずは、古典の「千切木」。
太郎が南原さん。
連歌の当屋が万蔵さん、太郎冠者が弘道お兄さん。
連歌の仲間が、平子君、ジョニ男さん、森君、石井ちゃん、大野君、三浦さん。
太郎の妻が石本君

あらすじは。
連歌をするために集まった仲間たち。
嫌われ者の太郎には声をかけずにやってきたが、どこで聞きつけたか太郎が乗り込んでくる。
帰れと言われた太郎が帰らずにいると、皆に踏まれてしまう。
それを知った太郎の妻がやってきて、皆のところへ仕返しに行けとけしかけるが・・・。


古典で「千切木」をやるという話を聞いたときに、どんな内容なのか事前にちょっと調べてみたのですが、太郎は南原さんにピッタリだな・・と思っていたら、案の定その通りの配役でした(この役は南原さんか万蔵さんしかいないと思いますが・笑)。
で、その太郎、嫌われ者・・というよりも、憎みきれないろくでなしという感じ(笑)。
掛け物が傾いている、硯箱の位置が違うと悪態をついてみたり。帰れと言われても「金言耳にさこうと言うがこのことか」と迷惑がられてることに全然気づいてなかったり。
はたまた、皆に踏まれているのに「男が踏まれてよいものか」と強がってみたり(笑)。
そして、奥さんから、果たさねば家に入れぬと言われると、「南無三宝」「これは進退窮まった」と大袈裟に嘆いてみたり(笑)。
本人に悪気がないだけに憎めない、傍から見てるぶんには面白いけど実際にかかわると面倒くさい太郎。
そんな、寅さんみたいな太郎(寅さんは皆に踏まれたりはしませんが・笑)を熱演していた南原さん。
毎回大笑いして観てしまいました。
今回は、古典鑑賞というよりも、普通のお芝居を観ているように観ることが出来ました。
(初めて観たときは、どんな話なのか台詞など聞き洩らさないように集中して観ていたので、楽しむまではいきませんでしたが)
台詞まわしや表情なども自然に感じましたので、これはやはりこれまで積み上げてきたことの賜物、技量が上がっから・・ということかな?(笑)
いや、本当に、南原さんの太郎は演じられた人物というより、生き生きとした人間だと感じました(贔屓目込みで・笑)。
それに、前述した「男が踏まれてよいものか」というときの表情などは、掛け値なしで大笑い。
四国公演など間近で南原さんの表情を観られたときなどは、面白さはさらに倍でした(笑)。
他にも、腰が引けながら踏んごむ太郎の表情や、「留守」と言われ急に強気になる太郎にも思わず笑ってしまいましたし、「ちょっとおりゃれ」と言われたときの南原さんの「何だ?」という何気ない表情なども、とても自然で良かったです。
それから、南原さんが、掛け物が傾いてると難癖をつける場面。
南原さんが客席のほうを見ながら布袋の川渡り・・云々と話していると、千秋楽で隣に座っていたチビッコが後ろを振り返ってました。
これは、イマジネーションで掛け物が客席のほうにかかってるように見えたのでは?と思い、ちょっと嬉しくなりました(笑)。

と、とても良かった南原さんでしたが・・・。
今回はいろいろとハプニングも(笑)。
わわしい奥さんから「果たして来い」と言われ、南原さんが刀を腰に差す場面。
なかなか刀を腰に差すことが出来なかったり、二度目で肩脱ぎをしないといけないのにいきなり肩脱ぎをしてしまったり、本当にいろいろありました(笑)。
松島で初めて観たときは、たまたまやっちゃったのかな?と思っていたのですが、その後の公演でも同じ場面で何度もハプニング。
この場面の「これはいかなこと」「これは迷惑なこと」という台詞を聞くたびに、今回は何ごともなくいってくれ!と、祈りながらハラハラしてしまいました(笑)。
国立能楽堂の3/4公演では、肩脱ぎした南原さんの羽織が落ちそうになり、後見の扇丞さんが出てきて直す場面も。
こんなことってあるのか!?後見はこういうときのためにいるんだな~、後見の人がいてくれて良かったと、ハラハラしながらも変なところで感心してしまいました(笑)。
今まで古典でこんなにハプニングが起こったことはなかったように思いますが、そんなことも含めて思い出に残る「千切木」でした(笑)。
あ、そういえば、金丸座の午前の部では、石本君もやってました(笑)。
「さては、たびたび踏まるるか」の台詞を飛ばし、「腹立ちや腹立ちや」と言ってた石本君。
間違えたことを自分でもわかったのか、「腹立ちや」の発声がそれまでより2トーンくらい弱かったので、客席はちょっと「あれ??」という雰囲気に。
すぐに持ち直したのでひと安心でしたが、こちらも観ていてハラハラしてしまいました。
(金丸座の午前の部は、そんなことも吹き飛ばすくらい爆笑&爆笑でした)


南原さん以外のことでは。
万蔵さんはさすがだな~と思う場面がいくつもありましたが、こちらは本職なので感想は割愛(笑)。
石本君のわわしい奥さんは、ちょっとズルイとも思いましまたが(笑)、堂に入った奥様ぶりだったと思います。
それから、皆が当屋の万蔵さんのところへ来て挨拶をする場面。
「太郎冠者来たわ」「おとおめでとうござる」「ようおいでなされました」と、次々に挨拶するところがまるで輪唱みたいで面白く、思わず笑ってしまいました。
この場面は客席からも自然と笑いが起こっていましたし、昔からこうやって同じように笑っていたのかと思うと、それもまた面白いな~という感じです。
あと、繰り返しの言葉。
「おぼえたかおぼえたか」「助けてくだされ助けてくだされ」「腹立ちや腹立ちや」「誰が踏んだぞいやい誰が踏んだぞいやい」「踏んごめ踏んごめ」「おでかしゃったおでかしゃった」等々、耳に残って困ります(笑)。
いや、でも、こういう言葉の面白さというのも、狂言らしさなんだろうなと思いました。
それから、連歌を「案じさせませ」ということで、皆で扇を手に首をかしげてるところなども自然に笑みがこぼれる場面でした。


それから・・・。
ジョニ男さんの、あの「留守」はありなのか??(笑)
もっとも、昨年の「茸」でもかなりズルい姫茸をやってましたので、これくらいは全然オッケーということなのかもしれません(笑)。


あとは、最後の♪いさかい果てての千切木とは~♪。
揺ってハモるんだ!?と松島公演を観たときビックリしたのですが、その後はハモっていたりユニゾンだったり、公演ごとに違ってました。
う~む、なぜそうなのか、真相はなかなか解明できそうにありませんが(笑)、いずれにしても、皆で揃ったときの揺は見事でした。


最後は、「いとしい人、こちへござれこちへござれ」「心得た心得た」。
散々夫婦で大騒ぎしていたのに、最後はのろけとも思える台詞で退場する二人(笑)。
これも和楽の世界なのかな?という感じの(笑)「千切木」でありました。



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